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"東都ドラ1セブン"解体新書~東都リーグの投手7人・徹底レビュー~

 


序:今年のドラフトは非常に豊作である


 皆さまお久しぶりです。パルムンク(@suwaharu07)と申します。
 肌寒い季節となりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

 note記事の更新は郡司・山本のトレード以来となりますね。
 あれから宇佐見がサヨナラ打ったり、斎藤が腕の角度を変えたり、山本がビハインドに定着したり、郡司がセカンド守ったりと色々ありました。

 さて、この記事の執筆を始めたのは10月24日。明くる2日後には、いよいよドラフト会議が開催されます。
 そしてここだけの話…筆者の正直な心情を吐露しますと……、 

 今年のドラフトは歴史に残る豊作市場だ

 と、断言したい気持ちでいっぱいに包まれています。
 
 投手を見れば、2年生次から評判名高い東松・前田・坂井といった高校生投手が順調に伸びてくれています。野手を見れば、同じく昨年時から注目度の高かった上田・廣瀬といった大学生スラッガーを中心に堀・鈴木・横山・百崎のように、育成の難しいセンターラインにも好素材の揃う年になっています。
 
 そんな中でも!!!
 群を抜いて"豊作中の豊作"だと声を大にして言えるのが!!!
 誰もが!! 認める!!!! 大学生の投手達なのです!!!!!!!!

「今年大学4年生」の投手は何が凄いのか。分かりやすく3つの特徴を挙げます。

①実績がすごい!!!!
②球速がすごい!!!!
③球種がすごい!!!!

 下級生の頃からエース、国際試合やプロアマ交流戦でも好投連発──
 先発では140キロ後半、リリーフなら150キロを軽く越え──
 多彩な変化球を操る者がいれば、少ない球数でクレバーに打ち取る者も──

 と、戦国時代もかくや、というレベルに多士済々です。 
「大学最後の1年だけ活躍した選手」「先発での実績が少ないけどボールは凄まじい選手」といった層へ範囲を広げればまだまだ数が出てくるわけで、柳裕也・田中正義らを擁していた2016ドラフトを上回る層の厚さに思えます。

 そして、今回の記事で取り上げるのは「東都大学野球で活躍する7人の投手」です。東都大学野球は都内の22大学が合同して主催している野球リーグでありますが、その中でひときわ目立つ6つの大学に所属する計7人の選手、誇張抜きに全員がドラフト1位に相当する評価を受けています。

「ドラ1セブン」と報じるスポーツ紙もあれば、7人の中から実際に「ドラフト1位指名」を公言される選手が複数出てくるなど、プロ入り前から話題性充分の投手ばかりです。

 
 さて、前置きが長くなりましたがここから本題です。
 
 本記事では、東都大学野球連盟に所属する投手の中でも際立って評価の高い7人の選手について特徴をレビューしていきます。


 正直なところ分量は多いです。
 長文を読んでられない! 簡単な評価だけ見たい! という方は、
"目次"から『7人分を短いレビューでまとめてみよう』の項目へジャンプしてください。そこだけでも見てくださると、筆者は嬉しくてたまりません。


 そんなレビュー記事ですが、ドラフト直前の今、「東都7人衆」の特徴を知ることで、彼らの活躍へと期待に胸膨らませていただければ、これに勝る喜びはありません。
 また、ドラフト後、あるいは2年後3年後にこの記事を読んでいただいて「記事の評価と実際のプレーが違うじゃん!」などと一笑の価値を提供できれば同じく筆者にとっての喜びとなります。


 いよいよ選手紹介へと移りますが、最後に、各選手を便宜上2つのタイプに分けたという点を補足いたします。


 1つは、本格派。力こそパワー!!
 分かっていても打てない決め球を前面に押し出して抑えるタイプのピッチャーです。


 もう1つは、技巧派。上手いやつは強い!!
 複数の球種を用いて打者を圧倒するタイプの超実戦向きピッチャーです。 

 なお、技巧派とは称しつつも全員が150キロを叩き出せる剛腕であることを注記しておきます。

 本格派として紹介するのは4名、技巧派と紹介するのは3名の計7名です。
 
 それでは「東都ドラ1セブン」の紹介へ移ります!!


・本格派(常廣羽也斗)


常廣 羽也斗(つねひろ・はやと)  180cm73kg 右投げ 青山学院大学

 ここが良いところ:ストレートとフォークのコンビネーション!

