見出し画像

読み解く! EEA発表:”Enabling consumer choices for a circular economy (循環型経済に向けた消費者の選択を整える)” 

2022年5月17日、欧州連合(EU)の有力機関である欧州環境機関(EEA)が、サーキュラー・エコノミーをテーマにしたブリーフィングを公開しました。

”Enabling consumer choices for a circular economy (循環型経済に向けた消費者の選択を整える)”

この内容はとても素晴らしく、示唆に富んでいる内容なので、抜粋・翻訳したものを紹介します。

脱炭素を進める上で、Scope1、Scope2は当然としてScope3の削減が重要視されています。
そのScope3を削減する上で、循環経済(サーキュラー・エコノミー)は避けて通れないものがあります。

また地球全体のサスティナビリティを考える上でも、Take-Make-Wasteなリニア経済から脱却し、循環経済(サーキュラー・エコノミー)への移行はまったなしです。先進国や意識の高い有力企業が少しづつサーキュラー・エコノミーに取り組み始めていますがその道程はとおく険しい状態です。
企業側(生産システム)がいくら声をあげても、消費者(消費システム)がそれに反応し、2つの歯車が噛み合わないといけません。まさに笛吹けど踊らずである現場を打破するとても重要な取組だといえます。

産業革命以降、特に第二次世界大戦後は、大量生産・大量消費。そのモデルを享受し発展してきた企業、同じくその甘露を享受してきた消費者の思想と嗜好を変えることはとても大きな課題。その課題解決に向け、循環型経済への移行に必要な消費者の意思決定を変える必要があります。

では、どうするか? まずは個人の行動を形成する要因を理解し、消費者が循環性を好む選択をするよう誘導することが重要でその誘導にむけてどのような・どのように政策措置をとるべきかをこのブリーフィングで取り上げています。

なお、近日全翻訳したものを用意する予定なので興味関心があるかたはご連絡ください。

キーメッセージ

製造業は、市場に投入する製品の種類を定義し、ターゲットを絞ったマーケティング戦略を通じて、消費者の需要を大きく形成してきた。消費者の製品の購入段階、使用段階、廃棄段階において、循環型経済の原則に最も合致した製品やサービスへの需要を喚起させることにより、循環経済への移行を促進することができる可能性がある。

循環型経済と整合性のある意思決定を消費者に促すことを目的とした政策で効果的となるものは、個人の行動を形成する要因を理解し、消費者が循環性を好む選択をするよう誘導することがあげられる。

消費者行動に影響を与える要因は、経済的要因、ニーズと製品の適合性、情報・知識、社会的要因、そして消費者の個人的嗜好である。現在の政策は主に消費者に情報(例:エコラベル)を与えることを目的としており、循環型代替品を経済的に魅力的なものにすることはなっていない。社会的な要因や個人の嗜好を政策だけで変えることは、より困難であると考えられている。

減税や補助金、法的拘束力のある規制、グリーンウォッシュの回避、循環型代替品の利便性向上、エコラベルの活用や消費者を対象とした例えば製品への思い入れを高める施策など、様々なガバナンスレベルで今後考えられる政策の選択肢を模索する必要がある。

はじめに


社会と政策立案者は、生産側と消費側の製品選定時のサスティナビリティ要素の重要性について、関心が高まっている。伝統的に、政策は生産や産業プロセスが環境や気候に与える影響を軽視してきた。生産と消費のシステムは強く結びついており、生産システムは、マーケティング戦略や広告を通じて、需要に対応するだけでなく、需要そのものも形成してきた。

本報告書では、消費者行動に焦点を当てる。循環型経済と整合性のある消費者行動を増やすことが、いかに正しい製品を選択するかだけでなく、この行動がいかに上流(例:製品の材料使用や設計)および下流(例:製品のリサイクルや再利用)の意思決定に影響を与えることができるかを概説している。また、本報告書では、消費者の選択を形成する主な要因に対処することで、より循環経済に合致した消費者行動を可能にするための政策について探求している。本報告書は、詳細な技術報告書に基づいている。

