牛乳を買いに行ける喜び（考察とレビュー）
ネタバレを含みます。個人的に面白かったのでぜひプレイしてから読んでください。
とりあえずチャプター1クリアしました。
メンタルヘルスの自己体験を元に書いています。医学的信憑性は皆無です。あてにしないでください。
ざっくりとした流れ
プレイヤーは少女のイマジナリーフレンド（というより乖離した自己に近いかなと思いました。）として少女が店に牛乳を買いに行くのをサポートします。少女はプレイヤーを認識していて、否定的だったりネガティブあるいは少女に対して病的なものを示唆した選択肢を選ぶと即ゲームオーバーになります。イマジナリーフレンドというよりあんた頭おかしいよみたいな自分の異常性を指摘する選択肢が存在するところが自己の解離性を感じます。
境界性パーソナリティ障害？
少女の父親はなんらかの理由で自殺しています。投身自殺です。グラフィックがドットなのと遺体の凄惨な状態だったのかごちゃごちゃした画像に対して少女はプレイヤーにこれは何かを尋ねてきます。かなりショッキングな光景だったと想像するのでやはりここでも境界線パーソナリティ障害（以降BPDと表記します）っぽさをうかがえました。面白かったのが完全に選択肢ではなく一部は自分でテキストを入力する部分があります。支離滅裂な文面を入力すると何度も質問され正解あるいは少女に対して「都合のいい」ワードを入力すると次に進みます。ちゃんと認識されてて怖いですね。
店舗前パート
少女は買い物に行く時点で相当な時間がかかっています。自分が何本歩いたかを数えて正確に自己ルールに従っている、それに反するとパニックを起こす。うーんやっぱBPDっぽい。なぜなら私もそうだから。自己が自分に課したルールは絶対でありそれを守ることに安心感を感じる。自分は自分で決めたことくらい出来るというせめてものまともさを保っていたい。
店舗前で謎のクリーチャー（少女の視点では他人はクリーチャーに見えるのでしょう）に”o”と話しかけられまたもやパニックになります。少女はoというワード（あるいは特定のワードに反応して以降の文章を無意識に認識できない状態）を嫌っているようです。
・一単語であること
・クリーチャーはしきりにoとだけ繰り返している
・BTDの嫌な言葉（というより私です）
から考察するとおそらく”o”というのは「何」だと思います。
うわ〜わかる〜ってなってめちゃくちゃ怖かったです。
牛乳を買う〜ベンチで雑談パート
店員はクリーチャーです。彼女の視点ではそう見えるのでしょう。クリーチャーが異様な話し方をしているのは実際そうなのではなく少女の視点だからです。現実ではなく「異常」な彼女の精神を通して見る世界。また分かる〜ってなりながら他人が怖い中おつかいに出るの偉いと思いました。お会計を済ませていないので牛乳を買えずにパニックになる少女。プレイヤーがお会計を済ませてない旨を伝えるとお金を払ってようやく解放されます。
少女は天気に嫌われていると話します。うわ分かる。超常的な、あるいはもはや運と呼べるものに対してせめて自分を認知していて欲しいという願いを感じられて辛かったです。今雨が降っているのは天が私に外出するなと命じている。外に出ても何もいいことがないと伝えてくれている。なんでもないものに縋ろうとするところで胸がギュッとします。彼女の父親が自殺したこと、それに激しくショックを受けていること、お使いに失敗すると「お母さんに窓から投げられる」ことを伝えられます。荒んだというよりもはや異常な家庭が垣間見えます。
冷たいただいま
帰宅すると日本人形（母親です）に牛乳を買えたか、早く寝ろ。と言われます。これも多分彼女のメンタルが影響する世界観なのでもしかしたら母親はもっと優しい言葉をかけていたのかもしれませんが彼女の捉え方で表示される家族間とは思えないやりとり。はい とだけ返事をしてパート1は終わりです。
総括
はたから見れば異常といってしまえばそうなんですが何らかの病を抱えた彼女の世界を味わえるゲームでした。胸がギュッとなる。BTDの人全てがこうだとは言いませんが自分に語りかける自分、つまり解離した自己や見えないものに縋ろうとする、自分を安心させるための自己ルール等理解できる感覚を客観視する恐怖感を楽しめました。パート2（お使いのあとの話）は未クリアですが充分苦しめました。15分もかかりませんでしがなかなか良作でした。
ただよかったが故に感じるボリューム不足みたいなのは正直ありました。もっと少女と苦しみをシェアしたかった。サウンドトラックが付属するSwitch版をプレイしましたが多分iTunesとかにあるのでそっちを聞くと思います。まあ異常性をウリにしているのでこれ以上作ってたら気が狂っちゃうんですかね？分かりません。精神的にゾワゾワしたい方は楽しめると思います。
完