・ストロングポイント(強み)
 大学生投手でもNo1と名高いのが、この常廣投手です。青山学院大学には2人のエースがいますが、その1人として、東都大学リーグ戦から日米親善試合までエース/守護神の役目を果たしました。全国大会と日米親善試合の最後にマウンドへ立ち、日本一・そしてアメリカへの勝利を決定づけた投手でもあります。

 スタイルの良い細身から縦振りのフォームでボールを投げ込み、
最速155キロのストレートと大きく落ちるフォークでどんどん三振を奪う
というピッチャーです。フォークは落差が大きいだけでなくスプリットかと思えるほどにスピードが乗っており、ストレートとフォークの2球種だけで打者を牛耳る場面もしばしば。他にスライダーやカーブも操り、先発からクローザーまで任せられるタイプです。

 現役のピッチャーでタイプが近いのは高橋宏斗(中日ドラゴンズ)ではないでしょうか。球質は高橋と違い、吹き上がるようなホップ系のストレートで、高めで空振りを奪ったり、低めでストライクゾーンを錯覚させることに適していると思われます。フォークやスライダーを効果的に使う本格派ということで、西武ライオンズに在籍していた西口投手を思い浮かべる人もいます。

・ウィークポイント(弱み)
 制球力に波があること
、そして身体がまだ細いことが不安要素に見えます。特に、この秋のリーグ公式戦ではフォークを叩き付けて四球や
バッテリーミスを誘発させられる場面が目立ちました。
フルカウントに持ち込まれることも多かったため、プロの舞台では先発を務めるかリリーフを務めるか、そして、バッターたちが彼のボールを見極められるか、という点が重要になると思われます。

・本格派(武内夏暉)


武内 夏暉(たけうち・なつき)  185cm90kg 左投げ 國學院大学

 ここが良いところ:スケール感に溢れた、伸びるストレート!

・ストロングポイント(強み)
 左腕らしからぬ総合力の高さが魅力と言われる、それが武内投手です。
 最速153キロのストレート、速くて大きく曲がるツーシーム、緩く落差の大きいカーブ……と、実戦級の直球・変化球を操るのが持ち味でしょう!

 コントロールも安定しているのが重要なポイントですが、筆者が注目したいのはピッチングフォームの力感のなさです。打者に対して間が取りやすく、恵まれた体格と相まって、スケールの大きさを感じさせるゆったりとした動作から140キロ後半のストレートを投げ込んでいく様に一目惚れしてしまいました。
 筆者はドラゴンズ贔屓なので、フォームや球種から小笠原慎之介(中日ドラゴンズ)を連想します。しかし上述のツーシームが印象深いためか、同じチームでも大野雄大(中日ドラゴンズ)を思い出す人も多くみられますね。

 数多くの変化球を操るため、本格派と技巧派のどちらに分類するか迷った投手の1人です。彼の魅力は、やはりストレート。球数を重ねても球速が落ちず、2ストライクになるとこの球種をよく使っている印象があります。ヒットは打たれても長打は打たせず、アウトを重ねる投手です。

・ウィークポイント(弱み)
 投手としての完成度が低く見えます。
これは、上の項目で述べた総合力の高さと矛盾しません。
 まず気になるのは、高めへ抜けるボールが少なくないこと。これがストライクゾーンに収まりやすいため、四球が少ない(=コントロールが良い)というイメージに寄与しますが、一方で打者にとっては「打ち頃のボール」となる危険性を秘めています。続いて、その日の調子などによるものでしょうが、エラーや走者への対応ミスが目立つ試合もありますね。
 
 投手経験が浅いということもあり、このウィークポイントはそのまま伸びしろであると言い換えることも可能です。それも武内投手の魅力でしょう。

・本格派(細野晴希)


細野 晴希(ほその・はるき)  180cm85kg 左投げ 東洋大学

 ここが良いところ:ド迫力のストレートとスライダー!

