宝塚花組公演「元禄バロックロック」感想クラノスケ編


クラノスケ復讐について

クラノスケの復讐のシーンが一番好きである。

まず、目。復讐を語るときに生まれる、あの生き生きとした目が好きである。まっすぐ前を向き、きらきらと揺らぐことない瞳。さすが復讐のプロ。

次に、声。「ヤスベエ」と呼ぶあの声は低く素晴らしいのだが、驚いたのはその前の復讐を語る声。少し抑揚のついた声。まさに声の魔術。どこであんな技を身に付けたのか。もう一度聴いてみたい。

この声の違いに感じたのは宝塚大劇場千秋楽近くであった。VISAの配信でひとこさんは話し方、声のトーン、使い分けてお稽古をしてきたとおっしゃっていた。もしかするとこの時ひとこさんが演じてきたクラノスケのお芝居が少し見えたのではないかと感じる。少しだけだが気づけた。そして今もこの胸の中に残っていることがとても嬉しい。ひとこさんはこんなにも素敵なお芝居をする人なのだ。

もう一つ忘れられない場面がある。クロノスケがクラノスケの討ち入りを止めに行く場面である。あの時のクラノスケの少しだけ上がる口角が好きである。私はお芝居において表情の細やかな変化がとても好きなのだ。眉間のしわ、目線の動かし方、目を閉じる、目を開ける、瞼の動き及び速度、息遣い、唇の動き、口角。気づかないようなほんとに些細な微妙な変化がたまらなく好きである。だからこそこの場面のあの口角の上りが好きである。この心にいまでも忘れられずに残っている。


クラノスケと時計について

時を戻す時計。

クラノスケとこの話を落ち着いて考えてみると……

クラノスケ、時計の事何も知らない!!

時を戻す時計については知っているが完成していること何も知らないのだよ!!ラスト結末、一件落着シーン。時計は?時計の事は????クロノスケも、コウズケノスケもみんな知ってるのに……

クラノスケかわいそうです。。。

このシーンお芝居においては彼は復讐に燃え、惑い、時計無視のお芝居と、時計?なにそれ?のお芝居。両方感じ取れた。

お芝居は時とともに変わっていく、とても面白いものである。そしてそれがひとこさんのお芝居で感じられたのがとても嬉しい。


クラノスケと忠義について

忠義…主君や国家に対し、仕えること

主君?国家?仕える?

歴史嫌いの私には?だらけである。そして頭を悩ませた結果一つの結論に至った。

クラノスケの忠義は今の私たちの正義である

クラノスケの忠義。彼は忠義とは何かと悩みながら、コウズケノスケを殺そうとしているように感じた。自分の忠義が正しいのかこの復讐をするべきなのか、今の腑抜けのままでいいのではないのか、と悩んでいる。そして、根本には譲れぬ後悔がある。忠義とは何か、考え悩み、そして自分の心の中で決めた忠義の道を信じ守り貫き生きている。そんな風に感じることができた。

一方、正義について考える。正義とは何か。正義=正しい、である世の中なのか?正義を振りかざして、人を傷つけることだってある。行っていること言っていること、それらは正義であるが、でもでもなにか違う、そうじゃない、と感じることもある。そして正義の基準も人それぞれであると感じる。それでも人は自分の心の中で決めた正義の道を信じ守り貫き生きている。

クラノスケが感じる忠義のあり方、今を生きる私たちの中にある正義のあり方、昔を生きたクラノスケも、今を生きている私たちもおんなじであると感じた。


クラノスケとリク

クラノスケとリクの中で一番感動したシーンがある。それは、舞台上手にて行われるクラノスケにリクが刀を渡す場面である。私はこの場面で二人が共に生きてきた世界が視えた。リクがどれほどクラノスケに尽くしてきたか、クラノスケがリクだけに見せる笑顔。二人だけの世界。あの一瞬で私の頭の中に彼らが生きてきた全ての風景が走馬灯のように駆け巡った。彼らの事は知らない。そうであるかそうでないかなど分からないことだし、そんなの自分の妄想の世界なのはわかりきっていることである。でも、あの日、あの時、あのひとこさんのお芝居でそこまで考えることができた、視えた。それ自体がとても嬉しくて、素晴らしくて、素敵だった。


クラノスケの史実に基づくと

VISA配信でひとこさんが仰っていたリクとの関係性。戦友、同士。

何の知識もない私はリクにとったクラノスケはたった一人の大切な愛する人。だからこそ愛してあげてほしい、大切にしてほしいと感じていた。そんな風に思い過ごしていた。

しかし、私は謎手本忠臣蔵という本に出逢った。

この本にはひとこさんのクラノスケすべてが詰まっており、ひとこさんのリクの関係性も納得してしまった。まだ読み解けていない、理解できていない部分が多いと感じる。それにもっといろんな文献を読みクラノスケについて理解を深めて行きたいと感じた。ひとこさんのお芝居は史実を読むと、なるほどだからこそそういうお芝居をするのかと理解ができるところがたくさんある。それを追うのがとても面白い。

史実に基づいた考察をいつかnoteにまとめてみたいと思う。


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