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2話_銀座の夜の花売り

銀座の夜23時過ぎは、目力強めの男女が闊歩している。ギラギラした活力、まだまだこれからだ。

年配の女が花束を腕に抱え、銀座の交差路に立っている。1つ千円、女の子へ、奥様へ、と通り過ぎる男たちに花束を押し出す。赤い薔薇、ピンク、黄色、、、小ぶりの花束だ。男たちは、無碍に、または笑いながら首を横に振って通り過ぎる。

抱えた腕に4つほど、歩道の上のバケツにも同じくらいの花束が残っている。
あと7、8人に売らないとなのかな…。
彼女は、売れない花束を見つめ、一瞬しょんぼりした少女のようにみえた。
この時間は、どれだけ続くのだろうかー。ただその歩みを止めることはない。

それは、突然の展開だった。
声を掛けられたオーナー風の男は、手を振って通り過ぎようとした。
すると同伴の女は、黄色い薔薇が欲しいと自分の財布から千円を出したのだ。
やっと1束売れた。救いの女神!

私は銀座の街に疎いのだ、、、。

花売りの女は、するすると再びオーナー風の男に残りの花束を勧め始めた。
男は、苦笑しつつ部下を呼び寄せ財布を取り、一万円を渡した。抱えていた花束をすべて買ったのだ。
花売りの女は、すかさずバケツにある花束も押し当てた。全部渡しても、お代は十分だ。オーナー風の男は、部下に花を持たせ、同伴の女に好きなものを選んでと言いながら通り過ぎていった。

花売りの女の顔は、爽快だ。
今日の花束を、売り切った。
エクスタシーともいえる笑顔。
これが銀座の夜のマジックだ。
この街の中毒を、花売りの女も纏っている。


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