・ストロングポイント(強み) 
 今年のドラフト候補で文句なしに最高のストレートを投げる投手です。
 見た目にも数字にも迫力の表れる、質感を伴ったストレートを投げ続ける本格派であり、力投派でもあり、ボールを投げ込むだけで球場の空気を沸かせるだけの力があります。被打率がどのシーズンも一貫して低く、バッターを力で制圧する姿がよく目立つことでしょう。

 ピッチングスタイルは先発でも常時150キロ前後を計測するストレート鋭いスライダーを内/外に投げ分けて打者を抑えるというものです。カーブ、チェンジアップのように緩く落ちるボールも使えますが、リーグ公式戦ではこの2球種でゴリ押しする(それで通用してしまう)場面が目立ちます。
 現役の投手では松井裕樹(楽天ゴールデンイーグルス)に近いものを感じます。スライダーの鋭さは高校時代の松井を思い出しますね。モイネロ(ソフトバンクホークス)を彷彿とさせることもあり、先発でありながらリリーフでも見たくなるタイプです。

 また、彼を語る上で外せないのは無尽蔵のスタミナでしょう。
 180球を越える球数を放りながら149キロを計測した、駒澤大学との入れ替え戦は伝説になっています。更に、これは少々デリケートな部分ですが、自己評価が低めで研鑽を怠らないパーソナリティも推せるポイントです。


・ウィークポイント(弱み)
 抜け球が非常に多いです。
球数が嵩んで自らスタミナを削られたり、四球や暴投でピンチに追い込まれる場面も少なくありません。被安打が非常に少ないので、塁上が走者で溢れる……ということはありませんが、プロの舞台でどうなるかが不安な面ではあります。

 とはいえ、荒れ球にも打者の目先を逸らせる利点はあるはずです。長打を食らいやすい真ん中付近や高めストライクゾーンへの失投は少なく、抜け球が多いのはしっかりボールを投げ込めている証でもあります。

・本格派(西舘昂汰)


西舘 昂汰(にしだて・こうた)  188cm92kg 右投げ 専修大学

 ここが良いところ:高い角度で投げ下ろすストレート!


・ストロングポイント(強み)
  
 投げるたびに成長を示してくれるような素材型の本格派右腕です。西舘はいいぞ、いいぞ、と密かに囁かれていたのが1年ほど前に爆発したような印象があります。ストレートとスライダーのコンビネーションで打ち取る点では細野に近いかもしれませんが、西舘の場合はシーズンが進むごとに球種を増やしている成長力を感じます。
 
 打者を見下ろすオーバースローから球威のあるストレートを投げ込めるところが彼の魅力です。素材型とは言いましたが、先述のスライダーや、4年生になってから目立ち始めたフォークも用いて、打者と駆け引きしつつ投げられるクレバーな面も見られます。身長が高いだけでなく、手足が長いためにその角度だけで打者を抑えてしまうのもいいところです。

 その他、完投を連発する安定感と身体の強さも西舘のいいところ。ここまでに述べたボールの強さと頭脳の両輪で試合を作ってくれること、また、荒れたイニングの後でも立ち直れることが彼の強みです。もうひと回りずつ、能力を向上できれば才木浩人(阪神タイガース)のようになれるかもしれません。

・ウィークポイント(弱み)
 素材型でありつつも実績を残している西舘ですが、裏を返すと完成形が見えていない投手でもあります。具体的には球種がまだ少なく、コントロールも安定していないことが挙げられるでしょう。大器の片鱗を十二分に見せている一方で、トップレベルに食い込むための武器はどれだろう? と問われると少し答えに迷ってしまう投手でもあります。

・技巧派(西舘勇陽)


西舘 勇陽(にしだて・ゆうひ)  183cm79kg 右投げ 中央大学

 ここが良いところ:内外自在に投げ分ける速球と変化球!

・ストロングポイント(強み)
「お前のような"技巧派"がいるか!」と怒れる人は、彼について詳しいマニアと思われます。西舘はスライダー・カーブ・フォークを自在に制球する投手なのですが、ストレートは常時140半ばを計測し、最速155キロで名高い本格派でもあるのです。無敵か?

 少し前までは「素質は指折りなのになぜか打たれる」といったタイプの投手でしたが、制球力を改善してトップクラスにパフォーマンスの質が高い投手へと成長しました。ストレート、カーブ、そしてスライダーという具合に速い球・遅い球・中間の球を内外のゾーン際へ投げ込んでいくピッチングはプロでも有数の制球力です。
 今年の秋季リーグに関しては山﨑伊織(読売ジャイアンツ)が投げているようにも見えまして、そりゃあ大学生では打てないです。

 ちょっと面白いのが、常にクイックモーションで投げることですね。
 本人のインタビューによると、体重移動を意識しやすいために予備動作の少ないクイックで投げているとのことです。それだけ投球が安定しやすく、また、動作が小さいのに150キロ超のストレートを投げ込めることから、
プロの解説者には西舘をナンバーワンに推す人が数多く見られます。

