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白いカーネーション・7「遺影はこれにしてほしい」

今まで何人かのご葬儀に参列してきましたが、
斎場にはいった瞬間、
パッと目に入ってくる「遺影」は
その方が亡くなってしまった事実を
つきつけられます。

その笑顔が、優しければ優しいほど、
思い出がよみがえるようで切ないものです。

母の遺影は70代のものを使いました。
それは母の指定だったものなのです。

母を誘って、
私の一家とホテルに泊まったときのもので
実はとなりには私が一緒に写っているのです。

母は、その写真を
「いい顔で撮れてるわー」と、
とても喜んでいて
「遺影はこれにして」といっていたのです。
当時は「わかった、わかった笑」と
いっていたのですが、

何度か、覚悟するようなことがあったときに、
その写真を現像し
「こんなものを準備していいかわからないけど」と、
兄弟にも、伝えて
実家のお仏壇にしまっておきました。

母の知らせをうけて実家についたときに、
葬儀屋さんと
打ち合わせがはじまっていたのですが、
ちゃんと兄夫婦が、
それを使っていてくれました。
ありがとう!

その写真は、
生き生きとして嬉しそうで、
でもしっかりした、
そして優しい母のまなざしそのまま、
本当に素敵な笑顔でうつっています。

ちょうど黒っぽい洋服で、
モノクロのネックレスだったので
そのまま遺影につかえました。

そして、ふと考えたら
その写真をとってくれていたのは、
主人だったということに気が付いたのです。

この笑顔のむこうには、
主人が「はい、チーズ」とでもいって
撮ってくれていたのだと。
それを改めておもったときには、
また、涙、涙でした。

主人とは、母と、主人の叔父との
つながりで出会いました。
母は主人との結婚を
本当に喜んでいてくれました。
母も主人が大好きでした。

結婚の時に、母にもらった毛筆の手紙を
しまってあります。
奉書にかかれた
達筆の母らしいものですが
今は、それを読むと
号泣してしまいそうなので、
まだ出せません。

でも書き出しは覚えています……。
母のこの写真の笑顔は、
その手紙の書き出しの言葉通りだと
思いました。


二人の写真

ペアで入るミニミニ額に
父と母の二人の写真をいれました。

主人と出会えたこと、
その後ろ側には、育ててくれた両親がいたのだと
並んだ二人の写真をみて
手を合わせています。

お父さんお母さん、
ありがとう。

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