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牛と暮らした日々-そこにあった句#00 はじめに

2023年の秋、牧場をやめることになった。
サラリーマンでいう定年退職である。
自営業なので定年はないが、他の農業と違って酪農は60歳にもなると、かなり体がきつくなる。周りの酪農家も60歳前後で離農している。

息子たちは後を継がない。去年、夫が60歳を迎えたのを機に後継者を探そうと役場に連絡したら、すぐに(本当にすぐに)見つかった。その、跡を継いでくれるKさんが、私のエッセイを読みたいと言ってくれたのだ。

俳人の夫が2018年に全国的な俳句の賞を受賞した。上京した授賞式で(いまや全国的に有名になった)夏井いつきさんに、句の背景となっている酪農生活を妻の側から見てエッセイにしてみないかとお声がけ頂いた。北海道に帰ってすぐに、こことは別のブログに1年間そのエッセイを連載した。
連載が終わったらブログごと削除した。

別に削除に意味はなく、もともと私はかなり飽きっぽく、ブログも立ち上げては消し立ち上げては消しを繰り返してきた。私が死んだら遺族がデジタル遺産の処分に困るだろうという理由で、ネットのコンテンツを辞める時は全て削除した。

しかしここにきて、いざ酪農生活終了のカウントダウンが始まると、少し考えが変わった。今が節目。ここらで人生の棚卸をしても良いんじゃないか。死んでも著者の書籍が残るように、私が死んでこのエッセイが残ってもいいんじゃないか、と。

という事で、以前のエッセイを1年かけて再編集しながら、連載することにする。

どうぞよろしくお願いします。


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