・ウィークポイント(弱み)
 ひと言でいえば、脆い!!! 今秋に限れば文句の付け所のないパーフェクトな投手ですが、急にボコボコ打たれ始める不安定さを持っています。前述の長所も含めると、よくも悪くも早川隆久(楽天ゴールデンイーグルス)のような側面があるといえるでしょう。
 
 具体的には、強い打球を連続して打たれやすい
ところですね。フォアボールには繋がらず、野手の正面近くへ飛べばアウトになるので意外と目立たない部分ですが、ライナーや外野フライを続けざまに打たれていく場面に遭遇しやすい投手だと思っています。

 これは素人考えですが、フォームの問題でリリースの出所が見やすいのか、癖があって球種がバレるのでしょうか……。フォームのテンポが一定で、球種に関係なくタイミングを合わせやすいと話している人もいました。西舘は大学代表に選ばれなかったのですが、選考中の紅白戦で、初見の打者にも強く弾き返されていたのが悪印象だったのだろうと思っています。

・技巧派(下村海翔)


下村 海翔(しもむら・かいと)  174cm73kg 右投げ 青山学院大学

 ここが良いところ:緩急・硬軟自在の球種と制球力!

・ストロングポイント(強み)
 とにかく強いピッチャーです。
 
ボールも強く、身体も強く、何よりも、心が強い投手です。

 ピッチングスタイルは西舘に似て、直球と数多くの変化球を綺麗に投げ分けて打者を打ち取るタイプです。そして、その球速は最速で155キロを記録します。「お前のような技巧派がいるか」・その2ですね。
 西舘と違って身長はありませんが、球種は多いです。特に目立っている、
140キロ台で変化量も小さくないカットボール110キロ台で大きく縦に割れていくパームはプロでもそうそう見ないほどに際立った変化球でしょう。スライダー、カーブなども一級品で、学生なのが嘘のようです。

 それほど多岐にわたる球種を正確にコントロールする制球力に、筆者は末恐ろしさを覚えます。ただでさえストレートが140半ば~150キロを計測するのに、種々の変化球と合わせてインコースへ投げ込まれたら打てないです。プロのストライクゾーンでも実現されればお手上げですし、スタミナも十分なので怖い先発になるでしょう。

 特筆したいのは「大事な試合の1戦目のマウンド」に彼がよく起用されることです。プロアマ交流戦の初戦や、全国大会の1戦目、リーグ公式戦の初戦、日米親善試合の初先発など……チームを勢いづける大役や、未知の舞台へ踏み込んでいく切り込み隊長を務め、それだけ安定したパフォーマンスを発揮できる信頼性を抱かせることが分かります。技術と体力を兼備しているのは有望な選手ならば当然ですが、下山の持っている心の強さはもっと注目されるべきではないかと個人的に考えている部分です。

・ウィークポイント(弱み)
 下村のウィークポイントはない
です。です。ありません

 無理やり挙げるならば、やはり体格の小ささでしょうか。投げるボールは良くても、プロの舞台で年間を通じて強さを発揮できるのか、あるいはリリースの角度におけるハンデはないのか、という点が懸念されます。
 これらはプロに行ってみないと分からない部分ですが、投げてるボールやマウンドでの振る舞いに関して短所らしいものは感じません。
 
 体格が平凡なことや球種の多さから、山本由伸(オリックス)と同タイプに喩える人をよく見ます。カットボールの良さや大学野球での実績から、
筆者としては柳裕也(中日ドラゴンズ)を連想する投手です

・技巧派(草加勝)


草加 勝(くさか・しょう)  182cm75kg 右投げ 亜細亜大学

 ここが良いところ:低めの重い直球と抜群のゲームメイク!


・ストロングポイント(強み)
 東都リーグでも群を抜いたスタミナの持ち主であり、同時にゲームメイクの力へ非常に優れています。彼が見せるピッチングの要は、低めへ投げ込む140キロ台半ばのストレート。これがほとんど打たれません。身長は180㎝とプロではそこそこ程度なはずですが、角度があるのかリリースが見切りにくいのか、まあ打たれないですね。分かっていても打てないボールを使うという点で、武内と同じくらい、本格派と技巧派のどちらに分類するか迷った投手です。

 よく使う変化球はスライダーとカーブでしょうか。やはり、低めへ丁寧に投げ込むので打者は打ち辛そうです。先述した無尽蔵のスタミナもあり、草加は東都リーグでも1年間で最も多くのイニングを消化した投手となっています。それは体力だけでなく、己のパフォーマンスを安定させる再現性や、実戦的な投球術に抜きん出て秀でている証拠でもあります。

