花組公演「冬霞の巴里」感想ーヴァランタン編-

ヴァランタン


ヴァランタンは衝撃的すぎました。白い薔薇の精があんな悪党に…

ヴァランタンの本心

ヴァランタンはよく「本心に従うと命取りになる」と言っている。

では、彼の本心はどこにあるのか?

私は彼の言葉の裏が本心であると考える。

彼のセリフはかっこよく、一匹オオカミみたいに感じるがもしかすると全て反対なのではないのか。彼は本心に従わないように逆の台詞にとりつかれているのではないか。

「やられたらやり返す」

「お前らがやらなかったら俺がやる」

そんなことを言いながら彼は全然行動に移さない。もしかすると彼は緻密な戦略のもと実行に移そうとしていたのかもだけど…彼も怖かったのではないのか。

『やられた。でもやりたくない。こんな気持ちもう嫌だ』

『俺はやりたくない、お前がやればいいのに』

なんて自分では気づかぬうちに思っていたり?したのかもしれない。

復讐したいが実行に移せていない、そして自分の復讐のためにシルヴァンを殺してしまったという思いがあるのではないか。するとそんな自分自身が嫌になる。

彼のセリフは彼がそうなりたいそうしたいその思いで、その反面この飲み込まれた世界から救ってほしいという本心があったのではないかと感じる。

「お前はいろいろ持ちすぎなんだよ。」

色々持っているのは彼の方なのではないのか?シルヴァン、下宿の皆々様の事、自分の過去。過去も未来も現在も全部持ちすぎてとらわれて動けなくなっているのではないのかな。

「親の仇討ちってものはそんなにたいそうなものか?」

彼はオクターヴと同じように過去の事にとらわれることで今を生きている。似た者同士。オクターヴがそのことに最後に気が付いたが彼はとうに知っていたのではないのか。それでも、彼は自分に嘘をつくことで生きることができていた。気づいているけど気が付かないように、助けてほしいけど強気になって、そうしないと今を生きていけないから。心の扉を深く閉めていたのではないのか。

シルヴァンがいなくなった時、気が付いた。もう何もないと。自分が強気になっていること、持ちすぎていたもの、すべてないことに。

下宿の人たちは始まらない終わらないと言いながら今を生きている。必死に。地に足つけて。

自分はどうだ?過去にとらわれ、今を見失い、シルヴァンがいない。振り返ったその先には誰もいない。

「俺には何ものこっていない。」

そこにオクターヴが虚ろな瞳で歩いてくる。

あぁ…彼は何を感じ、何を思ったのか。

「本心に従ってみるよ。」

『やられた。殺す。嫌だ。苦しい。憎い。何もない。殺す。誰もいない。進まないと、生きていくために。憎い。どうしよう。殺す。』

もう苦しい助けてほしい。そんな気持ちがあったのかもしれない。

でもそれだけではない。殺したい。憎い。のうのうと生きているお前たちが。その気持ちもしっかりとあったはずだ。

彼の言葉も、言葉の裏返しも、彼の全てが本心だったのかもしれない。両方の気持ちが混ぜ込まれた彼の本心はオクターヴに委ねられたのかもしれない。



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