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聴いたよ新譜2021 vol.4

雪もなくなってだいぶ温かくなってきました。あたたかくなると春ですし、春が来ると聴きたくなる音楽というのもまたありますね…ちなみに僕の中で春に聴きたいアルバムNo.1は15年前からFountains of WayneWelcome Interstate Managersですね。僕の青春そのものなアルバムなんです…毎春聴いては淡い気持ちになっております。

そんなわけで今週もたくさんアルバムが発売されましたね。Nick Caveがサプライズリリースをしたりと驚きもありつつ、色んな方向から良い新譜が出てきたのもあってしっかり咀嚼仕切れたのか不安だったりもするのですが…なによりSam Gendelの52曲アルバムを論じられるのか不安ですが…とにかく春のぼんやりした頭でたくさん聴きましたので、来週のリリースが来る前に感想を言っていきたいと思います。


01. Sam Gendel - Fresh Bread

ジャズをいかに料理する?という挑戦はいろんなアーティストが行っていて僕もそういった気概を感じるアーティストをつい聴いてしまうのだが、LAのサックス奏者Sam Gendelの持つ世界観や感性は完全にその何段も先にあるものだと思わせてくれた昨年リリースの作品がまずあって…。Vampire Weekendとのとんでもないセッションがあって…。そしてついに今年も新譜が出るぞ…!と楽しみにして開いてみると
52曲、3時間42分
「こんなに聴けねえよ」

そう思った。

しかしクセになってしまうんですよね。ミニマルなビート、ピッチを揺らした独特の音遊び、ローファイ臭漂う産物感。日常になぜだか馴染んで後ろで鳴っていくんですよね。さすがに3時間まるまるとはいかないまでもしばらく聴き続けてしまう魅力があります。
近年30〜40分に凝縮したアルバムが主流な中で作品性としてはどうしてもアイデアの詰め合わせ感が否めないけれど、Sam Gendelが今のシーンの重要人物であることを再び定義づけるには充分なほどワールド全開のアルバムだと思います。
めちゃくちゃ好きです。

02. Julien Baker - Little Oblivions

Julien BakerというSSWの存在を僕は知らなかったのですが、今回このアルバムを聴いて正直驚きました。一曲目のHardlineの時点で、この内省的で自虐的な歌詞と、暴力的とすら感じる美しい音の洪水のアンビエンスに完全にやられました。MVもめちゃくちゃいいんですよ…素晴らしいMVだと思います。日本のYouTube至上社会にいるとこのMVの再生回数の少なさに本当に理解ができない。何でこんなに少ないんだ?わけわからん。

弱さが美しさとなる社会はどうかと思いますが、そこに刹那の爆発みたいなものが散りばめられているのがとにかく魅力的でどんどん惹き込まれていってしまうアルバム。希望で救いのような美しいサウンドが内面の弱さ、暗さにマッチしてとんでもない出力を持ってこっちに入ってくるのがすごい。とても素晴らしいアルバムだと思います。

03. Smerz - Believer

ノルウェーのエレクトロデュオ、smerzのデビューアルバム。もちろん初めて聴いたのだけれど非常に好きでした。衝動的に持てる要素をぶち込んでいるようにも見えるし、遊び心で実験的に音を配合していっているようにも見えて唯一無二な狂いっぷりが気持ちよかったです。

表題曲BelieverなんかはArcaを聴いた時のようなあの「何聴かされてんの…?」から始まる中毒になるある種のカオティックを思わせるし、かといって聴き進めていくと存外聴きやすい楽曲もバランスよく入っているので、今やりたいことと世界とのチューニングというか、それをまさに作品内でしっかりアウトプットしているアルバムだと思います。今年結構聴きそう…!

04. Mouse on Mars - AAI

ドイツのエレクトロユニットMouse on Marsの新譜。大きく分類して「エレクトロニカ」として大きいアーティストの新作なのでかなり楽しみにしていましたが、かなり度肝を抜かれました…AI技術を大胆に導入し、会話や演説を音楽に落とし込んだ(という解釈で合っているのか?)作品で、ミニマルなビートにさまざまな声が楽器のように散りばめられている。作品序盤の実験的新しさはもはや理解が追いつかない感じで、それこそ僕は音楽を聴いているのか?それすらよくわからなくなってくる。

エレクトロニカというある種形骸化したジャンルにとてつもない情報量の新しいものを持ち込んでくるその姿勢に心底感動しながらも、このAIを使用した音楽がなんなのかマジでわからなくなったりもする。あくなき探究心にとにかく置いてきぼりを食らった感はあるが、とにかくすごいことは間違いない。

05. Blanck Mass - In Ferneaux

2曲で40分間のストロングスペクタクル…これがBlanck Massの新譜だと思う。僕は正直Blanck Massの楽曲は好きなものと苦手なものではっきり分かれるところがある。Blanck Massの楽曲によくある「えげつない音」を不快に感じてしまう曲もあるということがある。

