見出し画像

スージー鈴木『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)の「おわりに」無料公開

出版社の了解も得て「おわりに」を無料公開します。なお「はじめに」はこちらから。

2023年10月30日、ニッポン放送『垣花正 あなたとハッピー!』にて、中森明菜による新録セルフカバー『北ウイング-CLASSIC-』がオンエアされた。絞り出すようなボーカルには、「アーバン」云々を超えた、「今」の彼女としてのリアリティがあった。

翌々日の11月1日(10月30日から見れば「明後日」)、『別冊太陽 小泉今日子 そして、今日のわたし』(平凡社)が発売。彼女が遠くを見つめているような表紙が素晴らしく、即買いした。彼女の「今」を全編にわたって取り上げた意欲的な編集。読んで分かったのは、小泉今日子が動き続けているということだ。

その『別冊太陽』の中に、「小泉今日子を知る204の質問」というコーナーがあり、「カラオケの十八番は?」という問いに「スローモーション」と答えていて、ちょっとほっこりとした。いい話だなと思った。

動きを止めていた中森明菜と動き続けていた小泉今日子。この同級生にして「ライバル」が、揃って還暦へと向かっていく。60歳というタイミングを過度に重要視する必要はないと思いつつ、80年代を席巻した彼女たちが、今後どう動いていくのか、今後の人生にどう決着を付けていくのかが、とても気になる。

というのは、私も同じく、60年代の中盤に生まれ、80年代の中盤に成人し、そして今、還暦へのカウントダウンが始まったところにいる。レベルこそ違え、私のささやかな人生にも、ささやかな人生なりに決着を付けなければならないからだ。

本書は、そんなタイミングで取り組んだ一冊である。

50代後半というタイミングで、中森明菜が残した作品を、新たな気持ちで聴き込むことから生まれてきたのは、僭越な言い方をすれば、彼女の音楽をもっともっと語ってあげるべきだという思いである。

中森明菜を語ろう。神格化せず、矮小化せず、音そのもの、声そのもの、歌そのものを語ろう――すべてはそれからだと思う。

だから、個人的な見解と偏愛にあふれているであろう本書、『水に挿した花』に我ながら過剰に思い入れた本書だが、これは56歳(執筆時点)スージー鈴木としての「中森明菜の音楽」論である。これを読んでいただいた方々が、皆さんなりの「中森明菜の音楽」論を展開していただければいいなぁ。すべてはそれから 。

主にデータ面で後方支援していただいた年上のAさんと年下のNさんに感謝したい。

2023年11月5日 スージー鈴木(日本シリーズ最終戦の日に)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?