8話 喰われちまったはなし
今までの優しい顔じゃない。怖いな。どうしよう。
「え?何が?そうかな〜」
「、、、だいぶ喰われてるよ。もう本体が飲み込まれている。別のモノが99%くらいだ」
悠長に答えているのは、別のモノの方。のっとりが反転して現実に物質的な力をもって現れてきた。別のモノは嬉しくて仕方ない。こんな成功、全てに知らしめたい。
反転できるって、ワクワクすること。天地がひっくり返ることだ。
わたしは全くいたたまれないのに、別のモノの、この感情の発露はどうだ。
喰われたわたし、1%。鏡をみるとゾッとする。何を言われても嬉しい顔をしていて、厚顔無恥というか、怖いものが何もない。
周りから人がひいて、大事にしていた人たちがダメージを受けて苦しんでいる。
仕事も悪影響を及ぼすので、クライアントには会わないように。
もう一緒にいるのは限界だと。。。
おかしいな〜言われていることはわかるのに、どうにも戻らない。
そして自分の心に、何も響かない。反転はすでに完成してる。
たまに訳もなく震えがくる、でもすぐ終わる。
別のモノがでてきて、何事もなくふるまっている。
大丈夫、わたしたちに任せて。いつもしてきているように。
わたしたちが、思考を働かせて、フルパワーでふるまいますよ。
でもね、そうしてもらうのはありがたいけど、わたし騙されてるの知ってる。
人にどう関わったらいいか戸惑う時に、別のモノがふるまってくれるの。
よく聞こえなかったけど、ここは周りの人と同じ表情をしておこう。
黙ってわかった雰囲気を作っておこう。
あれ、誤解されてるようだけど、説明がうまくできないから適当にしよう。
本当はね、本当はね、本当はね、こう思っているんだよ。
本当は、、、をいっぱい心の大きな穴の中に落としていったら、
出てこようとしても、ぐっと押さえ込んで知らん顔していたら、
本当は、、、が腐っていって、どろどろになって、別なモノになっちゃった。
ただ泥水のように溜まっていったものだったのに。
何かべっとりしてるけど、嫌になるから、知らん顔してた。
そしたら泥水が形になって、わたしよりもしっかりした人格になって、
体の隅々まで、泥水が流れていって、すっかり覆われている。
わたしは、最期の旅にでる。
わたしをみて、向き合うための旅。
別なモノと会話する旅。
大きなエネルギーに触れて、わたしを解放し開放する旅。
出発前夜、別なモノはずっと邪魔をする。
わたしを寝かさないように、飛行機に乗り遅れるように、
失敗するように、旅に行けない理由をいくつも作り出す。
それでもわたしは旅にでる。
もう今から寝ます。
荷造りは中途半端。なんとでもなる。
わたしが1%あるから、その1%で別なモノをみる。
感じて、わたしじゃないものになってるのに氣づいて、
もうどうなるかわからないけれど、
今の本当はね、に日をあてる。
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