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聴いたよ新譜2022 vol.2

お世話になっております。

僕の住む土地では2月は結構雪が降りまして…色んな面で慌ただしい1ヶ月となりました。世界は混沌を極めておりますが、まずは自分の身の周りのことで精一杯っていうところです。

ライフスタイルでいうと普段から音楽ばかり聴いているというわけでもないのですが、今月もたくさん素敵な新譜と出会うことができたのでせっかくですし感想を書いていきたいと思います。


1. Big Thief - Dragon New Warm Mountain I Believe in You

ここ数年でエイドリアン・レンカーやバック・ミークのソロ作もあり、昨年から先行曲を配信してくれていてその時点からかなり高い期待値があったBig Thirfのフルアルバムですが、まさかの1時間超えの大作が来るとは思ってもいませんでした

アメリカンインディロック
その正統性と革新との両面
80分に詰め込まれた宝石のような瞬間

1時間20分で20曲と見て一瞬たじろいだのですが、聴けば聴くほど前作を超えたサウンドの細やかさと美しさに驚かされました。既にあちこちで言及されてはおりますが楽曲としても20曲全て素晴らしく、アメリカンインディ的ある種ジャンル化されたテイストから全く新しい形まで果てしなく奥行きを感じさせつつ、寄り添う親しみやすさもしっかりそこにあるというか…アンサンブルの作り方も素晴らしくて、シンプルに全ての音がかっこよくてあたたかい。

ずっと聴き続けたいアルバムです。最高すぎる


2. Spoon - Lucifer on the Sofa

新譜待望のSpoonが5年ぶり10作目となる新譜をリリースするということで、僕もなんだかんだ楽しみに待っておりました。僕にとってSpoonは「Ga Ga Ga Ga Ga」がリアルタイムで直撃した世代でしたので今もこうして新譜が聴ける嬉しさがそもそもすごいです。

渋くてストレートなロック
ビートとギターが張り付いて
痛快ながらスタイリッシュでクール

こういうSpoonを待っていたと言いたくなるような痛快なリフから始まる新譜。こんなにもストレートなロックサウンドなのになぜこんなにも気品を感じてしまうんだろうか…ギターサウンドはケツがしっかりビートと張り付いて、いい感じにぶら下がった歪みがもたっと気持ちいい。細部まで聴かせてくれるごまかしの無いサウンドが、GaGaGaGaGaに心をぶち抜かれたあの頃を呼び起こしてくれました。素晴らしいアルバムでした。

3. Cate Le Bon - Pompeii

イギリスはウェールズ出身のアーティスト、前作「Reward」が話題となり知りましたがそこから3年、6作目の新譜となりました。

曇った視界に差す美しい歌声
絶妙な光加減に揺れながら
素敵な時間を噛み締める

Cate Le Bonに関しては前作で若干知った程度で僕も外観くらいしか理解していないところはあり、この機会にと前作も再度聴いたのですが…(めちゃくちゃ良かった…)今作はより曇り具合が強く「迷い込む感じ」がなんとも味わい深かっです。
今作のどこかミステリアスにすら感じるミニマルシンセサウンドとトレモロの効いたギターという点はこれまでとも通じつつ、やっぱり美しくて靄がかかりつつも光を感じる絵も言われぬ多幸感を与えてくれます。

気づいたらずぶうと沼にハマって聴き続けてしまう魔力を持つ作品だと思います。


4. Yeule - Glitch Princess

ユールというアーティストは今作で初見でしたが、試みもスタイルも僕にとって新鮮でアルバムとしても楽しんで聴きました。

圧倒的な尖り
凍りついたグリッチとASMR
その中にポップネスがしっかり光る

まずアルバムが5時間あるのですが、アルバムの最後の楽曲が4時間以上あります…驚きました。「グリッチプリンセス」というデカすぎるタイトルに正直ハードルを持って聴いてはしまったのですが、想像以上にグリッチとの向き合い方としても無理がなくそれでいて現実との確かな線引きを感じる素晴らしい作品でした。心を不安にさせつつどっぷりと沈ませてくれるこの魅力…エレクトロニカとしての振り幅としても新しく既知の形から出て様々な試みが感じられ、ユールというアイコンの証明として素晴らしい作品だと思えました。めちゃくちゃ聴いてます。


5. LNDFK - Kuni

チュニジア生まれナポリ育ちのネオソウルアーティスト。僕は今作で知りましたが…かなり好きで今年聴きまくること確実な作品と出会いました。

実験的なビートアプローチがクセになる
ドリーミーでトリッキーでソフト
ずっと流しておきたい気持ち良さ

Hiatus Kaiyoteを思わせるブロークンビーツとシークエンス、ジャジーな空気感を持つビートアプローチから僕はすぐに好きになってしまったのですが、その味付けに関してはベッドルームテイストというかCrumbやMen I Trustのようなインディの空気感が立ち込めていて、絶妙なアングラ感があるんですよね…
久石譲さんからの影響も公言しており、今作はASA-CHANGも参加しています。この多国籍な空気感もネオソウルに取り込んでいる感じも含めて気持ちいい…
上記のアーティストが好きな方は是非聴いて見て欲しいアルバムです。


