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UCIワールドカップ2020-2021 第1戦 ターボル

シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「UCIワールドカップ」の第1戦が、11/29(日)にチェコ・南ボヘミア州の街ターボルを舞台に開催された。

2010年・2015年には世界選手権の舞台となり、チェコ国内選手権でも会場として使われているチェコ・シクロクロスの中心地とも言える街、ターボル。

登りなどパワーが要求されるセクションが多いものの、サンドセクションや担ぎ区間は多くなく、トリッキーさは少ないとも言える。

↓今シーズンのシクロクロスのここまでの展開については下記を参照↓


男子レースでは昨日のコルトレイク(アーバンクロス)に続きワウト・ファンアールトチーム・ユンボ・ヴィズマ)が参戦。また、来年はイネオス・グレナディアース入りが決まっているイギリスの最強シクロクロッサー、トーマス・ピドコックトリニティ・レーシング)も今期初参戦ということで注目が集まった。

また、GCN Passで小俣雄風太氏による日本語実況解説付での放送も行われ、これをきっかけに日本での海外シクロクロスの人気もより高まっていくと幸い。

小俣氏によるターボル実況メモはこちらから。また、今回からこちらのカタカナ表記に準拠していくこととする。


今回は時間の都合上女子レースも視聴で来たのでそちらについても触れる。


1.女子レース

今回は6周

スタート直後に大きな落車が発生し、ケイティ・コンプトンシリン・ファンローイテレネット・バロワーズ・ライオンズ)が巻き込まれる。シリンは骨折の可能性もあり即時リタイア。

2周目に入って先頭は6名。現世界王者のセイリン・アルバラードアルペシン・フェニックス)、アンマリー・ウォルスト777)、ルシンダ・ブラント(テレネット・バロワーズ・ライオンズ)、デニーセ・ベツェマパウェルズサウゼン・ビンゴール)、パック・ピーテルス(アルペシン・フェニックス)、そしてわずか19歳の有望なハンガリー王者ブランカ・ヴァスが食らいついている。先頭6名の非オランダ人はヴァスのみである。

3周目序盤の登り上げ区間で2番手にいたアルバラードがもたついている間にブラントが単独で抜け出す。

一旦はアルバラードがブラントに追い付くも、3周目中にもう一度突き放し、フィニッシュ地点で2人のタイム差は2秒に。

そしてこれを追いかける3位集団はウォルスト、ベツェマ、ヴァスの3人で19秒差。ピーテルスは1人遅れる形に。


ここ最近ひたすら調子が良く、昨日のコルトレイクも勝利しているブラントはアルバラードとのタイム差を徐々に開いていく。アルバラードはアルバラードで、昨日もそうだったが後半でスタミナが切れる傾向にあるのか、フラフラでミスを連発。

結局、最後はブラントの圧倒的な独走勝利。今期随一の強さを見せつけた。


また、3位争いではウォルストが終盤に少し遅れた結果、ベツェマとヴァスのスプリント勝負に。

ヴァスが勝てばオランダ人による表彰台独占を阻止できたのだが・・・残念ながら4位。ウォルストそこから18秒遅れの5位となった。

女子UCIワールドカップ第1戦ターボル リザルト


続いて男子レースを見ていこう。



2.男子レース

男子レースは8周

今回が今期初参戦となるトム・ピドコックトリニティレーシング)はスタートからミスをしたり5周目のキャンバー区間で落車したりとうまくいかず最終的には16位と沈む。

一方のワウト・ファンアールトチーム・ユンボ・ヴィズマ)は最初こそ先頭集団の後ろの方で遅れかける姿も見せていたが3周目に入ると前から2番手の位置に。

このタイミングで形成された8名の先頭集団は以下の通り。

ワウト・ファンアールト、エリ・イゼルビットパウェルス・サウゼンビンゴール)、マイケル・ファントールノート(パウェルス・サウゼンビンゴール)、トーン・アールツテレネット・バロワーズライオン)、ラース・ファンデルハール(テレネット・バロワーズライオン)、コルネ・ファンケッセルトルマンス・シクロクロスチーム)、クエンティン・ヘルマンス(トルマンス・シクロクロスチーム)、ダーン・ソートグループヘンス・マースコンテナーズ)。