今作に関して言うと「うお…えげつな…」と思った後に場面が切り替わる映画というかプログレッシヴな作りで、むしろどうなっていくのか気になる部分が大きくて、その落差というか物語に入り込むことができた。Phase2とかはゆらゆら帝国の貫通などにも通ずる「えげつなさ」の連続なのだが、なぜかそれを抜けた先にストーリーを感じるのでそれを待ってしまうところはある。とはいえこれを誰かと一緒に聴くことはないだろうな。カーステがぶっ壊れたと思われちゃうな。激しい苦痛すら伴う雑音の後、デザートみたいに美しい音流すの反則なんだよ。飴と鞭でイカれる感じ

06. Brijean - Feelings

Toro Ý Moiのライヴバンドにパーカッションでも参加しているBrijean Murphyによるプロジェクト。グーグルで検索すると同名のマスクばかり出てくるというストレスもありつつ、まったくの初見だったのだけれども一聴してハイにさせられました…暖かくなってきたこの季節に聴くには最高。バレアリックハウスを軸にブラックミュージックのエッセンスもあり多国籍でトライバルな味も感じさせる。躍らせる音楽でありながら、新しくも懐かしさ漂うインディポップの味を常に感じるのが最高…とにかく気持ちいい…

1曲目からドライブしながら聴きたい気分になるまさにDay Dreamingなサウンドでスタートし、6曲目のOceanも大好きですね…うねるベースとトレモロサウンド、バレアリックな空気が気持ちいい

昼からお酒飲みたくなっちゃうんですよね…パーティは苦手なので、一人で座席でお酒飲みながらこれ聴いて揺れたいと思います。この春〜夏ヘビーローテしそう。

07. unagi (須長和広) - Perpetual

quasimodeは高校生時代にアルバムを購入してよく聴いていました。いろんな方と活動を共にしている日本のシーンでも欠かせない存在でもある須長さんですが、ソロアルバムを出していることは正直今回のアルバムで知りました…この機会に一応聴いてみた前作と比べてもアンビエントジャズとして最高に気持ちいい仕上がりのあるアルバムだと思います。しっかりとベースラインにもスポットが当たっており、アルバムの浮遊感を縫うように這っていくベースの気持ちよさが味わえる。

ここ近年はジャズを経由した音楽による名作が各所で生まれているが、個人的にはこの作品の持つジャズの枠をあえてはみ出してPOPから離れた、日常の色んなシーンにフィットする感覚みたいなものがたまらない。おちついて浸れるアルバムだと思います。

08. Nick Cave & Warren Ellis - CARNAGE

突如リリースされ、今週の話題を搔っ攫っていったアルバム。深い深いサウンドにさび付くことのない低くかすれた声が重なり、感染症に混沌とする世界に「まだやれる感」すら思わせてくれる。正直彼のキャリアにはなんとなく触れて何作も作品は拝聴してきたが、ここ最近の動きに関しては何も知らなかったので正直この作品には驚きが隠せない状態だったりする。

最初に聴き始めた時はこちらの準備が整っていなかったからかあまりノリ気になれなかったのだが、聴けば聴くほど素晴らしい作品だと思う。The Bad Seedsの時代から2010年代まで歴史に残る良作を生み出し続けているのも化け物だが、しっかり現代的アプローチの中でNICK CAVE節を効かせながら最後まで聴かせてしまうのが本当にすごいです。圧巻の一枚。


今週もやばかった

今週もたくさん良作と出会えました。なんだかんだ毎週金曜日が楽しみで、また聴けば聴くほどインスピレーションも湧いてくるので本当にやりはじめてよかったなと思う次第です。今回はMouse on MarsやSam Gendelなど1時間越えの作品もいくつかあったのですが、近年の風潮として30~40分のコンパクトな作品が主流なのもあってか、なぜだが集中力が続きませんね…現代病なのかな。昔はサンディニスタとか4枚ぶっ通しで聴けてましたけどね…

アルバムもデラックス、ボーナストラックマシマシ時代に音楽ハマっていたもんでそんな自分が今では40分以上のアルバムを躊躇しているというのが時代を感じてしまいますね。

今回挙げられていない作品も素晴らしかったです、Altin Gunなんてめちゃくちゃ好きで聴いてますし、King Gizzardも気持ちの良いアルバムでした。Flyying Coloursもストレートなシューゲイズポップでもう痛快でしたしKratos Himselfとかもよかったです。

あとはなんといってもステレオラブのレア曲シングル集聴いて、もう一度ステレオラブのSound-DustやMargerine Eclipseを聴いて改めて最高だな…と思いました。ステレオラブだけでnoteひとつ書きたいくらいです。


そんなこんなで来週はアラブストラップの新作がありますね…とても影響を受けたアーティストなので今新作を聴けるのはうれしいな…
読んでくださってありがとうございます。来週も是非よろしくお願いします。



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