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〇〇冷やし

暑い。猛暑である。モウショうがない。酷暑である。コクショうさゆりである。あまりの暑さに脳が蕩けだしている。そんな折に町中華に張り出されるのが「冷やし中華はじめました」の文字。AMEMIYAの手掛けた名曲には、冷やし中華に纏わる悲哀がよく表現されている。

だが、私がしたい話は冷やし中華ではない。茨城県民なら誰もが知っているソウルフード、スタミナ冷やし、である。因みにスタミナ冷やしは通年食べることができる。誕生は昭和50年代、勝田駅近くにある中華料理店「大進」で生まれた。レバーやカボチャ、キャベツなどを素揚げし甘辛の餡に絡めたものを、冷たく締めたもちもちの太麺の上にぶっかける、というのが基本である。冷たい麺の上に熱々の餡という取り合わせが絶妙の温度を形成し、うま味を出している。特にレバーの鮮度は重要であり、厚切りで出しても臭みがないものを出せる店が名店と呼ばれている。

ちなみにこのスタミナ冷やしを誕生させた人物は、その後これを他者に譲り、自らは新たな味としてホルモン冷やしなるものを始めた。名前の通りホルモン(シロ)をレバーの代わりに使用しているが、スタミナ冷やしほどの拡がりは見せていないようである。

スタミナ冷やしが生まれた「大進」は、新たに異なる「冷やし」を完成させた。それが茨城最強麺と個人的に推す「焼肉冷やし」である。こちらはスタミナ冷やしの餡をベースにしながらも焼肉に特化し野菜を入れないこと。因みに焼肉とは豚肉の唐揚げである。焼肉以外の具は、ネギ、ワカメ、そしてコーンである。ここに究極のジャンク麺が誕生したというわけだ。

その旨さ、まさに「筆舌に尽くしがたい」。甘辛のスタミナ餡に、豚肉の唐揚げだけ。レバーのどうしたってある独特の臭みも、説教じみた野菜も無い、ただの甘辛い餡に絡まったお肉と麺、旨くないわけがないのである。

勝田駅前というロケーション、短い営業時間、狭い店内などハードルは高く、行列も絶えない人気店。だがその高みに挑むだけの価値はある。私はこの店に年に一度出向き、焼肉冷やしをいただくことをライフワークにしている。こういう店は他に、水戸のピッチャーゴロや日立の朝楽苑くらいしかない。スタミナ冷やしの店は多いが、焼肉冷やしの店は、私の知りうる限り、大進、一軒だけである。

暑い夏が来るたびに、焼肉冷やしが食べたくなる。今年もひたちなかへ、出向かねばなるまい

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