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埋蔵金の地図

世の中には不可解なことや到底人間には知覚し得ないようなことがたまに起きたりする。

学生時代のある日、使っていたスマホのマップアプリに突如ひとつの住所が表示された。

調べた覚えはない。


だがその住所は、前に住んでいた場所から少し離れた程度の距離に位置していた。


かつて住んでいた頃に寄った場所だろうか?

いやいや、いくら思い返しても全く心当たりがなかった。


そもそも、当時のスマホを完全新規購入して地図アプリを入れたのは引っ越した後なので、
前に住んでいた町に関する情報が入っているはずないのだ。


その場所は、以前のマンションから徒歩でも行けるくらいの近距離だった。

何かの店というわけでもない。

ただの住宅街にただの一軒家があるのみ。
無論、知り合いの家ではない。



好奇心に惹かれ、サークルの後で1人でそこまで行ってみることにした。

突如現れた何の覚えもない住所。
これはもしや、埋蔵金に匹敵する何かがありそうではないか!


そう、これは暗号めいた宝の地図なのだ。

「何か」があるに違いない!!



すっかり日が暮れ、欠けた月の出た夜。

たどり着いた場所は、地図が言う通りのただの一軒家だった。

表札の苗字も、そこまで珍しいものではない。
かといって当時の知り合いにはいなかった。


家の前に来たはいいものの、ここからどうしようかということは一切ノープランだった。

だって………


そもそも何て言えばいいのだろう?

インターホンを押して「すみません、おたくの住所が突然マップアプリに表示されたので、何かあると思って来てみました。
そんなの怪しすぎる。
警戒されるに決まってる。


そもそも、自分の指す「何か」は、自分にも、そして相手方にも分からないものなのだ。

相手だって、「そうですか、アレのことですね」などと言いようもない。
言ったとしたらファンタジー展開で面白いけれど。

現実的な可能性は著しく低い。
そして通報されるリスクの方がはるかに高いのだ。



そんなことをぐるぐる考えながら家の前に立ち尽くしていたが、インターホンなど押さなくてもきっともうこの時点で不審者だった。

結局家主を訪ねるほどの勇気は出ず、家の外観だけ見て帰ってきたが、あそこには結局何があったのだろう?


埋蔵金、でなくとも、少なくとも自分にとって必要な何かだったら面白いな、と
今後判明する可能性もない「何か」に思いを巡らせて今でも不思議に思う。

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