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#198 ホワイト企業離職

少し前に話題になったホワイト企業離職という言葉。

会社がハラスメントやコンプライアンスを恐れて若手に仕事を任せるという行為に消極的になり、それに対して熱意ある若手がネガティブな感情を抱き、最終的には退職するという。

仕事が緩いことがホワイト企業の定義かと言われるとそれはちょっと違うけど、得てしてハラスメントやコンプライアンスに敏感な会社≒ホワイト企業と言うのは間違っていないと思う。
そしてそういう会社は迅速にルールを作り、それが現場の裁量を難しくして、結果として任せるべき仕事が緩くなるという実態はあるかもしれない。


この現象について、
なるほどな、と思う。

ちょっと前にコンフォートゾーンとパニックゾーンのバランスについて書いてみた。
人ってのは理不尽で、コンフォート(快適)を求めるくせに、常にそれでは満足感を得られない。じゃあみんなでコンフォートゾーンを飛び出せ!と号令すれば今度は快適を求めるヤツから不満が出る。パワハラだ、と。

つまり集団を相手にしている時点でこの問題に解は無い。


■対等と言う考え

あっちを立てればこっちが騒ぐ。こっちを立てればあっちが騒ぐ。

軍隊気質が残っていて画一的に動くことを善としていた戦後の高度経済成長期はそれでよかった。バブル崩壊後辺りから少しづつその雰囲気は変化していくけど、今度は軍隊気質で育った人たちが上司となってやっぱりこの風潮は消えなかった。

でも今は違う。
画一的はハラスメントだ。画一的はコンプラ違反だ。画一的はイノベーションを生まない。画一的は失われた20年、30年の諸悪の根源だ。

そう叫ばれて、自由な着想こそ善とするようになる。
それで様々な考えを持つ人たちが社内に混在するようになって(正確にはもともと混在していたけど声を上げるようになってきて)、会社のルールで満足できない人が騒ぐようになった。
まさに、あっちを立てればこっちが騒ぐ。こっちを立てればあっちが騒ぐ状態だ。

そこで会社は考えた。

もう自分たちで勝手にやったらいいじゃん!!

これが巷で耳にする、ジョブ型である。



社員は家族。だから守ってあげる。その代わり家訓に従ってね。
という考えを、会社は捨てた。

もう家族じゃありません。これからは会社と社員は対等です。なので両者の関係は契約でしっかり決めましょう。たくさんお金が欲しかったらウチ(会社)にとって有益な能力を身に付けて下さい。そんなものない?だったら他へ行ってください。だってそういう契約ですから。

その逆もあったりする。
ウチの方針に納得いかないなら他へ行ってもらって構いませんよ。ウチで働いていても将来の自分に有益な能力が身に付かない?それは残念です。そんな方も他へ行ってもらって構いません。


ホワイト企業離職とは、この世界観を先取りした敏感な若手の行動だと言えよう。つまり起こるべくして起きた。

なるほど。



■危ない人たち

はっきり言って、
その言葉の使い方の良し悪しはさておき、ホワイト企業離職と言う現象は、会社を取り巻く環境の変化を迅速に現した割とポジティブな言葉なのかもしれない。

ヤバいのは、
ハラスメントだコンプラ違反だと会社に対して叫びながら一方で、会社が自分を守ってくれているという感覚をどこかを持ち続けている人たち。

それはあの忌々しき就職氷河期を勝ち抜き、雇ってもらった会社に愛と恩を感じている世代かもしれない。リーマンショックが2008年なら今現在は社歴15年目前後の超働き盛りだ。
仕事や会社に対して純粋にがんばれる世代にとって、会社に対して「対等」「契約」という考えが持てるかどうか。

いや、苦しい時代を生き抜いてきたその生命力で既に時代とマッチし、むしろジョブ型を推進する立場にいるのかもしれない。


いずれにせよ、
(はじめのうちはなかなか上手くいかないと思うけど)会社と社員の関係は近い将来大きく変化する。その波を先取りした人が勝って、乗り遅れた人が苦労する。

ホワイト企業離職という言葉にはその一端が見える。



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