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キュビスム展ルポ:よく知らないジャンルの展覧会が結構良かった話

記事を寝かせすぎて会期が終わってしまいましたが供養。

キュビスム、興味はありつつ、今まであまり触れてこなかった分野。学割も効くのでえいやっとチケットを取ってみました。ボリューム満点だったので、印象深かったエリアだけ抽出してつらつら書いてみます。


キュビスムの成立

冒頭では、キュビスムに影響を与えたポール・セザンヌやアンリ・ルソーらの作品と、アフリカの彫刻が展示されていました。

アフリカの彫刻がキュビスムの源泉の一つとなっていたことは初めて知りました。直線的な目鼻や細長い顔の輪郭などの要素は、この後の区画に展示されていた絵画の随所に見られました。確かに影響を受けていそう。

パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが新たな絵画様式を模索していく過程を理解できました。ピカソの《女性の胸像》と、それに喚起されて描いたブラックの《大きな裸婦》がはす向かいに展示されており、両方の共通点と相違点を考える機会になりました。

他の作品も見る中で、1907、1908年頃のピカソの作品は、対象物を単純な図形に落とし込みつつも一定の立体感を保持しているのに対し、ブラックの作品はかなり平面的な印象を受けました。面白かったのは、3、4年程度の期間で、両者ともに作風が大きく変化していたこと。過去の画家について語る際、話を簡単にまとめようとするとつい代表作にばかり目を向けてしまいがちですが、画家その人が作品を複数手掛ける中で様々な研究を繰り返し作風を変えていく過程は興味深いですね。1911年頃の作品では抽象度がぐっと上がり、何をモチーフにしているのかわかりにくかったり。

各地のキュビスト

ピカソとブラックの章が終わると、二人が生み出したキュビスムに影響を受けた画家らの紹介が始まります。

私が好きだと感じたのはフアン・グリス。初期の作品はセザンヌに倣ったものですが、徐々にコラージュ的な要素が高まっていきます。その画家ならではの作風がだんだんと確立されていくのが面白いな〜と思いました。

シャガールの作品群

キュビスムの作品はどのように図形を組み合わせるかに焦点を当てている分、色彩はシックだったり淡かったりするものが多いように思います。そんな中、シャガールの作品は強い色を使っていて興味をそそられました。好き、というよりも心に引っかかって後から見返したくなったのは《ロシアとロバとその他のものに》。帰りにポストカードも買っちゃいました。

キュビスム以降の作品

やっぱり私は時代の変遷で絵画がどのように移り変わっていったのか見るのが結構好き。今回は、キュビスム以降、機械的な・無駄を削ぎ落とした美しさに発展していったのが興味深かったです。ただ、このエリアは一番最後なので集中力が切れかかっていた気がします。もう一回行ってもいいかも。

おわりに

キュビスムについてほんの少ししか調べることなく訪れた展覧会でしたが、成立期からその後の展開まで順を追って見ることができ楽しかったです。

作品を目の前で鑑賞できるのはやっぱりいいですね。フェルナン・レジェの《婚礼》は淡い色合いの中に華やかさもあり、結婚式の幸せな雰囲気が伝わってきて素敵だなあと思ったのですが、ポストカードサイズになるとなんだか違うな……となり購入を見送りました。

京セラ美術館、今はジブリや村上隆の展覧会でいつもよりもかなり混雑しているように思われますが、キュビスム展は割と空いていてゆっくり鑑賞できました。皆様もぜひ。


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