花組公演「冬霞の巴里」感想ー地上と冥界-
「きっと冥界も地上と変わらない」
「地上に上がれない。一人では寂しいから人間を引き込むんだ」
地上と冥界を意識し、人間とセイレーンに分けて、みる。
一幕はじめ
オクターヴは人間、姉さんも人間、ヴァランタンはセイレーン。
オクターヴ登場からのアンブル登場。オクターヴは姉さんに手を伸ばしている。憎しみの傷を抱いた手を伸ばし姉さんを求めている。そこにヴァランタン登場。ヴァランタンはその手を取り上げる。オクターヴを姉さんから離す。冥界に誘う。
プロローグおわり
オクターヴとアンブルとヴァランタンが三人残る。オクターヴはヴァランタンの方に行こうとするのだが姉さんが止めている。セイレーンのヴァランタンは冥界へオクターヴを連れていこうとする。さみしいから一人では生きていけないから。でも、オクターヴには姉さんがいる。姉さんがオクターヴを人間に止めている。
ギョームとの剣のお手合わせ場面
からの
「勝手にするよ」
きっとこの時姉さんがオクターヴを手放してしまった。姉さんは止めていたのに、彼を守っていたのに。姉さんから離れたオクターヴはすぐにセイレーンに捕まる。冥界へと導かれる。
一幕最後
エルミーヌと反対にヴァランタンがいる。ヴァランタンの方へ冥界へオクターヴは行くのだよ。彼は冥界を選んだ。でも、真ん中には姉さんがいる。人間とセイレーンの間。真ん中。この立ち位置は凄く好きだ。
二幕はじめ
彼は冥界へ落ちたセイレーン。姉さんは人間。冥界と地上。
彼が冥界に落ちた時から復讐の女神がまとわりつく。彼には見える。感じる。こういう演出とても好きだ。
「姉さんはそこにいてくれる?」
セイレーンとしての彼、地上に上がれない。でも、姉さんはそばにいてくれる。冥界に近い地上で離れずいてくれる。姉さんを冥界へ引きずりこむことは簡単。でも、彼はそうしなかった。冥界は終わりが見えない、彷徨う。姉さんを巻き込まないようにしないと。
だからこその
「俺が始めた。おれが終わらす。」
姉さんとのつながりは血のみとなってしまった。その時に、血がつながっていないと知ると、
「とてつもなく一人みたいだ」
に繋がるのか。姉さんがいない。誰もいない。何も見えないその瞳の先で、ヴァランタンがしゃがみ込んでいる。彼はヴァランタンに何を感じ、何を思ったのだろうか。一人になったオクターヴとヴァランタン。似た者同士。
光なきワルツ
「また血を求めるのか」
「甘い歌を歌えたら」
冥界に落ちた彼はまた人間を引きずり込む。血を求める。そして、もう地上には上がれない。甘い歌などもう二度と歌えない。
オクターヴが決意したように、姉さんは冥界に落ちなかった、セイレーンにはならなかった。
人間の姉さんと、セイレーンのオクターヴ。ただ復讐心に燃えた姉さんは冥界への扉に少し踏み入れた共犯者。
ラスト姉さんはあの人と結婚しなかった。完全な地上で完全な人間として生きることを選ばず、共犯者として冥界に踏み入れた状態でオクターヴのそばにいてくれた。
地上に上がれないセイレーンのオクターヴ、完全な人間になることをすて共犯者として生きることを選んだ姉さん。
地上と冥界の間を二人でさまよう。
だからこその二人だけの罪。
やっぱり、この思考回路がしっくりくるよね。
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