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牛と暮らした日々-そこにあった句#33 根雪

根雪と記し農作業日誌閉づ 鈴木牛後
(ねゆきとしるしのうさぎょうにっしとず)

10月に初雪が降る当地では、11月の下旬になると根雪になる。毎年、初雪が降ると、根雪までのカウントダウンが始まるようで焦る。根雪になると、電牧を下ろす作業をはじめ、外仕事が全て雪の下敷きになるのだ。その前に何とか終わらせなくちゃと焦るのだ。

ぎりぎり間に合い、忙しい農作業が強制終了となると、ほっとする。
そして、半年近くの長い長い冬の始まりだ。

冬になると、雪に閉じ込められる、とても寒い、いつも曇りか雪、日が短くて3時半には薄暗い、など気が滅入ることが多いが、良いこともある。
それは農作業が暇になることだ。

以前のエッセイ『「裸ひとつこの地に捨つるため稼ぐ」の巻』で6月の1年で一番忙しいある日を紹介した。
今回は、12月の1年で一番暇なある日を紹介する。(比較すると季節による労働時間の違いが分かる)

朝は5時に牛舎に行くと6時半には終わる。うちは放牧に有利な春分娩が多いので、今時期は分娩も哺乳もなく、乾乳牛(分娩前の2か月間に搾乳をお休みしている牛)が多くて搾乳頭数が少ないのだ。

牛舎からあがると、コーヒーを豆から挽いて、ゆっくりニュースを見ながら朝ご飯を食べ、コーヒーのおかわりを入れ、さらにスマホして(夫は新聞を読んで)、8時になったら朝ドラを見て、椅子でうたた寝して、それから夕方の4時まで自由時間だ。

自宅では家事と事務仕事はあるが、自営(+うるさくない夫)なので、気分によって、してもしなくても自由だ。(最低限のことはする)

今日は何をしようか、わくわくする。夏にはできない家中の整理整頓をしようか(趣味)、読書をしようか、それとも薪ストーブに火をつけて炎を眺めていようか。

夕方も4時に行くと5時半には終わる。
夜は温泉の素を入れた湯船にゆったり浸ったあと、最近はお酒をやめたので、ノンアルコールビールを飲みながら、ドラマを見る。

夫も毎日のエサの牧草ロール入れはあるが、雪が降るとトラクターで除雪する以外はやはり自由時間で、2階の書斎にこもっている(何をしてるのか不明。たぶん俳句)。

そんな楽しい冬なのだが、半年間も雪の中なので、冬の終わり頃には、白い景色にもずっと2人でいることにも飽きてくる。
(そして、いつのまにか太っている←私だけ)

雪に酔うて話し尽くされたる話 牛後
(ゆきにようてはなしつくされたるはなし)


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