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19.「ポーズ作り」は誰の仕事? (レンズの焦点距離に合わせて「ポーズ」の迫力を考える)

今回は、「ポーズ作り」は誰の仕事か、カメラマンが撮影現場で意識すべきことを中心に、人物撮影における、「迫力あるポーズ」の作り方を考えていく。

【ヘッダー写真・Model:ゆきさん】
(F5.6 1/200s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

ポートレート、コスプレ問わず、人物撮影において、さまざまな表現をするうえで避けて通れないのが「ポーズ」の問題。

よりよい作品づくりのためには、自然であれ、不自然であれ、ポーズを使った表現をどれだけ使いこなせるかが鍵になってくる。

どうすればポーズをより活かせるか、どう作ればポーズに迫力が出せるのか、考えてみよう。

1.「ポーズ作り」は誰の仕事?

【イシュタル:ゆよりさん】
(F1.4 1/25s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

一対一の撮影であれば特に、「ポーズ作り」は被写体さんだけの仕事ではなく、カメラマンの仕事でもある。

一対一でなくても、撮影の場において、ポーズをカメラで見たとき(=写真で見たとき)の「見え方」と「見せ方」を一番把握できるのは、カメラマンをおいて他にないためだ。

逐一、イメージの共有が必要となるので、撮影画像を一緒に見ながら、どの画角で狙うべきか、どこ(何)を見せたいか、どう表現したいかを共有し、改善を行おう。

特に、ポーズの迫力はレンズの焦点距離(広角か、望遠か)によって全く変わる。詳しくは次項参照。

2.広角と望遠での、ポーズの考え方

使用するレンズが広角か、望遠かによって、見せ方がどう変わるかを見てみよう。
今回は、フルサイズのボディで比較してみる。

まずは広角(24mm)だと以下のようになる。

【巴御前:袴さん】
(F2.8 1/8000s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

続いて望遠(200mm)だと以下のようになる。

【巴御前:袴さん】
(F2.8 1/2000s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L

どちらの写真においても、使用しているのは全く同じ武器(薙刀)、人物の大きさも同じぐらいに写っているが、武器の見え方が全く違うことがお分かりいただけただろうか。

特に、刃と柄の部分が、それぞれ2つの写真では全く違う長さになっている。広角(24mm)のほうが、レンズに近い「刃」が長く見え、レンズから遠い「柄」が短く見える。

これは、広角レンズの2つの特徴によるものだ。

  1. 「レンズに近いものほど大きく見え、遠いものほど小さく見えやすい」(遠近感の強調)

  2.  画角の中心から離れれば離れるほど、外側に伸びるように見える(いわゆる広角の「ゆがみ」)

14mmの超広角だとこんな感じ。
画面過度に向かうほどに、
像が外側へ流れるように伸びる。


つまり、広角レンズでは前後の「遠近感」が強調されるうえ、画角の外側に近づくほど、像が画角の外側へと長く伸びる。そのため、このように、同じものでも、長さが全く違って見えるのだ。

フルサイズの場合、僕の体感ではだいたい焦点距離70mm前後を境に、この「広角の特徴」が出やすくなり、そこから焦点距離が短く(数字が小さく)なるほどに、その特徴が強くなる。

したがって、レンズの焦点距離ごとに、迫力を出しやすいポージングが変わる。

先ほどの24mmの写真では、下の図のように、写真の対角線を使いつつ、レンズに刃を近づけることで、「刃」の部分を強調している。

広角はレンズの外側に一番近い「画角の隅」に
刃先を向けることで、
広角のゆがみを活かした強調ができる。

このように、広角では、腕や脚、武器などを対角線のラインに合わせることで、迫力を出すことができる。

また、先に書いたように、広角レンズでは画角の外側に近づくほど歪みが大きく、外側へと伸びるようになるので、顔などの歪んだら困る場所はできるだけ中央に近づけるよう意識しよう。

一方で、望遠のレンズの場合は、対角線よりも画角の「辺」と平行のラインに、武器や腕、脚などのラインを合わせるのがおすすめ。

望遠で画角の対角線を使おうとすると、
寸足らずになったり、
画角が窮屈になりやすい。

このように、望遠では対角線を使うのではなく、画角の辺の外へと向かうようなポーズの組み立てのほうが、迫力が出しやすい。

また、望遠の場合は、レンズに対して武器や腕、脚などを向けるような「前後のポーズ」をすると、望遠レンズの「圧縮効果」によって短く見えてしまうので、そういった意味でも、画角の外へ向ける「左右」または「上下」のポーズにするほうが良い。

【ジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィ:花核さん】
(F5.6 1/200s ISO3200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

被写体さんに対して大きな武器などであれば、このように対角線のラインを使うこともできる。

この場合は「被写体さんの体」という比較対象があるために、武器の大きさが際立って十分なサイズ感が出る。

3.「迫力」を作る要素を考える


ここでもう一度、ヘッダー写真を見てみよう。

【Model:ゆきさん】
(F5.6 1/200s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L


24mmの広角レンズで、ハンドガンを使ったポーズを撮影。
今回はハンドガンを「腕の延長」と捉え、体でのライン作りに重点を置いてみた。

このように、短い武器などを使うポーズでは、
体を主としたライン作りを意識すると迫力が出やすい。

見ていただいての通り、銃だけでなく、脚、そして頭もカメラに近づくようポーズを組み立てている。

また、このポーズで頭をカメラに近づけることには二つ狙いがある。

一つは、低いカメラ位置に対して「顔を上から撮る」状態に近づけるため。
もう一つは、動きのあるポーズでは「頭や顔が近いほど、切羽詰まったような雰囲気が出て、迫力が出やすくなる」ためだ。


【Model:花核さん】
(F5.6 1/200s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF24mmF1.4L

広角レンズで、長い大鎌を使ったポーズのパターン。
武器の形状が特殊なので、武器の柄は辺と平行にしつつ、刃先をレンズの下に向けている。

形状が特殊だが、
武器の中心が対角線を通るよう意識している。

こちらのポーズでは、頭をカメラから遠ざける方向に傾げてもらっている。

図に書いてあるとおり、「広角の歪み」が少ない画角中心に顔を近づけてもらうことが目的の一つ。
そしてもう一つ、レンズから遠い方向に傾げると、先ほどとは逆に、少し余裕そうな雰囲気が出る。

このように、遠近感の出やすい広角レンズは前後を利用して迫力を演出しやすいが、歪みも出やすいため、さまざまな工夫が必要になる。


【ジャンヌ・オルタ:りおさん】
(F5.6 1/200s ISO3200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

一方で、望遠レンズではポーズの遠近感が出にくくなるので、左右、または上下(長辺に合わせるとよい)に向けたポーズの組み立てが必要だ。

被写体さん側だけでは、ある程度カメラに詳しい方でも、実際の写真の全体像がイメージしづらい。

そのため、カメラマンからのイメージ共有が必須で、レンズごとの特徴に合わせた工夫が必要不可欠になる。


🔭<午前二時、踏切に連れてって。

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