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牛と暮らした日々-そこにあった句#02 仔牛のベスト

仔牛の寒衣脱がせ裸と思ふ春 鈴木牛後
(こうしのかんいぬがせはだかとおもうはる)

仔牛は生まれるとすぐに親牛から離される。馬や和牛は親馬(牛)が子供を育てるが、酪農は牛乳を出荷するのでいつまでも親の乳を仔牛に飲ませる訳にはいかないからだ。ひとによっては、分娩房(分娩する部屋)で産ませて1日くらい一緒につけていたり、鎖でつながれている親牛の顔のところに仔牛を持っていって舐めさせたりするが、我が家では人間が立ち会って分娩した場合、すぐに離してオリに連れて行く。

生まれたての仔牛は羊水で濡れてブルブル震えている。それを藁やウエス(古布)でゴシゴシ拭く。馬農家の奥さんから聞いたことがあるのだが、馬は親が子を育てるので、ウエスなんかで拭いて人間の臭いをつけてしまうと、親馬は子馬に触らなくなるそうだ。

さて、拭いた後は真冬だととても寒いのでベストを着せる。大昔は餌の入っていた麻袋の上下を切って仔牛にかぶせたり、ちょっと前では百均の人間用の腹巻を縫って仔牛に着せたりしていたようだが、今我が家では酪農用品の会社が販売している、フリース素材で出来たバックル付きの毛布みたいなものを着せている。さすが酪農専用の製品はお値段も良いが、品質や使い勝手も良い。

北海道では4月に入っても日によって外の気温がマイナス15℃(牛舎でプラス1℃くらい)になったりするので、まだ脱がせられない。脱がすのは本当の春。4月中旬から下旬だ。

脱がせると洗濯するのだが、真冬に牛舎で干したら、1ヶ月経っても乾かなかった。だから少々臭うのを我慢して自宅で干している。冬は自宅が牛舎臭くなるが、しょうがない。

ちなみに、親牛でも仔牛でもそうだが、黒い牛は服を着てるように見え、白い牛は裸に見える時がある。

「この子裸じゃない?」とちょっと恥ずかしかったりする。
ふふふ。変だよね。

 

 

 

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