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【エッセイ】大人になってから感じた、手作りの楽しさ

先日、物づくりの講座に参加した。
講師が用意した色とりどりのカラータイルを組み合わせ、コースターを2つ作る、というものだ。

申し込んだきっかけは、講座チラシに掲載されていた見本写真だった。
講師が作ったもので、カラフルでポップなデザインを見て「私も作ってみたい」と思った。

しかし、講座当日が近づくにつれ、楽しみな反面、不安を感じていた。
なぜなら、私は小さい頃から手仕事などの細かい作業だったり、絵やデザインといった配色センスが求められるものが苦手だったから。

中学校の技術家庭では、木工や裁縫に苦戦。授業時間内に作品が完成できず、放課後に補習して何とか提出していた。

美術では、授業に休まず出席し、作品も提出し、テストも平均点だったのにもかかわらず成績が2だったこともあり、劣等感も感じていた。徐々に苦手意識を感じるようになっていた。

そんな気持ちの中で迎えた講座当日。
受講メンバーは10名ほど。30~70代くらいまでの幅広い年代の人たちが参加していた。
講師は美術教室を主宰しており、子どもから大人まで指導しているという方だった。

講師の紹介と説明が終わり、それぞれがコースターに使うタイルを選ぶ。
赤、青、緑、白など色とりどりで、形も正方形、長方形、中には花の形をしたものなど可愛らしいものもあり、ワクワクした。

だが、完成形が想像できない。迷っているうちに時間が過ぎていく。
そこで直感的にタイルを選んでみた。

次は、コースター型の上にタイルを並べ、デザインを決める。
迷走していると講師が声をかけてくれた。
1㎝の正方形のタイルばかりを選んでいる私を見て、「例えば、白い正方形のタイル1つを、緑の正方形のタイル4つで囲んでみるとお花のように見えますよ」とアドバイスしてくれた。

「そっか、タイルを組み合わせて模様を作ることもできる」。新たな発想を得た気がした。そして、完成したのがこちら。

写真左側のコースターは、講師のアドバイスを活かして作ったものだ。
中央部分には、白い花の周りに緑の正方形のタイルを4つ置いた。
試行錯誤しているうち、模様の様々なバリエーションが生まれるのが面白いと思った。

無事に作品が完成し、最後に参加者全員の作品を並べて見せ合った。
ピンクやオレンジなど明るい色合いのカラフルな作品、長方形と丸型のタイルを組み合わせて作ったものなど、制作者の個性が出ている。

そして「綺麗な色ですね」「この組み合わせは思いつかなかった!」など口々に感想を伝え合った。私も「爽やかな色合いですね」と褒められて嬉しかった。
学生時代のように、成績がつけられるわけでもない、温かな雰囲気に包まれていた。

講座の後、講師と話した。
昔から図工が苦手で不安だったが、楽しかったこととお礼を伝えた。
すると、「私の教室にも大人の生徒さんがいらっしゃるのですが、子どもの頃は図工が苦手だったのに、大人になってから教室に来てやってみたら楽しいとおっしゃる方多いですね」とおっしゃっていて、思わず共感した。

もちろん、講師が生徒の発想を引き出す力も大きいが、評価を気にせず、自由な発想で作るのは楽しいと思った。
そして、子どものころからの苦手意識が少しやわらいだ気がした。