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牛と暮らした日々-そこにあった句#40 ストーブ

ストーブを消せばききゆんと縮む闇  鈴木牛後
 (すとーぶをけせばききゅんとちぢむやみ)
 
立春を過ぎても毎日真冬日の当地では、まだまだストーブが手放せない。自分達で3部屋ぶち抜きの28畳に作ったリビングでは、3台のストーブを使っている。薪ストーブと灯油ストーブ2台だ。それぞれに一長一短があって、何と言っても暖かいのが薪ストーブ。真冬でも窓を開けるくらい暖かいのだが、短所はソファで昼寝をして薪をくべる人がいなくなると消えてしまう事だ。

寝室は2階にあって、そこには別に電気ストーブがあるのだが、夜でも家が冷え切ってしまわないように1階のメインのストーブは一晩中点けていたい。でも薪ストーブだと消えてしまう。そこで、うちでは臨機応変に真冬の昼寝や夜寝の時はリビングで灯油ストーブを点けて寝ている。
 
猫の吐瀉物跨ぎストーブの点火  牛後
(ねこのとしゃぶつまたぎすとーぶのてんか)
 
就農当時、前から飼っていた家猫が牛舎に馴染まないので、引き続き家で飼っていた時に詠んだ灯油ストーブの句だ。
 
ストーブに小さき窓ある忌服かな  牛後
 (すとーぶにちさきまどあるきぶくかな)

炎を見ると癒されるので数年前に窓なしの薪ストーブから窓付きの物に買い換えた。薪ストーブは自然に消えていくので、暖かさも炎も闇も「ききゆん」ではなく「じんわり」縮む。

薪は、40haの敷地内の倒れた木や、雪でつぶれた古い物置の廃材などを春から秋にかけて暇を見つけては切っているのだが、「牧草作業が忙しい」と夫は手伝ってくれない。私の仕事だ。

うちでは夫婦で体感温度が違うので、がんがんストーブを焚きたい私と「暑い暑い」と文句を言う夫の間で、冬中バトルが繰り広げられる。灯油ストーブだとすぐに小さくされてしまうので、簡単には小さく出来ない薪ストーブをがんがん焚いて、ほくそ笑む私なのだ。

ふふふ、私が切ったんだからね。


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