 草加の恐ろしいところは打者の反応を操るようなピッチングができることでしょう。とにかく、スタイルの良い右腕から低めの打ちにくいゾーンへ緩くないボールが来るので打者は身構えているはずです。そこへ、緩急の使い分けや高めの釣り球なども用いるので、まず、満足に打ち返すことができません。
 そんな投球術に優れた草加ですが、日米親善試合ではリリーフの短いイニングを任され、三振を次々に奪う力量の高さも見せています
 次の項目で示す「奪三振」や「被打率」の指標が(プロ基準では)平凡なので過小評価されやすい投手に思えますが、それは全くの誤りです。
プロの舞台へ来れば、梅津晃大(中日ドラゴンズ)のようなパワーピッチャーに開花するような素質も見えています。

・ウィークポイント(弱み)
 プロで通じる武器はどのボールだろう?
 という懸念があります。
これは西舘(昂)にも似たものを感じましたが、草加の場合はよくも悪くも「リーグ戦を勝ち抜くためのピッチング」を見せることが多いために、
ポテンシャルが分かりにくい
です。3日間で15イニング投げ抜くような学生野球のピッチングではなく、1週間で6、7イニングを投げるようなプロの舞台で秀でたものがあるのだろうか…… その点が気がかりですね。

 その証拠というには弱いですが、日米親善試合では先発を任されたものの相手打者のパワーに圧され、複数のホームランを浴びて負け投手になってしまいました。とはいえ、その後はリリーフとして、先述のように奪三振でリベンジを果たす強さも持っています。



・付録(数字でレビューする東都7人衆)

 
 この項目では、7人の投手が1年間のリーグ戦で残した投球成績を参照したいと思います。「1季=10試合そこそこのリーグ戦」であるため、調子の良し悪しや運の吉凶によって成績指標がブレていることもありえます。
 しかし、筆者の主観を以て語るだけでなく、基準の明確な指標からそれぞれのパフォーマンスを評価することでレビューの充実度が高まることは言うまでもありません。

 それでは、彼らがどのようなピッチングをしたのか見てみましょう!


 2023年 春季リーグ戦

今年度の春季リーグ成績。細野・西舘昂は二部リーグ、その他は一部リーグで記録。
一部/二部に関わらず、際立つ指標は上図において赤でマークしています。

 やはり目立つのは、0点台を記録した下村・細野の防御率でしょう。特に、下村は奪三振/与四死球で表される投球のクオリティ=K/BBもずば抜けています。武内もK/BBが下村を凌ぐほどですが、与四死球が少ない反面、被安打率が比較的高いために防御率が悪化したようです。

 奪三振が少ないわりに被安打率が低く、投球回も圧倒的に多い──、
そんな草加は、このシーズンにおいて最も打者を圧倒した投手であると言えるでしょう。K/BBは良くないものの、奪三振率No1で同じく被打率もトップの細野も、草加とは異質ながら同等以上の制圧力を示しています

 両名の得意分野では劣るものの、草加と細野のいいとこどりに近い成績を残したのが西舘(昂)のピッチングでした。
 このシーズンでは被安打が多く目立てなかった西舘(勇)ですが、投球回を多く消化しながら奪三振率に優れて、素質の高さは十分に示されています。

 常廣は防御率と奪三振率に優れるものの、相対比較では目立ちません。しかし、この後に開催された全国大会で2先発して自責点ゼロ・MVPに選ばれる活躍を見せて評価を大いに上げることとなりました。


 2023年 秋季リーグ戦

今年度の秋季リーグ成績。西舘昂は二部リーグ、その他は一部リーグで記録。
一部/二部に関わらず、際立つ指標は上図において赤でマークしています。

 武内・西舘(勇)の両名が飛躍を見せるシーズンになりました。

 武内が防御率・勝利数の二冠に輝いています。投球回も多く防御率は0点台、与四死球率は上がってしまいましたが、三振も従来通りに奪いました。

 西舘(勇)は、奪三振王でありながら与四死球も非常に少ない圧巻の内容です。課題の被打率も良化しており、最も充実したピッチングを見せたのは彼であろうと文句なしで言えるでしょう。

