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【最近読んだ本】やりたいことは目の前にあるのかも…『やりたいことなんて、なくていい──将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義』

 みなさんは、学生時代の進路選択の時期に「自分が何をやりたいのか」がわからずに悩んだ経験はないだろうか?

 私もその一人で、いくら探してももっと勉強したいことや、職業にしたいことが思い浮かばなかった。周りの同級生たちは「看護師になりたい」「大学で心理学を勉強したい」など目標がはっきりしている人も多く、やりたいことがない自分がコンプレックスだった。

 「やりたいこと探し」は社会人になっても続いた。
楽器、外国語、書道…習い事を掛け持ちしたり、仕事に役立ちそうな講座があれば受講したりと積極的にやりたいことを探し回った。結果、何も見つからなかったという痛い時期もあった。
その後、結婚や転職などを経て自分探しは落ち着いたものの、専門分野を活かして仕事をしている人がうらやましくなることが時々ある。

 だから、図書館で『やりたいことなんてなくていい』という本書のタイトルを見た途端に、「まさに過去の自分のために書かれた本だ!」と救われた気がした。
そして、自分のように「やりたいことがない人」はどのようにキャリアを積み重ねていくものか興味がわいた。

 著者は、ヤフー株式会社の企業内大学Yahoo!アカデミアの学長・伊藤羊一(いとうよういち)さんである。銀行、文房具メーカー勤務を経て、現在はヤフーで、社内の次期リーダーを担う人材の育成を行っている。

 本書は、大学卒業後やりたいことが見つからないままに就職した著者が、仕事に全力で取り組み、思いもよらなかったキャリアを歩むことになるまでがつづられている。

 印象に残ったのは、「やりたいことがなくても、目の前にある仕事に懸命に取り組み出来ることが増やしていくと、新たな自分の道が生まれることがある」ということだ。

 著者は、現在「リーダーシップ開発」と「プレゼンテーション指導」を専門に指導している。どちらも以前の職場での経験がベースになっている。リーダーの立場を担ったことや、必要に迫られて、社内の営業職の人たちににプレゼンテーションを指導していた。

 与えられた仕事に120%の力で取り組み続けたところ、いつの間にか自身の強みとなり、ついには教えるまでになったという。

……とここまで聞くと、キャリアを積み重ねれば指導できるようになるいう当たり前のことのように見える。

 私が驚いたのは、それらは「やりたいこと」でもなくキャリアプランも特になかったという点だ。

 今の私が専門としている仕事は、「当時の職場でやらなければならなかったこと」とか、「たまたま頼まれて始めたこと」ばかりです。
 最初から「やりたい!」なんて気持ちは一切ありませんでした。
 自分で「こんなキャリアをつくっていこう」と思って始めたことではありません。」

引用元『やりたいことなんて、なくていい。』伊藤羊一著

 私にとっては、Yahoo!というと知らない人はいない、世界的大企業というイメージだ。その次期リーダーを育成する著者は、計画的にキャリアを積み重ねてきた人なのだと、勝手に想像していたのだ。

 例えやりたいことでなくても、必要に迫られたことに全力で取り組み、できることを増やしていく。それらを掛け合わせることで唯一無二のキャリアが積み重なっていくのだと思った。


 また、著者が言う「利他と利己の共存」の視点も欠かせないと感じた。自分だけが良いというのではなく、社会がよくなることで自分も幸せになるという考えだ。確かに、自己満足だけだと仕事として成り立たない。逆に自分のしている仕事が、社会に喜ばれたらもっと幸せを感じ、やりがいに繋がるだろう。


 目の前にある仕事に全力で取り組むことで、気が付けば自分の道が作られていく。無理やり自分を探さなくてもいい。利己と利他のバランスを意識しながら、今の仕事を精一杯やっていくことで思いもよらなかった道が開けてくるかもしれない。そう考えると、日々の仕事へのモチベーションが高まるし、将来が楽しみになるだろう。

 この本を、迷走していた過去の自分に読ませたい。そして今、同じようにやりたいことを探してモヤモヤしている人にもおススメの一冊である。



『やりたいことなんて、なくていい。
             ──将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義』

著者:伊藤羊一

発行:株式会社PHP研究所