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裏弥生軒

弥生軒と聞いて唐揚げを想像する人は、なかなかの鉄分を有している。あるいは大食いマニアか。さもなくば、山下清ファンか。世の中的には、あのチェーンの、お代わり自由のご飯がぽろっぽろっと乾いたウンチみたいに落ちてくる(やめろ)あの定食屋のほうがメイジャーであろう。前者の事を話す。そう、千葉は我孫子駅のJBSLホーム内にある立ち食い蕎麦屋さんである。

JRホーム内の蕎麦屋は、掃討作戦により小規模店はほぼ壊滅。代わってJR東日本の子会社が運営する蕎麦屋になってしまった。おかげでかつてのような個性的な店は減り、どこの駅でも同じようなメニューの同じようなものしか食べられなくなってしまった。これらは大量化により価格を下げてくれているから結構利用させてもらってるし、それ故文句は言えないのだが、でもまぁ寂しいのは寂しい。

そんな中でも意地なのか、JRのご厚意なのか、あるいは勝ち目がないのか、非JR系もあるにはある。品川駅の店がそうだし、北千住もそう。少しマニアックに言えば東神奈川、金町、上野駅7・8番線ホームなどもそうである。そして弥生軒もまた、非JR系となる。

名物は言うまでもなく唐揚げである。巨大なそれは現代の格好の映えアイテムであり、時折山積みされたものなど目にすることがある。勿論くだらないことであり、相手にするべきではない。二個入りまでは標準であり、それで十分なヴィデュアルなので、それで落ち着いてほしいところ。旨いのも二個までであろう。

で、実は唐揚げよりも旨いメニューがある。天ぷらである。唐揚げ170円に対して天ぷらはたったの90円。それでいてなかなかに大判な掻き揚げ。メインは小エビ(オキアミ)で、実にたっぷりと入っている。そこに野菜類が加わり形成された掻き揚げ。そのままカリカリもいいが、私はあえて「天地返し」し丼底へ。麺で蓋してしまう。そしてやはらかになりながら剝がれていくそれを麵とともにいただく。最後はドロドロになった汁をグビりと飲(や)る。美しき下手味の世界である。

夏限定で冷やしかけそばというのがある。これに天ぷらをのっけるのがまたたまらない。これには生卵も追加する。ドロドロのトロトロのツルツルは最高の夏メシである。

ここに「きつね」を入れるのも好きだった。お揚げである。だがこれはいつの間にかなくなってしまった。以前あった穴子天も、無くなってしまった。となると、天ぷらも安泰とは言えまい。ちくわ天のほうがやばい気もするが。

という事で私は今日も天ぷらそばを食べるのである。弥生軒の天ぷらフォエバー。

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