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銀行がフードデリバリーに参入?! その大義名分とFintech/DXの真の狙い

久々に感心する事例を発見しました。 注目の銀行です。


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タイのサイアム商業銀行(SCB)は、4大銀行の一角を成しタイ国最古の商業銀行です。(ちなみに他の4大銀行はクルンタイ銀行、バンコク銀行、カシコン銀行。MUFGが2013年12月に買収したアユタヤ銀行はこれに続く第5位です。)

コロナ禍で大打撃を受けているのはタイも同じ。屋台含め多くの飲食店が宅配に活路を見出そうとしています。そんなフードデリバリー市場に、「Robinhood(ロビン・フッド)」という名称で、SCBがサービスを開始すると発表したのです。

https://www.scb.co.th/th/personal-banking/stories/business-maker/robinhood.html#  

フードデリバリー市場といえば・・・そう、UberEATS、GrabFood、FoodPandaが競合となります。

銀行がフードデリバリーに参入?!いくらタイ大手銀行といっても勝算はあるのか、SCB?!




「Robinhood」の3つの強み
1.初期費用なし
他社のフードデリバリーサービスでは初期費用が必要となるところを無償提供。

2.手数料なし
他社のフードデリバリーサービスでは20%前後のサービス手数料がとられるところを無料提供。

3.入金は1時間後
他のフードデリバリーサービスは一ヶ月毎に集計して支払われるところを入金1時間後に振り込み完了。



どうですか、これ。すごいですよね。三密ならぬ三無しです。
コロナ禍であえぐ外食産業を救済するという大義名分をひっさげての登場です。飲食店側からみると使わない理由がないですよね。

発表が6月上旬、7月サービス開始、12月末までに5万店の登録を目標にしているそうですが、もう既に3万店集まっているそうです。そりゃあそうだ。

ではこのモデル、SCB側にとってどのような意味があるか?

1、コロナ禍の影響で、ご多分に漏れずタイも金融緩和。政策金利も過去最低の0.5%。銀行の収益環境も厳しい状況となっています。その中でも比較的高金利で貸し出せる飲食店に注目したんでしょうね。銀行間のサバイバル競争勝ち抜く作戦ですね。
2、もともと現金商売であった飲食店の売上入金口座を抑えることで、売上金からの仕入支払・人件費支払いなどの振込手数料を見込めます。顧客を囲い込む作戦ですね。
3、また売上入金と支払出金のフローが把握できると、融投資先開拓にも使えます。今後発展するであろう、AIによる自動審査も視野にはいっているでしょうね。融資見込み客の育成作戦ですね。
4,そもそもSCBはタイ王室系。民衆のためにという大義名分がみごとにマッチします。SDGsやESGの面でみても社会性・公共性が高く、世界的な機関投資家にも猛アピールすることができますね。

さらにぜひお知らせしたい、素晴らしいことがあります・・・・
このサービスをわずか3か月で完了&リリースしたということ。

コロナ禍の社会を助けたいという願いから、SCBグループの新世代のチームが集まって、アプリの開発、ビジネススキームや法令チェックなど山積みな課題を突貫で成し遂げてます。普通に考えてもアプリ開発だけでも通常は6〜12か月かかってもおかしくないですね。


銀行異業種参入規制があるため、グループベンチャー企業であるPurple Ventures、およびタイのスタートアップScootar Beyond Ltdのもとで運用、投資予算は1億バーツ(3.38億円相当)だそうです。配達はパートナーSKOOTARをまず使用し、今後増やす予定だそうです。

ほんと素晴らしい。日本の企業・金融機関は、SCBの爪の垢を煎じたのをシンハービアで飲んだほうがいいかもしれませんね。

しかし・・・これを更に進化させるといろいろなスキームが作れそうです。Purple Venturesの社長であるThana Thienachariyaは、このRobinfoodを進化させ「クラウドキッチン」のプラットフォームに。調理場所も貸出し、原材料を有料で提供する可能性があることを示唆しました。

https://www.thestorythailand.com/en/03/07/2020/3052/

これはすごいことです。衛生状態が不安定な屋台がセントラルキッチン化されデリバリー中心になる?!かもしれません。

いろんな意味で、未来予想が掻き立てられる企業ですね。

これこそ、まさにFintech、まさにデジタルトランスフォーメーションといえるのではないでしょうか。

これが最近のサイアム商銀の活動です。


・タイ政府が「国家電子決済計画」を発表、国内銀行のための電子決済インフラPromptPayにSCB率先して賛同
・サイアム商銀、ナノファイナンス事業を開始
・セブンイレブンを展開するCP ALL(CPALL)とQRコードによる預金・出金サービスを開始
・インドネシアの配車アプリ大手ゴジェックに出資し資本業務提携
・アセアン最大のEコマースおよびゲーム開発業者であるSEAのタイ事業部と業務提携し、SEAの決済アプリと同社アプリの連携によりデジタル決済と融資を含むデジタル能力拡張に踏み出す

なかなか面白い銀行です、世界No.1のDX金融機関と評価されているシンガポールのDBSに続く注目銀行です。

継続調査し、近日オンラインセミナー開催したいと思います、乞うご期待!


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