消費者として、我々は消費の選択に日々直面している。私たちの決断は、循環型またはリニア型のいづれか一方の消費者行動を表す。例えば、もし私たちが無包装の野菜を買うことを選択すれば、包装の製造に使われる材料資源を節約することができ、車を定期的に整備すれば、車の部品や材料の価値を維持することができる。

リニア的な消費者行動と循環的な消費者行動の違いをより体系的に評価するには、製品のライフサイクルに着目することが望ましい。消費者の選択は、製品の購入段階、使用段階、破棄段階という3つのポイントこそが、製品の循環性を高める可能性が高いといえる。(図 1)。

図1. 製品のライフサイクルを通した消費者行動の比較  リニア的行動 vs 循環的行動
出典:EEA https://www.eea.europa.eu/publications/influencing-consumer-choices-towards-circularity/enabling-consumer-choices-towards-a 


循環経済:消費者行動に影響を与える要因

欧州の政策立案では、消費者の選択権を尊重すると同時に、より環境に配慮した持続可能な選択をするよう行動に影響を与えることの重要性をますます認識するようになっている。これは、生産/消費システムの生産面を扱う政策が、(資源効率の向上にも関わらず)増大する資源需要に対応しきれていない現状があるためである。しかし、効果的な消費者政策を立案するために、消費者行動を形成する要因を理解し、政策がそれらにうまく対処できるようにする必要がある。

消費者行動を形成する要因について、科学的なコンセンサスは得られていないが、既存の研究の大部分は、図2に示すような要因のカテゴリーを指摘している。


図2. 消費者行動に影響を与える要因の主なグループ
出典: EEA https://www.eea.europa.eu/publications/influencing-consumer-choices-towards-circularity/enabling-consumer-choices-towards-a


循環的でない選択へと向かわせる行動形成要因

以下のフレームワーク(図3)は、これらの行動形成要因が意思決定をより循環的またはより循環的でない選択へと誘導する文脈の例を示している。


図3. 行動形成要因が循環的でない選択へと向かわせるかの例
EEA資料(https://www.eea.europa.eu/publications/influencing-consumer-choices-towards-circularity/enabling-consumer-choices-towards-a)より筆者作成


以降の本文内容

本コラムではここまでの抜粋とします。続く本文では、循環型経済の原則に合致した消費者行動を政策はどのように促進するか? をテーマに筆を進めています。

政策立案者は一般的に、社会的要因、個人の信念や態度を政策手段によって変えることは困難であると認識しています。民間部門のマーケティング戦略は、広告やソーシャルメディアのインフルエンサーを利用するなど、長期的なアプローチやツールによってこれらの要因を形成することを目指しており、リニア的な製品ソリューション(例:ファストファッション)を促進してきました。政策立案者は、これらの要因に直接対処する政策ツールを開発したり、リニア的な製品を促進するマーケティング戦略の効果を制限したり(例えば、循環型/直線的製品ラベルやマーケティングキャンペーンによる環境主張を精査することによって)、これらの要因にも潜在的に影響を与えることができとしています。

経済性、ニーズと提供との適合性、選択のための情報提供、社会性の4つの切り口で政策ヒントを記載しています。

まとめ

図3. 行動形成要因が循環的でない選択へと向かわせるかの例 は注目に値します。政策立案者だけでなく、企業のマーケティングを担うものとしてはこの消費者意識をいかに態度変容させていくか・・・がサーキュラー・エコノミーを推進する上でも大きな取組となることは間違いないでしょうね。
そしてその取組に積極的に取り組み、成功することが、サーキュラー・エコノミーへの転換時期を縮めることに繋がり、企業間競争を勝ち抜き、サーキュラー・エコノミー時代の勝者となれるはずです。 心して取り組んでいきましょう。

*本ブリーフィングを、全翻訳したものを近日用意する予定なので興味関心があるかたはご連絡ください。

いただいたサポートは、活動費・購入費など有意義に使わせていただきます!