6. LORIS S. SARID & INNIS CHONNEL - WHERE THE ROUND THINGS LIVE

自然にある音のアンビエントエレクトロニカとトライバルな質感のハウスサウンドを併せ持ったなんとも僕好みなアルバムでした。

優しさのあるネイチャーサウンド
ゴリゴリしないトライバル性
聴きたかったバランスのエレクトロニカ

こちらのアーティストに関して知識はほぼないのですが、他人のおすすめで聴いてみてかなり僕の好みのサウンドでした。あくまでパーカッションの存在感ではなく上物によってトライバル性を感じさせ、ビートはソフトにアンビエントサウンドやグリッチを適度に交えた塩梅がとても心地よかったです。キャンプしたい…


7. 蓮沼執太 & U- zhaan - Good News

フィルもソロもエレクトロニカも…どのworkでも常に一つ力の抜けた天才感を醸し出す蓮沼執太。僕としては憧れと羨望の対象そのものなのですが、久しぶりにU-Zhaanさんとのコラボアルバムをリリースということで配信即聴取致しました。

より深みを増したコラボ作
トライバルエレクトロニカから
発想がなだれ込む新しすぎる音

「蓮沼執太のソフトなエレクトロニカにタブラの軽快なトライバル性が合わさる気持ちよさ」というカタルシスはとうに超えていて、今作は完全に実験性と気持ちよさが上の領域までいっている感覚すら覚えました。ミニマルテクノのようなストイックさすら覚えつつビシビシと高揚感を感じる楽曲もあり、タブラがトライバルなビートマシンとしてではなくアンサンブルとしてより密接に絡まっていてトリップする気持ちよさがあくまでソフトに続いていく…

素晴らしすぎるに尽きるます。


8. Tears For Fears - The Tipping Point

17年ぶりの新作
あの頃と今と混ざり合って
暖かく成熟した美作

今になってTears For Fearsが新作か…と思って聴いたら、その包むような暖かさとあの頃から続くメロディの美しさに感動してしまったんですよね。ある種古臭くもあるシンセサウンドも健在ながらソングライティングとしてしっかりと引き込まれて…あ〜この感じ…ってなるんですよね。全英1位も獲得して、今も確かにいるんだなって。


9. TAMIW - Floating Girls

神戸、大阪を拠点に活動する「ポスト・トリップホップ・バンド」今作はe.p.ですが、この謳い文句でこられたらまずは聴いてみたくなりまして…聴いてみたところかなり好きでしたので感想を

アグレッシブなアプローチながら
紛れもなくトリップホップ
ダビーでダークな探究心感じる作品

90年代エレクトロの波はイギリス各地で様々なクラブサウンドを生み出し、ブリストルの風土と密接にリンクしてダブやHip Hopともチャネリングして結果トリップホップと呼ばれた音楽の絶妙な外観は、マッシヴアタックにやられて知った世代としては依然曖昧で、それでいてなんとなくの「正解」が示された非常に足場の悪いまさにアブストラクトなステージだと思われたわけですが…

TAMIWが作る音楽はあくまで質感、あの時感じたダークでダビーなビートと力の抜けた歌を用いた手法で、今作はそれが現代的な形でよりエレクトロニカの観点で刷新された形で提示してくれていて本当の意味で「トリップホップしている」とすら思えました。あくまで言葉としてのチャネリングだとしてもかつてマッシヴアタックやポーティスヘッドに衝撃を受け、DJ Spookyで揺れてきた人には親近感を覚えるダークさがそこにはあって、僕はとても好きでした。


2月あっというま

色々あった2月でしたが、やっぱり音楽が気持ちを豊かにしてくれました。祖母の49日で妹が帰省してきたのですが諸々落ち着いたあと妹が余談として最初に話をしてきたのが「Big Thiefの新譜聴いた?」「もちろん。やばくね?」という会話だったのも印象的でした。

他にも感想を書きたい作品はいくつかありましたが書ききれるほど聴き込む時間もなく、今回はこちらの9作について感想とさせていただきました。

まだまだ世界は混沌を極めております。僕は色々調べて知っていこうとしていますが、不用意に発言するよりやれることをやっていこうかなと思っています。音楽で世界を、とかNo Music, No Lifeとか記号的な意味で音楽に果たせることなんて現代には無いと思いますが、少し心が豊かになるかもしれないんでよかったら是非僕と共有してくれる人がいたら嬉しいです。

それではまた









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