先週のスーパープレスティージュ第4戦メルクスプラスで勝利し、昨日のコルトレイクでもかなりの間先頭を独走しながらもメカトラブルによってあえなく沈んだファントールノートがこの日も絶好調。

とくにシケインや階段などテクニックを必要とする部分でほぼほぼミスのない完璧な走りを見せて、後続を突き放す場面が多々。

決定的になったのが4周目。この周のフィニッシュ地点では突き放した7名の元先頭集団に対し8秒差をつけて独走を開始する。5周目終了時点ではヘルマンス、ソートを千切った残り5名が2番手集団を形成するが、ファントールノートとのタイム差は15秒にまで開いていた。

イゼルビット、アールツ、ファンデルハール、ファンケッセル、そしてファンアールトの5名で形成された追走集団。先頭はアールツが牽引し、背後につけるイゼルビットに前を牽けとジェスチャーを送るが、チームメートが先頭を独走しているイゼルビットが先頭交代する理由がない。

そしてアールツの疲労が溜まってきたタイミングで一気に加速。アールツたちを突き放し、一気に先頭のファントールノートに追い付いた。

ファントールノートとイゼルビット。今回のこのターボルは、こパウェルス・サウゼンビンゴール2人組による一騎打ちとなることが確定した。


テクニックでは(今シーズン通して)常にファントールノートが上手だった。登りの頂点に置かれた難易度の高いシケイン、キャンバー区間、階段、それぞれで常に無駄のない動きを見せるファントールノートはそのたびにイゼルビットとのギャップを開く。

しかし、イゼルビットは純粋にパワーが凄い。ちょっと離されてもすぐシッティングでガシガシ牽いてファントールノートとのギャップを即座に埋める。

ミスのないファントールノートと、パワーで無双するイゼルビット。今シーズンのこの2人は常にこの関係にあるように思う。

しかし最終周回のシケインではイゼルビットもまたミスのない完璧な走りを見せ、このまま二人のスプリント勝負となるか――

と思ったところで、ファントールノートがアタック。そして、ここまで常に食らいついていたイゼルビットも、いよいよ体力が底をついた。

全力全開でペダルを回すファントールノートと、明らかに失速していくイゼルビット。

そのまま、前日あまりにも悔しい敗け方をしたファントールノートが、歓喜のワールドカップ初勝利。

そして1週間前のメルクスプラスに続く、3大シリーズ戦での勝利ということで、彼の躍進を象徴する圧勝であった。


そして3位争いでは、キャンバー区間でミスしたファンアールトに巻き込まれる形でアールツが失速。

逆にファンアールトがここでアールツを突き放し、昨日に引き続く3位に。

UCIワールドカップ第1戦ターボル リザルト


シクロクロス復帰直後の連戦で3位を連取する強さはさすがとしか言いようがないが、一方でまだ彼本来の力を取り戻せているとは言い難い。

このまま、マチュー・ファンデルポールが復帰する段になったらどうなるか。


3大シリーズ戦における次戦は12/6(日)のスーパープレステージ第5「ボーム」。ファンアールトも参戦する。

また、マチュー・ファンデルポールの初参戦は12/12(土)のX2Oトロフェー第3戦「スヘルデクロス(アントワープ)」。

そして二人の直接対決が実現するのが、12/23(水)のX2Oトロフェー第4戦「ヘーレンタルス」。


年末にかけてシクロクロスシーズンもどんどん熱くなっていく。

ぜひ、見逃すことのないよう、チェックしていこう。

そして見逃した場合&日本語実況がなく状況が分からない場合は、こちらのノートをフォローしていただき、レースレポートをチェックしていただけると幸いだ。

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