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【読書日記】最近読んで面白かった本をまとめて紹介する

もう2024年も半分に到達しようという今日、気づけばこのnoteを2024年になってから一度も更新していないことに気づく。

読書感想記録を書きたいときに書く目的で開設したnoteだったけれど、最近更新していなかったのは本を読んでいないわけではなく、むしろたくさん読んでいてアウトプットが追いついていないから。「この本面白かったからnoteに感想書くぞ!」と思っている間に、次から次へとそういう本が溜まっていく……。

このまま溜まっていくといつまでも感想を投稿できないので、ひとまず今年に入ってから読んだ面白かった本をまとめて一気に紹介して、消えかけたやる気の炎を再燃させようという狙いで久々に筆を取ってみる。

『頬に哀しみを刻め』S.A.コスビー

2024年元旦に読了。もはや最近とは言わない。

小島秀夫監督がイチオシしている作品ということで手に取ってみた一冊。
ゲイの息子夫婦を殺された親たちがバディとなって犯人に復讐するという内容。元服役囚人である彼らが犯人に関わる人物たちにムチャクチャ派手な復讐劇を繰り広げるクライムサスペンス。カタブツな主人公とひょうきんな相方の老人タッグというキャラクター性も面白くて、エンタメ寄りな小説ではあるけれど、ゲイやLGBTQの問題、黒人差別の問題は本筋と関わって深刻なテーマとして描かれていて、その点はとても興味深く読んだ。こんな内容の本を元旦に読み終わってるのもどうなんだという感があるけれど、今思うとこの一冊がきっかけに今年は「差別」について考える機会が増えたように思う。

『ナイン・ストーリーズ』J・D・サリンジャー

1月24日読了。合わせて「本当の翻訳の話をしよう」も読んだ。

柴田元幸さんによる新訳版が発売されたので発売日に購入。恥ずかしながらサリンジャーは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(村上春樹訳)しか読んだことがなく、ナイン・ストーリーズは初めて読んだ。
他愛もない、そしてどこかズレた会話劇が多くて想像以上にわかりにくい内容。しかしやたらと印象に残る。「コネティカットのアンクル・ウィギリー」「笑い男」あたりは内容もわかりやすくてお気に入りの話。明らかに異色な「テディ」もぶっ飛んでいて面白かった。
自分は柴田元幸さんの翻訳がとても好きなのだけれど、今回この本の発売を記念して柴田元幸さん本人が出席される読書会にも参加し、少しお話しさせていただくことができた。とても良い体験だった。

『生きるとは、自分の物語をつくること』河合隼雄、小川洋子

1月31日読了。カメも元気です。

「物語」というものが人の心に及ぼす影響、それによる精神への癒やしなどについて、元文化庁長官で心理学者の河合隼雄と、作家の小川洋子の二人が対談する本。河合隼雄の語る言葉の一つ一つがハッとさせられ心に染み入るものばかりで、自分の心の霧が晴れて前に開けたような感覚にさせられた。この文庫本が出たのはもう河合隼雄が他界されてからのようで、それについて書かれた小川洋子のあとがきも胸に来るものがある。この対談はちょうど小川洋子の『博士の愛した数式』が出た頃のようで同作の話も多く出てくる。この機会に『博士の愛した数式』も再読したが、こちらも改めてとても良い小説だった。

『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』アゴタ・クリストフ

ブックオフで買った本たち

不定期的にブックオフで爆買いしないと精神に支障をきたす持病があるので発作を鎮めるためにブックオフをはしごした。その際に『悪童日記』の三部作が揃って安く売られているのを発見して購入。『悪童日記』はすでに読んだことがあるが改めて再読し、その続編となる『ふたりの証拠』『第三の嘘』を初めて読む。『悪童日記』も改めてすごい小説だと思ったが、続編まで読むとその印象が大きく変わる。変わるどころか全く別の印象になると言っても過言ではない。『悪童日記』が幼少の双子による一人称複数視点、『ふたりの証拠』が青年期を描く三人称視点、『第三の嘘』では55歳にもなった主人公ふたりそれぞれの一人称視点が描かれる。いずれも読んでいて辛くなるほど悲痛な内容だけれど、衝撃的な仕掛けもあり没入させられる。個人的には『ふたりの証拠』が特に印象が強い。どうしようもなく救いの無い話だが主人公に特に感情移入してしまう。

