所有権に基づく妨害排除請求権を債権者代位してする根抵当権抹消登記申請
1 概要
X社が債務者(連帯保証人として代表者A)となり、その保証をZ社がしております。
その後、X社の返済が滞り、Z社が代位弁済をして、代表者Aに求償をしたが、資力なく、差押をかけようにも、Aの個人資産である不動産には、すでにY社の担保権がついていた、というのが本件の前提です。
(担保権がついていては、換価しても回収が見込めません)
2 各論
【抹消前の登記記録】
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│甲区(所有権に関する権利) │
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│1 │所有権移転 │年月日 │年月日相続 │
│ │ │第□□□号│所有者 A │
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│2 │差押 │年月日 │年月日強制競売開始 │
│ │ │第△△△号│決定 │
│ │ │ │債権者 Z社 │
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│乙区(所有権以外の権利) │
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│1 │根抵当権設定│年月日 │年月日設定 │
│ │ │第○○○号│極度額 金○万円 │
│ │ │ │債権の範囲 ◎ △ │
│ │ │ │債務者 X社 │
│ │ │ │根抵当権者 Y社 │
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[ケース]
主債務者(法人)の返済が滞り、保証会社が代位弁済をして、法人の連帯保証人である法人代表者に求償しようとしても唯一の引き当てである代表者所有物件には、実体がすでにないであろう担保が複数ついていた。 競売にかけたところで、このままでは満足も見込めないため、保証会社としては、担保抹消をしたい。
[検討1 担保権を消したい]
対象の担保権(根)は、20年近く取引行為がなく、保証会社としては、まずは被担保債権については消滅時効を援用して、かつ、登記保持権原もないから、抹消をしたい。
とすれば、所有者が妨害排除請求権を行使して、担保権抹消請求をすればよい。けれども、所有者はそうすると所有物件が競売にかけられるので、行使しないと考えられる。よって、保証会社としては、妨害排除請求権を債権者代位すればよい?
とりあえず、結論から言えば、抹消を認める判決が確定したので、ご依頼が来たという流れです。しかし、判決を読むと、はっきりとしたことは全然書いていないのですが、感触として微妙に巷の妨害排除請求権としての抹消登記手続請求権でもない、、、
(そりゃそうです、所有者が抹消登記請求をしておらず、判決は、債権者が連帯保証人の所有権に基づく妨害排除請求権を債権者代位して担保権抹消することを認めていましたので)
保証会社は、判決を得て登記となりましたが、では、いざ、となったときの本ケースの代位原因はなんでしょう??
悩みに悩んで、書式精義の直接的な被担保債権が特定できれば良いという文言を足がかりに、「年月日代位弁済による保証債務履行請求権」として、無事登記が完了しました。
[検討2 被保全債権は?]
そもそも債権者代位をするためには、被保全債権があることが大前提です。
まずこれについて言えば、直感的に、主債務者に代わって支払ったお金を返してほしい、という権利です。では、これって何?
➀負担割合を超えた部分への連帯保証人への求償債権
➁当初債権者が有していた保証債務履行請求権
これがどうやら突き詰めれば、(たぶん)➁の保証債務履行請求権であったようでした。(判決には「保証債務の履行を請求する」ぐらいで、明確には記載がありませんでした)
というもの、なんかしらの被保全権利があるので債権者代位をするのですが、そこで被代位者が無資力であるからこそ、その者の責任財産に斬り込むという立て付けであり、そうすると、➀の場合、連帯保証人が無資力なら、求償がそもそもできない? だから、➁の立場で、代位弁済したことにより、原債権者の保証債務履行請求権を取得しこれを行使すると整理するしかなかったのかなと想像しています。
登記は定型的な側面もありますが、こうやって判決から物権変動の要素なりを抽象する過程があったりと、結果はシンプルな数文字になりますが、そこまでに色々と悩ますことがあるのも面白いですね。
備忘録として。また加筆します。
【抹消後の登記記録】
┌────┬──────┬─────┬──────────┐
│1 │根抵当権設定│年月日 │年月日設定 │
│ │ │第○○○号│ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
│ │ │ │極度額 金○万円 │
│ │ │ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
│ │ │ │債権の範囲 ◎ △ │
│ │ │ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
│ │ │ │債務者 X社 │
│ │ │ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
│ │ │ │根抵当権者 Y社 │
│ │ │ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
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│2 │根抵当権抹消│年月日 │年月日判決 │
│ │ │第◎◎◎号│代位者 Z社 │
│ │ │ │代位原因 │
│ │ │ │年月日代位弁済による│
│ │ │ │保証債務履行請求権 │
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