 草加・西舘(昂)の投球回の多さも相変わらずですね。
 四球が少なく、打たせて取っていた草加と、奪三振を多く取った西舘(昂)の対比が美しいです。

 筆者が注目したいのは細野の被打率の低さ。1割を下回ろうというこの指標は先発投手としては類を見ないレベルのパフォーマンスです。

 その細野と、そして常廣。この2名は四球の多さに苦しむシーズンでもありました。奪三振率が依然として高水準ながら、不安定なピッチングだったと言うこともできそうです。

 下村は高水準な数字を残しながらも、周囲が凄すぎるので目立たないという切ない結果に……。ただ、これについては「大差でリードしているのに130球以上も投げさせられて最後に打たれた」なんて試合がありましたので、指標を鵜呑みにするのは危険かな、とも思います。

 (該当の試合)



・7人分を短いレビューでまとめてみよう


 なんとここまで10,000字弱の記事となりました。
 最後にまとめとして、「東都ドラ1セブン」7人の長所・短所・そして選手のタイプをひとことずつで表していきたいと思います。上の詳細レビューを見るのが億劫だ……なんて方にもオススメです。


 以下、7投手の短評レビューになります⇩

①常廣 羽也斗(つねひろ・はやと)  180cm73kg 右投げ 青山学院大学
・ストレートとフォークのコンビネーションが強み
・制球の不安定さが課題
・選手のタイプ──高橋 宏斗(中日)・西口 文也(元西武)

②武内 夏暉(たけうち・なつき)  185cm90kg 左投げ 國學院大学
・スケールの大きさと総合力が強み
・投手として未完成な部分も目立つ
・選手のタイプ──小笠原 慎之介(中日)・大野 雄大(中日)

③細野 晴希(ほその・はるき)  180cm85kg 左投げ 東洋大学
・ド級のストレートと鋭いスライダーが絶品!体力も抜群!
・四球、抜け球が多い
・選手のタイプ──松井 裕樹(楽天)・モイネロ(ソフトバンク)

④西舘 昂汰(にしだて・こうた)  188cm92kg 右投げ 専修大学
・高角度のストレートと成長力が強み
・まだ球種が少なく、制球に不安もあり
・選手のタイプ──才木 浩人(阪神)

⑤西舘 勇陽(にしだて・ゆうひ)  183cm79kg 右投げ 中央大学
・内角、外角へ速球・変化球ともに投げ分けることができる
・痛烈な連打を浴びる脆弱性が垣間見える
・選手のタイプ──山﨑 伊織(読売)・早川 隆久(楽天)

⑥下村 海翔(しもむら・かいと)  174cm73kg 右投げ 青山学院大学
・緩急も制球も自在に操るピッチング
・プロで活躍できるエンジンを備えているかが不安
・選手のタイプ──山本 由伸(オリックス)・柳 裕也(中日)

⑦草加 勝(くさか・しょう)  182cm75kg 右投げ 亜細亜大学
・低めへの威力充分ストレート+投球術が武器
・1試合に集中した際のポテンシャルはどこまで発揮されるのか?
・選手のタイプ──梅津 晃大(中日)



 終わりに

 
 いかがだったでしょうか? 今回紹介したのは7人、全員が世代も投げている舞台も共通しているどころか、(当然ながら)ポジションも同じ選手です。しかしながら、全員がドラフトで1位指名されても不思議ではない、
能力・素質・実績を備えています。

 ドラフト1位指名が事実上公表されている選手は3名いますが、3名ともがこの7人から選ばれているのがその証拠です。残る4人もドラフト1位、遅くとも2位には呼ばれることでしょう。

 筆者がNo1に推したいのは常廣と細野の2名でしょうか。
 ピッチングスタイルに大きな可能性を感じるのは下村と草加ですね。
 贔屓であるドラゴンズに来てほしいのは、エース級の左腕に似た風格のある武内、そしてバンテリンドームのマウンドに合いそうな草加になります。

 実のところ、中日は野手の度会選手を1位入札するんじゃないかと疑ってます。なんなら、そちらの方が面白いので東都より度会へ期待していたり…。


 と、浮気しかけたところで本文は以上となります。
 この記事をお読みいただいた皆さまにおきましては、記事で取り上げた7投手の今後へ期待を膨らませていただければ幸いです。


 

 ・・・ん?



  

  ・・・・あれ?

 




 

 お読みくださり、まことにありがとうございました!
 (この文章は10/25 18:13に執筆していたものになります)


 選手成績・引用元


 選手プロフィール・引用元

 選手画像・引用元

本記事におけるデータ・画像等は上記サイト様より引用させていただきました。

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