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島に憧れる私が過ごした2週間vol.3~ごりりんの塩づくり~


塩って

塩ってどうやってできてるか知っている?
海水から水を抜けばできるでしょ?それは知ってるけど詳しい作り方なんて…しかも手作りの塩なんて……知らない!

長崎県五島列島のうちの一つ新上五島町で手作りの塩「手塩」をつくる小野敬さんこと”ごりりん”。
ごりりんのこだわり抜いた作り方を紹介したい。

※塩釜などの写真がなかったのでお借りしました!
http://www.misoba.jp/2019/05/01/tesio/


塩ができるまで


ごりりんの一日は起床と同時にかまどに火を入れることから始まる。
汲んできた海水から水分を飛ばし、塩分濃度の高い海水を作るためのかまどへ向かう。
朝がまだ薄暗い時間は暗闇の中に小さな炎が揺らめいているだけ。
前夜の就寝前にくべた太い薪の残りがまだほんのり残っているので、少し紙くずを入れるだけで再び炎が上がりだす。


仕上げ用の釜を海水と亀の子たわしで丁寧に洗うことも忘れない。
釜は通常、ステンレスやアルミを使うことが多いが、ここでは鉄釜
鉄釜は、丁寧に洗わないと、塩に赤黒い色がついてしまったり味にえぐみが出てしまう。
でも鉄窯を使用した方が美味しい塩ができるのだとか。

鉄窯の外見
鉄窯の中 この時点でもう海水には見えない


同じ海水をとっても、
満潮の海水から作った塩の方が結晶の粒は大きくなり、味も優しくまろやか
逆に干潮の塩の海水から作った塩は結晶が細かくザラザラした感じでとがったようなきつい味になるのだそう。

だからごりりんは満潮の海水を使う。

なぜこうなるのか分からない。
自然の不思議な力がはたらいているのだろうか。


海水はポンプでまず「風力による海水蒸発施設」まで汲み上げられる。
貯水タンクの海水を魚網につたわせて循環させ、海水をゆっくり落下させることで海水に目いっぱい風を多く充てる。この風の力によって水分を飛ばし、塩分濃度を上げている。
これによって塩分濃度は、汲み上げたては3%、1日水分を飛ばすと夏なら4,5%、冬は6~8%まで上がる。
冬の方が風が強く、かつ湿度が低いので水分が飛びやすい。
一方、夏、特に梅雨は、塩の品質管理が大変で塩の置いてある部屋は24時間除湿機をつけっぱなしにしているそう。塩の大敵は多湿、湿気だ。

風力蒸発施設で濃縮された海水は、より塩分濃度の濃い海水(カン水)作成用の釜まで運ばれる。
あとは火を焚いて海水を煮えたぎらせ、水分を蒸発させて塩分濃度を高める。ここでは最終的に22~23%まで塩分濃度が上昇する。

できたカン水は土甕(どがめ)に移し、減った分だけまた海水を足しこれを起床から就寝まで繰り返す。

カン水用のかまどにも、仕上げ用のかまどにも薪をくべ続ける。最近では電熱や可燃油を用いるところも多いが、ここではあくまでも”薪”
遠赤外線を放出する薪でじっくり焚き上げることで、まろやかで深い味わいが出るそう。

仕上げ用の釜の表面に塩の結晶が浮かび始める。ここまでは比較的強い火で焚いていたが、ここからはごく弱火。火の取り扱いに一段と注意が出てくる行程。

火が強すぎると、ミネラル分が飛んで甘みが減り、色の赤い塩に。火が弱すぎると、えぐみが出て重い味になり色も青黒くなってしまう。
この火の塩梅は、長年のカンから
1時間おきに火を見に行き、浮いては沈む結晶を網ですくいあげ土甕にためていく(寝かせておく)。


仕上げ用の釜


釜の中のカン水がだいぶ減ってくるととろみが出てくる。ここで朝から貯めた土甕の中に塩をいったん釜に戻す「天地返し」を行う。
最初の方にすくった塩と最後にすくった塩とでは味が違う。最初は甘くてまろやかで味が軽く、最後は力強い辛みがあり苦い。これらを混ぜることで均等にし、甘さとシャープさを兼ね備えたバランスの良い味にする。
追い焚きすること20分、しっかりと混ぜ合わさった塩を残った液体ごと小鍋で土甕に入れたら仕上げ作業完了。
残った液体が「にがり」。

前日に作った塩の水分(にがり液)を抜くために布袋に塩を詰め、遠心分離機にかける。その後塩を外に広げて太陽の光を直接浴びせる。
仕上げてから結晶に太陽を浴びせるのはごりりんのこだわり。「こうすると余計な水分が抜けてさらさらするし、何より太陽のパワーを吸収して塩が喜んでいるように見える」という。

塩づくりをやってみて、見てみて

塩づくりは、カン水用と仕上げ用のかまどに約1時間おきに薪をくべることがメイン。
私たちの体の2倍はある薪を数本入れても、1時間後にはほとんどなくなっている。何といっても火の調節が難しいかった…。
1時間のうちに薪が燃え尽きて火が消えてしまったらまた火を起こす必要があるし、それを避けたいと思ってぶっとい薪を何本も入れたら火が強くなりすぎてしまって良い塩にはできない…。
夏にはかまどの近くの温度が上がるから、汗だく&すすまみれ!薪をくべる数分の作業で思った以上に体力を使う。

かまどに薪を入れているところ


できた塩を梱包するときも注意が必要。塩の中に小さなすすが混じっているので全て手作業で取り除いていく。せっかく袋に詰めた塩も外から見て黒い粒が入っていたらやり直し…根気のいる作業。
袋詰めが終わったら、中に空気が入らないようにしっかり密閉。これも細心の注意を払って。

どの作業工程も気が抜けない、妥協ができないものばかりだった。
それはごりりんの塩づくりへの思いをひしひしと感じたから。私たちが手伝ったことによってこの塩づくりをダメにしてはいけないと思った。

ごりりんの塩

他での塩の作り方は知らないからはっきりとは言えないけど、ここまでこだわってつくられた塩はあまりないんじゃないかと思う。
私が普段スーパーで買う塩とは何もかもが違う。

まず見た目、ごりりんの塩の方が粒が大きく、結晶が目で見ても分かる。ひとえに綺麗。

そして味。普段あまり塩を食べない私でさえわかるおいしさ。塩の中に甘みって感じるんだとびっくりした。塩だけで食べたい!と思うほど。

お土産の購入し、家族にも布教。
「塩一つまみでご飯一杯いける!」と姉。
「いや、塩一つまみでビールだな!」と母。家族全員が絶賛。

これを読んでくれた人には1回食べてみることをおすすめしたい。こだわり抜いて作られた塩の美味しさを前面に感じられる。

手師のの作り方の説明は
くらしの学校「えん」HP 手塩ができるまで~小野家の一日~より

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