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「自分の好き」を認める。時間とのコラボが気づかせてくれたこと。

人間関係にも、物を持つことにも、時間とのコラボが必要だと思う。

小説家としての生き方100箇条 吉本ばなな 


「時間とのコラボ」という言葉に納得感をもらった。

この言葉でようやく、腑に落ちた。

私が赤い服を選んで、着るまでには、時間が必要だったんだって。

赤は人を選ぶ色

記憶の中で、初めて手に取った赤のモノは、ランドセルだった。

私が子どもの頃は、今みたいに色を選べたわけではなく、女子は赤一択。でもそこに不満はなかった。

小学生の女の子だけの特権。赤のランドセルを背負える嬉しさが、いつの間にか、赤への特別な感情に変わっていった。

・赤は期間限定で、選ばれた人しか身につけられない色。
・幼く、かわいい子が選ぶ色。

そんなイメージを持つようになった。

だから、年齢を重ねるごとに赤を選ぶことはほぼなくなっていた。

たまに赤い服を着ている人を見かけると、

「あの人は、自分の魅力を分かっているんだろうな。自分に自信があるんだろうな。じゃないと、赤なんて着ないよね。だって、色負けしちゃうもん。」

と、羨ましい気持ちになった。

私にとっての赤は、自信の象徴だった。


自信をつけたいと潜在的に思ったのか、あるとき

「赤い服は着れないけれど、小物として持ち歩くくらいならいいよね?」

と、おそるおそる赤いレザーのペンケースを買った。

薄いのに10本はペンを入れられる真っ赤なレザーのペンケースは、便利な相棒となった。雑多に物を投げ入れたカバンの中でもすぐに見つけられる存在感。5年以上使っているけれど、ちっとも飽きがこない。

いい色だなぁ。

そんな風に眺める日が日常になっていき、少しずつ、赤への免疫というか耐性を取り戻していったように思う。

そして気がつけば、

・キーケース
・スマホカバー
・ターバン
・イヤリング
・口紅

と、どんどん小物の赤や、身につける赤が増えてきた。

好きだと認めていい


「ちひろちゃん、赤似合うねぇ」
「千尋さん、赤好きなんですね」

と言われることが増えてきた。

あれ、私、赤が好きなんだ。

赤を好きになってもいいんだ。

周りの人からの言葉で、自分を知った。

よく考えたら、赤を着てはいけないなんて、誰も言ってない。言われたことはない。

私が勝手に1人で決めてただけ。

できないとか、似合わないって制限をかけているのは、自分自身だとよく聞くけれど、ほんとに自分のことは自分が1番分かってない。

顔が丸くて童顔だから、赤を着ると子どもっぽくなるって、思い込んでいたけれど、そもそもそれで困ることがあるの?

子どもっぽいって、悪いことなの?

子どもっぽいって、だれが決めるの?

もうすぐ39になるなら、年齢より若く見えるなんて、最高の褒め言葉でしかないのでは?

少しずつ、少しずつ、知らない間にくっついていた固定概念や自分への思い込みを剥がしていった。

それでもまだ赤い服を試着室に持って行く勇気はなかった。せいぜい鏡の前で合わせるくらいが精一杯だった。

そんなときに、メキシコの服を扱うみほさんのインスタに目が釘付けになった。

大輪の花を咲かせよう


しばらくスマホの画面を凝視していた。

メキシコのベラクルス州で作られたハンドプリントのシャツ。

真ん中にこれでもかとプリントされている真っ赤な大輪の花は、メキシコの死者の日ではおなじみのアフリカンマリーゴールドだ。

横広に開いた襟元には、隙間のない手刺繍が施されている。



シャツの素材が麻なのも魅力だった。服選びの優先順位は、1.デザイン、2.素材、3.値段。麻は肌にまとわりつかない感じが好きな天然素材だ。

私が好きなものが、凝縮されている1枚。あぁ、これは絶対着たいやつだ。

そう思った。

でもどこかで、まだGOサインを出せない自分もいた。


・これを着て行く場所なんてある?
・ちょっと高いんじゃない?
・こんな花柄を着こなせる?
・何に合わせるか決めてるの?


いろんな声が自分の中から聞こえてきた。勝手に開催される脳内会議。

たいていこんな風に、臆病な自分が現状維持の道に向かわせようとする。

でもきっと、何かのタイミングで私の手元に来るはず。それまで少し待ってみよう。

そんなフワッとした確信とともに時間は過ぎていった。


そしてあるとき、みほさんがオンラインショップの閉店セールをすると知った。

あの赤いアフリカンマリーゴールドのシャツが販売されるなら、絶対買おうと心に決めて、オンラインショップのカートオープンの時間を待った。

その日はちょうど近所の花火大会。
カートが開くのは夜の9時。

空に打ち上げられる花火を愛でつつ、オンラインショップをチェック。上を見たり、下を見たりと忙しい。

あ、販売される!



「ママー、みてー!きれいだよー!」

「うん、きれいだねぇ。やっぱりかわいいねぇ。」

花火のコメントと服のコメントが混ざり合う。でもそんなのは誰も気にしない。私は花火を見上げながら、自分の気持ちを確認するのに夢中だった。

やっぱりこの服を着たい。
この服が似合う私になりたい。

夜の空に咲く、花火を見ながら自分に約束をした。

花火大会終了後、家のドアを開け、カバンを置くと、財布からクレジットカードを出し、すぐに決済した。

これを逃したら、もう絶対手に入らないってわかってたから。絶対着るんだって決めたから。

「さ、お風呂に入ろうか。」

一仕事を終えたような清々しい気持ちでいっぱいだった。

時間とのコラボで馴染ませる


届いたばかりの麻のシャツは、なんとなくひんやりしていた。シャリっとして、なんだかよそよそしくて、まだ私には馴染んでいない。でも時間がきっと馴染ませてくれるって分かってる。

そして、このタイミングで買えたからこそ、この1枚への想いがより深くなっている。


オンラインショップを閉め、新たな道へ進むことを決めた、メキシコのオアハカ州に住むみほさん。

そのみほさんのサポーターとして、発送業務をしていたゆうきさん。

時折メッセージのやりとりをする仲になったゆうきさんは、貴重なブータン土産まで同封してくれた。

これからも縁を繋いでいきたい人たちの手を経て、今、手元にある、心から欲しかったモノ。

これは奇跡って言っていいよねって、誰かに伝えたくて、このnoteを書いている。


勝手な思い込みを外してくれることになったこのシャツをどんな風に身につけよう。

中に合わせるキャミソールも、下に合わせるボトムスも、何にしようかと頭の中で組み合わせているだけで、自然と口元がほころぶ。


そうやって、本能に任せた選び方をしたっていいじゃない。だって着るのは他でもない私なんだもん。

そんな声が自分の中から聞こえるようになった。

そう、私は自分を満たす服が着たいだけなんだ。なんでもかんでもほしいわけじゃない。そんな豊かさ、ほしくない。

一時的に自分を満たす快楽ではなく、できるだけ長く満たしてくれるような満足感がほしい。

人間関係と時間のコラボを感じられるようなものがほしいんだ。


豊かさの定義は人それぞれ。

私は私の豊かさの中で生きていく。


まだまだ暑い日本の夏。

今年も来年もずーっとずーっと、お世話になります。

心に咲いた満足感という赤い花をこれから大輪に育てていくんだ。

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