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「夜明けのスキャット」(昭和44年 1969)由紀さおり

 理屈をいろいろお読みになる前に、特に、まだ、未聴の方は、まず、当曲を聴いていただいた方がいいと思います。

♪「夜明けのスキャット」(昭和44年 1969)由紀さおり(デビュー当時の音源)

 作曲:山上路夫 作詞:いずみたく

https://www.youtube.com/watch?v=Pvb7E9NfX1M

 いかがだったでしょうか。
 今、聴いても斬新な曲に感じますので、昭和40年代では、なおのこと斬新すぎる曲だったに違いありません。
 この曲について、いろいろと検索してみると、いろんな逸話が発見できて面白かったので、興味を持たれた方は、検索していくつかのトピックをお読みいただければと思います。
 簡単にいくつかを紹介しますと…
 ・由紀さおりといえども、この曲のヒットがなければ引退も考えていたほど売れていなかった(当時は、本名でCMソングなどを歌っているに過ぎなかった)。
 ・ラジオの深夜放送のテーマ曲として掛かっていたところから火が点いた。
 ・故に、これを由紀さおりが歌っている、という認知も広がらないままのヒットになった。
 ・先に、いずみたくがメロディを作曲して、山上路夫の作詞は後付けだった。しかも、いずみたくに何度も駄目だしされたあげく、締め切りギリギリで出来上がった歌詞だった。
 ・題名の「スキャット」は、締め切りギリギリで山上路夫が提案し、「夜明け」はレコードプロデューサーが考えたもので、双方を合体させた。
等々、であります。

 今までと違って、まず、メロディについてお話したいと思います。
 由紀さおりは、今でも、この曲を大事に歌われていて、YouTubeにも、たくさんアップされていますが、敢えて、デビュー当時の音源を此処に挙げたのには理由があります。
 なんといっても、イントロから一部の小節を除いて終わりまで続く、この曇った音のギターです。
 子どもの頃には気付かず、大人になってわかったのですが、感じがサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」のイントロに似ています。
 しかし、この曇ったギターは、イントロにとどまらず、まさしく、この曲一帯を支配しています。この曇ったギター音は、夜の世界を表しているのと併せて、歌詞の中にも出てくる「時計」の秒針を表した音だと思います。1番のスキャットの歌詞では、「パパパ…ア~ア」の小節で、2番では、「夜は流れず星も消えない~響くだけ」の小節で「時計の音」が止まります。そして、もちろん、最後の最後の歌詞「時計は止まるの」でも止まります。
 それ以外の小節では、ずっとこの曇ったギターがリフレインされます。地味ながら、由紀さおりの歌声と同等のインパクト、効果をもたらしているのがこの“秒針ギター”だと思います。
 特に、1番のスキャットを由紀さおりが歌い終えても、なおも、ギター音だけが時を刻み続けるかのごとくリフされているのは見事としか言えません。

 さて、歌詞ですが、これは、もう、「愛し合う二人には、朝は訪れず、夜のまま時が止まった状態になる」この一言でよいのではないかと思います。

 そんな至福な時間を、機会を、私たちは、今まで、どれだけ経験してきているでしょう?(と、敢えて、私たち、と言ってみましたが 笑)
 いろいろなお歳の方がいらっしゃると思いますが、こんな経験を、これからも、ひとつでも多く積み重ねることができると良いですね♪

 ちなみに、私が、これをカラオケで唄ったりすると、この曲を知らない若い人たちは、1番を歌い終わるまで、歌詞テロップを見ながら爆笑していますが、2番の歌詞に入って、この歌が終わるくらいになると、シーンと黙って聴いています。
 私みたいな下手な男が唄ってもそうなってしまうのは、この歌の持っている力が並外れている証拠だと思います。