映画「ルックバック」を見て
Amazonプライムで映画「ルックバック」を見た。
漫画が公開されていたのは、もう三年も前。
全ページ無料公開されていて、当時の私は絵を描いていたので何度も読んだ。
ちょっとだけ感想を書いてた。
私はすっかり絵を描かなくなってしまったのやけど、この話は誰でも心にひっかかる映画やと思う。
ルックバックとは?
藤本タツキ先生が描いた漫画。
掲載当初は全ページ無料で公開されて、めちゃくちゃ話題になり、閲覧数もすごかったようです。
登場人物をざっくりと
絵が上手くて学級新聞の四コマを描いている藤野と、不登校で藤野の漫画のファンで写実的な絵が上手い京本という同級生二人のお話し。
※ネタバレを含みます!
私の見た感想は、見る人によって刺さるポイントが違うのかなぁって思う。
心の中の感情を揺さぶる場面が多く、作られた感動シーンというより事実っぽい。
やー、そこ泣くシーンちゃうやろ!?という場面でなぜか涙がでてくる。
漫画の時より、キャラクターの声が入っていてとても活き活きしている!
藤野の話し方がすごい好きだ。
才能と挫折
漫画を読んだ時は、私はちょうど絵の練習をしていて、あのマルマンのスケッチブックを使っていた。
だから藤野のスケッチブックが積みあがっていくのがすごいと思った。
でも、それを超える京本のスケッチブックの山を見て震えて、自分がちっぽけに思えた。
絵の練習をしたのは人生で2回あって、中学生の時と、3年前ごろの時期。
そのどちらもスケッチブックが山のように積み重なることはなかった。
あんな風に夢中になってできることはすごいことだと思う。
たぶんパッと見たら京本が天才で、藤野が普通の人という対比なのかなと思うけど、藤野も天才で、絵が上手い=天才とした時あてはまらないということなのかなって。
藤野がひたすら練習して描きなぐっているシーンがとても好きだったりする。
とにかく描け!バカ!が好きなシーン。
映画では、みんなに絵が上手いともてはやされていた藤野が、ある時京本の絵と並んでその違いに驚き、悔しくなって絵の勉強を始めるシーンがある。
自分の得意なことで、負けた!って思ったんだ。
これは絵に限らずみんな経験があるんじゃないのかなと思う。
自分が足が速いと思っていたのに、はるかに速い子が現れた時。
勉強が出来ると思っていたのに、自分よりも知識の深い子が現れた時。
私は中学の時に陸上部で走り幅跳びをしていた。
高校では違う部活に入ったけど、運動神経抜群の子がいて走り幅跳びの跳び方も知らないのに自分よりも軽々跳んだ。
そして、それをすごいとも思ってなさそうな姿を見た時のことが、藤野が(描くの)「やーめた」って言った時に頭に浮かんだ。
私の挫折って1番はあれだと思う。
3年間がんばった陸上競技、やった事もない子にあっさりと大したことないんだよって言われたような気持ちになったこと。
小学生の頃の運動能力は純粋な運動神経。
中学生の頃は努力の証。
そして高校生になると、努力では埋まらない何かがあるのかもしれないと思う。
それが才能とか持って生まれたものとかいうやつじゃないのか、と気づく時期が誰にでもあると思うんだ。
才能があるとか、ないとか、そういう話は人によって色んなとらえ方があると思う。
私は誰にだって才能はあって、それが世界に求められるかどうか、死ぬまでに気づけるかどうか、は別の話しなんだと思っている。
イラストの世界で例えると、大勢の人が認める絵を描ける人が才能があって、万人受けしない絵を描く人は才能がないのか?
違うよね?
それと同じだと思う。
なのに、私たちは世間がいいって言うもの、人気があるもの、それを持っている人たちを見て「才能がある」って言う。
でも、誰が認めなくても、そこには絶対あるんだと思う。
何のために?
「私、漫画描くの好きじゃないんだよ。描くよりも読むだけにしといた方がいいよ。」
「藤野ちゃんはなんで漫画を描いてるの?」
みたいなシーンがある。
直接の答えのセリフはないのやけど、藤野の漫画のファンです!と言ったキラキラした瞳の京本の顔が映される。
もう、ここで私は泣いちゃう。
そうだよね!!
作中、藤野はひとりで連載を始め、始めは人気がなかったもののどんどんランキングが上がっていってアニメ化の話しがでるほどに。
それは世間のみんなが「おもしろい!」って思った証拠。
でも、藤野が漫画を描く理由は京本が「藤野先生のファンです!漫画好きです!」って言ったことが大きいんだろうなと思った。
自分よりも才能があって絵が上手いと思っていた、たったひとりの言葉が。
世の中にたくさんのクリエイターさんがいるけれど、本当に楽しい100%だけで仕事をできている人はいるのかな?って思う。
しんどかったり、葛藤したり、そんな中で自分の純粋な欲望と喜んでくれる人の為にしているんじゃないのかなと思う。
そして出来上がったものだけを見て、周りの人は「すごい!」「才能ある!」とか無責任に言ってるだけなんじゃないかなーと思ったり。
確かに成果物だけで評価するんだからそれでいい。
やけど、ルックバックは漫画家がどうやって漫画を生み出しているのかを描いてて。
それが、漫画家でない人にも違うかたちで刺さるんじゃないかなーと思う。
藤野のうしろ姿から感じるもの。
人から見えていない部分。
夜勤の孤独だったり。
誰にも評価されない仕事だったり。
地味で面倒で目立たない部分。
他人に理解されないけど、確かに存在している仕事たち。
同時に自分は藤野みたいに生きれていないという気持ちも湧き上がってしまって、それが合わさって不思議な涙がでてしまう人もいるのかもなって。
音楽もめっちゃいい。
まとまらない感想になってしまったけど、とてもいい映画でした。