見出し画像

1000以上の郷土レシピをつくったローカルシェフの、地域の「食」のアップデート法

料理っていろんな視点で見ることができます。
昔からある素朴な料理にも「なぜ?」という視点を持つだけで見え方が違います。
僕は、和食から創作料理の道に進み、専門学校などには通わずすべて現場主義で仕事を覚えてきたので、感覚的な部分もたくさんありますが・・・。
こうやって文章にまとめることで、自分自身の経験を感覚ではなく形として残したり、「こういった考え方があるんだ」というヒントになったり、次世代のシェフにこの考え方を広げてもらい、それが地域のオンリーワンの「食」になれたらいいなと思います。

地元も観光客も「みんながうれしい食」とは?

観光地に行くとその土地のものを食べたくなる。
例えばB級グルメのようなファストフードや食文化を味わうグルメ、名産品を活かした商品など。観光情報誌などにはもうここ数十年同じような内容が掲載されています。
一方で、コロナの影響を受け観光産業や飲食店などは大打撃を受け厳しい状況。更に、何処にいても台風や震災などの自然災害の影響を受ける可能性もゼロではありません。
僕たちの日常で楽しんでいる「食」についても、考え直さなければいけない時代になってきているのではないかと思います。

僕が目指す「みんながうれしい食」とは、地域の旬や食文化を活かして豊かな暮らし、幸せを循環させること。
地域の暮らしと密接したからこそ育まれてきた食文化は、旬の食材を活かした暮らしの知恵。伝統野菜は、その土地の風土があるからこそ育まれてきた食材。保存食や発酵食は昔ながらの自然エネルギーを活かした食文化
これらは『地球環境に負担の少ない食文化』とも言えます。

そのエッセンスを引き継ぎながら現代風にアレンジすることは、観光客にとっては地域を感じる食となり、地元に人にとっては新しい料理にもなり、更には環境への負担も少なく、生産者さんや地域の価値も向上する。
地域内に好循環を創ることが経済的に大きな発展をうむとは、決して言いきれないけれど、小さな輪で幸せの循環をしていくことも大切かなと考えてます。
このコロナ騒動で、経済よりもその先に優先するべきものが見えてきている気がします。

伝統的料理に新たなエッセンスを

僕が暮らしている新潟県の郷土料理は、雪国ならではの保存食文化・・・例えば「味噌漬け」「塩漬け」があります。これらには、保存性の高い食材など冬場の餓えをしのぐための知恵や工夫が多く詰め込まれています。
今の時代に当てはめると当然、冷蔵庫や冷凍技術、輸送システムも発達しているので、この昔ながらの方法は不要なものになってしまいます。

ですが、文化遺産としての価値、唯一無二の食文化や伝統としてはものすごく価値のあるものです。
昔は日常的に受け継がれていたものが非日常になってしまい、おばあちゃんの料理として残されているのが現状で、「大切にしましょう」と言っても、新しい魅力ある料理や情報がどんどん入ってくるこの時代には、郷土料理は時代に取り残されてしまいます。

そこで僕がが考えたのが『郷土料理の進化』です。

今の時代のエッセンスを加えることで、郷土料理を進化させる。進化させることで、食べ手は新しい情報として郷土料理を再認識する。
食としての新しいエッセンスだけでなく、地域の暮らしにも価値がつくのではないかと思います。

1000以上の郷土レシピをつくったシェフが取り組んだ地域の「食」をアップデートする3ステップ

【分解する】
僕が勉強してきた創作料理の考え方も一緒なのですが、そのものの原作にリスペクトしながら新たなものを創り出す。音楽でいえば、カバー曲やリミックスのよなイメージ。
なので、これを再構築するには一度そのレシピを分解する必要があります。
歴史的食文化の視点と料理技術的な視点この2つの視点で紐解きます。

【組み合わせる】
紐解いたそのレシピを、理解して創作します。
組み立てるときに大切なのは、なにを表現したいかをはっきりさせること新たなレシピに伝えたいメッセージをしっかり組み込むことです。

組み合わせる中で、世界中の食文化と似たような部分もあったりします。
そんなものを新たに加えてアレンジしてみたり、香りを足してみたり、食のトレンドを組み合わせたりすることで、新たな可能性が引き出せるかもしれません。

【お客様の視点に立つ】
メニュー開発で最後に大事なことは『売れるメニューにすること』です。
「料理は一瞬の芸術」とも言われていますが、食べ手がいなければ腐ってしまうのも料理です。
だからこそお客様に伝わる魅力的な料理にしなければいけません。
そう考えると難しい職業で、失敗もたくさんあります。
僕も失敗だらけです。。(笑)
素晴らしいレシピが完成したら、芸術品だけに終わらせず、たくさんの人に楽しんでもらえる料理になるように。

最後は、売ることにこだわる!

売れなかったでそれで終わりではだめです。
売ることは伝えること!
あきらめ悪く、どうやって売れるかを考えましょう。
メニュー名を変更したり、ポーションを変えて値段を変更したり、おすすめの仕方を変えたり、絶対いろいろあるはずです。
あきらめ悪く、しぶとく売る(伝える)。その中で初めて本物のレシピが完成します。
ぜひチャレンジしてください。

今回はこのあたりで。。

料理理論と書くと難しいイメージがあると思いますが、理解をすると楽しいものです。
それと、とにかく繰り返すこと!
僕は、(失敗作もたくさんありますが)地域を活かしたレシピを1000個以上つくりました。
繰り返し、繰り返し訓練していくことで見える世界が違います。
経験こそが財産です!いろいろチャレンジすることに無駄はない!
また料理理論について続編も書きたいと思います!

ありがとうございました!

SUZUGROUP 鈴木 将






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?