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テート美術館展ルポ:「光」に注目した展覧会の面白さ

 テート美術館展へ行ってきました。

 今回展示されていたのは18世紀後半から現代の作品。

 近代・現代の絵画技法が確立される過程を、光の表現という観点から眺めてみる、という構成を興味深く感じました。
 大学で遠近法や光の反射の描き方を教えるためにジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775–1851)が作成した講義資料。ドイツの造形芸術学校「バウハウス」にて、光と影のイメージを純粋に捉えるために行われた、写真を用いた実験の数々。色の性質によって遠近感が変わることを示したヨーゼフ・アルバース(1888–1976)の作品。
 作品制作や実験・研究を通して、アーティストが新たな発見をし、後世に受け継いでいくさまを、展覧会全体で体感できました。

 今回展示されていた現代の作品は、現実世界から「光」自体を抽出して表現するために制作されたのではないか、と個人的に考えています。印象派における、「刻々と変化する光を捉えて描くことが重要」という考えを極限まで突き詰めた結果というか。私は専門家ではないので上手く読み取れているかわかりませんが。

 美術を専攻しているわけではない私は当初、「光」に注目した作品といえば印象派かしら、という漠然としたイメージを抱いており、現代美術も展示されているのは意外でした。展覧会全体を鑑賞して、様々な時代の作品をここに展示する意義を感じ取れたように思います。

 公式サイトにも記載されているのですが、一部の作品は見られる時間帯が限られています。一応確認なさるとよいかと。私は一つ見損ねました。

 大阪中之島美術館で、2024年1月14日まで開催されているそうです。


~以下、本筋とは関係ない話~

 この展覧会を見に行くにあたって、ゲルハルト・リヒター(1932-)の『アブストラクト・ぺインティング(726)』の実物を見られることを楽しみにしていた。最大の理由は、好きなライターの好きな作家だから。なんと不純な動機。宣伝がてら、そのライターが関係している記事を載せておこう。

 想像よりもずっと大きかった。(後から確認したが、縦251cm、横351cmらしい。デカい。)

 絵の具を塗り伸ばして上から引っ掻く、という単純な作業から出来上がった絵だけれど、不思議と奥行きを感じた。存在しないはずの景色もぼんやりと思い浮かんだ。現代美術を見るときは、抽象化の過程でぎゅっと濃縮された要素を紐解くような感じがして面白い。


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