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【考察】好きを追うことは、悪なのか

昔 バイト先に30歳手前にも拘らず定職に就いていない先輩がいた。理由はバンドをしているから。よくある話だ。

その先輩は前歯が一本抜けているが人当たり良く、カラオケボックスという魑魅魍魎とした職場でも颯爽と仕事をこなし、僕も大好きだった。

しかし、バンドしているから就職しないという理由が大学生の僕にはどうにも咀嚼できず、どこかで見下していることは否定できなかった。
前歯の一本も治せない人がどうして天下を獲れるのか。

人生から逃げている。

そう決めつけていたことは否定できない。


■朝日

前歯先輩に対しては、本当に努力しているのか?という疑問は常に付きまとっていたけれど、あぁこの人ギター好きなんだな。というのは凄く伝わって来た。

だからある時、「歌詞書いてくんねぇかな」と言われた時はちょっと嬉しかった。
僕は1週間で「朝日」というタイトルの歌詞を書いた。

細部までは覚えていないけど、

サンセットでうっとりしているカップルさん聞いてくれ。皆さんは台風一過のような朝の都会で、朝靄が掛かった汚ねぇビルの合間から出てくる朝日を見たことがあるかい?(バイト帰りの)オレたちは毎日あいつを見てる。あいつは強いぜ。夕陽なんかよりよっぽど魅力的だ。

みたいな感じで、深夜バイトをポジティブに表現してみた。

前歯先輩はさっそくカッコいい曲を付けてくれた。素人丸出しの歌詞が作品になった。それを吉祥寺のライブハウスで聞いた時はしびれた。

前歯先輩!すげぇっす!!

好きを追うことの凄さを知った瞬間だったかもしれない。


■SNS

僕はそのあときっちり大学を卒業して、きっちり就職活動して、きっちり会社員になった。好きな事を優先するより、(世間が言うところの)やるべき事をしてきた感じだ。

好きな事を追っていた先輩は今頃どうしているのだろうか。
バイト中は颯爽と仕事をこなしていた先輩だけど恐らく今では僕の方が仕事が出来て、稼ぎがいいに違いない。何の根拠もないけれど、そんな気がする。


しかし、

SNSが隆盛して、youtubeだけじゃなくtiktokなど動画アプリがたくさん出てきて僕の考えは少し変わった。

これらのツールを使ってマネタイズまで出来ている人たちって、いずれも「好き」を貫いてきた人が多いということに気付いたから。
例えばギターテクニックの手元だけを見せるような動画でも思わず見入ってしまう。昔はギターをして金を稼ぐためには大手のレコード会社に認められてCDを出すしかなかったはずだ。

でも、今は違う。


■好きを追うことは、悪なのか

もしかしたら、あの時どこか見下していた前歯先輩は大好きなギターを貫いて、今どこかで僕よりも稼いでいるかもしれない。

好きを追うことは、確実に市民権を得た。つまり、悪ではなくなったというわけだ。


少しだけ思慮深くなって意見してみると、
懸念点は、今後はこの成功者たちを盾に誤解する人たちが増えてくることかもしれない。

好きな事を追うことと、好きな事を理由に何かから逃げることは大違い、ということだ。


僕はこれから、好きな事を追い続ける人を見下したりはしない。しかし一方で、その目を見て本当に好きで言っているのか否かを見極めるかもしれない。

好きを追うことは、悪ではない。
ただし結果に拘るも、結果に媚びるな。ただただ好きであれ!




本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!


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