『誓願』マーガレット・アドウッド

4/17読了。初めて行ったカフェでゆったりと読書(しかし本の内容は重い)

1985年発表『侍女の物語』から30年以上の歳月を経て描かれた続編。『侍女の物語』も素晴らしいディストピア小説だったけれど、こちらもまた違った面白さのある小説だった。
『侍女の物語』は凄みのあるディストピア設定と静謐な主人公視点での心理描写が魅力だったのに対して今作はストーリー展開に力が入っていて、「エンタメ作品になってしまった」という批判もちょくちょく見かけたものの、個人的にはとても楽しく読んだ。
立場の違う三人の女性による群像劇的な側面を持ち、魅力的な登場人物たちの行動が交錯して結末に向かっていく展開にはページを捲る手が止められなくなった。あとがきにもあるように、30年経った今この設定が現実味を帯びてきているのも恐ろしい。

『差別はたいてい悪意のない人がする』キム・ジヘ

5/11読了。写真は初めて行った「青山ブックセンター」で衝動買いした本たち

普段は小説ばかり読んでいる自分だけれど、初めて訪れた「青山ブックセンター」では思想書や哲学の本が充実していて、少し背伸びしてそういった本をいくつか購入した。この本は、タイトルの時点でギクリとさせられる本であり、自分も差別に対して無頓着なのではないかという危機感から購入した。
たくさんのメモを取りながら時間をかけて読んだけれど、特に「私たちが生涯にわたって努力し磨かなければならない内容を、『差別されないための努力』から『差別しないための努力』に変えるのだ」という言葉に心打たれた。自分は差別なんてしないという思い込みについて考えさせられる。
自分は社会の中では圧倒的にマジョリティであり、気付かず差別をしてしまう可能性も十分ある。無知による差別をしてしまうこともあるかもしれないが、「そんなつもりはなかった」と言い訳するのではなく、しっかり猛省し、傾聴し、理解する人間でありたい。

『空白の五マイル』角幡唯介

5/16読了。父が持たせてくれた一冊。

以前帰省したときに父親に持たされた一冊。チベットの未開の土地・ツァンポー峡谷の冒険記ノンフィクション本。アウトドアな趣味を持つ父親が好きそうな本だなあと思い、正直なところ個人的にはあまり興味をそそられていなかったのだけれど、読み始めたらこれがまあ面白い。「事実は小説より奇なり」という言葉はこの本のためにあるのではないかと思わされるほど、小説以上にページをめくる手が止まらなくなる。
死が隣り合わせどころかもはや侵食しつつある、想像を絶する体験が語られ、何度も「でもこの本を書いてるってことは無事に帰還したんだよね?ね?」と自分に言い聞かせないとハラハラして読めないほどだった。小説では描けない、生の体験だからこそのリアルさに戦慄させられる。
しかし、命を賭けた冒険をするために安定した会社まで辞めてしまう筆者の生き様には、自分の人生についても考えさせられるところがある。文章もとても読ませる文体で、読み物として面白すぎる一冊だった。

おわりに

書き始めたら結局語りたいことがありすぎて長くなってしまった。本の話はいくらでもできる自信があるけれど、文章でまとめようとするとかしこまってしまうので、ほんとはラジオとかでベラベラ一人で本の話をしたいな〜〜と思うことがある。
「数奇のひとりビブリオバトル」と題してラジオでもやろうかな……。文章を書くのもこれはこれで好きなんだけれど。
気が向いたらまた書こうと思います。

今日書いた感想は大体、読書メーターで自分用の記録として付けている感想から抜粋しているので、興味があって読書メーターやられてる方はこちらもよろしくお願いします。

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