12/03 08:17-08:23

布団にへばりついて眠っていると、カタツムリというのは自分の殻に対して、私が布団に思う気持ちと同じような愛を持っているのかもしれないな、と思ってしまう。

私にとって布団は殻であり運命共同体、切り離してはいけないものなのだ。しかしそう主張して布団から出ずにいれば、会社はクビになり家賃は払えず路上で野垂れ死ぬ未来しか見えない。

有名なアリとキリギリスの童話は「アリみたいに真面目に働けよ」という教訓ばかりちらつくけど、キリギリスには頼れるアリという希望がいた。私にはアリみたいな希望はいないのだ。

人生それはわからん。ただ働くのだ。

布団から這い出ると、冷気が私の皮膚を食い殺すかのように纏わりついてきた。瞼を動かすのだけでも苦痛だ。体の節々が痛い。

もし私の体のパーツで多数決を取ったら90対10くらいの票差で「出社しない」に傾くだろう。しかし、働かねばならない。なんて人生は理不尽なのだろう。

朝ごはん代わりにクッキーをかじる。口の中が粉まみれになる。もし画家が急に現れて私の絵を描いたとき、画家は私の口の中に粉がまみれていることを前提に描くのだろうか、それとも口の中の粉は無視するのか。

セザンヌはモデルが動くと「リンゴが動くかボケ」と激昂したらしい。つまり人間もリンゴと同じような静物としてセザンヌは捉えていたということで、もしかすると人形師なども人間のことを動く人形だとしか思っていないのかもしれない。

右腕を使って歯を磨く。左腕を重力の成すがままに任せる。

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