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5話_とある舞台裏

うわー、頭で考えてる。。。
ダンサーさんは練っていくほど密度を上げている。
私は一人、気後れ始めていた。

やることは、自分に嘘をついて体を動かしてはいけない。
ダンサーさんやみんなを受け取って、全力で一致させたものを出す。
、、、頭で分かっていても、そう思った時点ですでにアウトだ。

「とにかく全力でやります!」
「?!、、、あ、そういう感じなのね。今、鬼滅の刃やってるから観てくれば?」
いきなり鬼滅???
明日当日ー。リハ、ギリ遅刻になる。
バタバタと仕事を切り上げ、スーツケースと共に道中走る。
やはり観に行った方がいいに違いない。

遊郭編、上弦の鬼の首を炭治郎が切っている。
ほぼこれは無理な状況だけど、そこはとにかくやっちゃうのだ。
100倍を出し切る、おでこのあざの色が変わる!!

そーかー!まだ私、100倍出し切ってないからビクビクしてるのか!!
とにかく、全力を超えて全力を出すんだ!!!

そこで、スイッチが変わっていった。
頭でなく、感じるんだ。フォースと共にあらんことを。。。

色々が錯綜する中、とにかくダンサーさんの身体から、振り付けから、
舞台袖でどんどん自分の中に入れ込んでいく。
キャスト、観客のみなさん、私自身、みんな自分自身にダイブする。

今の透明な意識の空間、私自身の芝居はおかしなことになっているけど、
舞台真ん中の椅子に座り、本を広げる。
ゲネの時は、ダンサーさんの今まで踊っていた姿を思い出していた。

分厚い舞台の小道具の本を広げると、
宇宙空間が広がっていた。
私は、舞台本番、周りのダンサーさんが踊る中、
観客のみなさんに観られながら、
ひとり宇宙空間にただ驚いていた。
これって、こんなところに繋がっていたんだ。


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