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おかしいけど、あたたかい -『監督不行届』本の感想-

今回は、漫画家安野モヨコさんのエッセイ「還暦不行届」について書きます。

本で紹介される夫婦生活のエピソードが本当に面白かったです!でも、明確には書かれていないお二人の大変さ、お互いへの愛情、みたいなものも感じました。

なので、笑いながらも、「大変だったんだろうな」と切なくなり、でもお互いできる範囲で、対応しあっているんだなあと、じんわりと心があたたかくなったのでした。


1.内容

以下ページには、こんな風に紹介されています。

37万部突破(紙・電子累計)のベストセラーとなった庵野秀明監督との新婚生活を描いた、安野モヨコの『監督不行届』。
本書は、『監督不行届』のその後をつづった文章版エッセイです。

発売前重版決定! 還暦を迎えた鬼才監督・庵野秀明と漫画家・安野モヨコのオタ夫婦をつづった、おかしくも愛おしい文章版エッセイ: 祥伝社NEWS (shodensha.co.jp)

テーマになるのは、旦那様の庵野監督のエピソードで、監督の謎ルールや言い間違いが良く出てきます。それが「ネタ」になって、とても面白いのですが、それ以外の部分が印象に残りました。

2.印象的だったところ

色々あるのですが、一番は、価値観が違うお二人が、お互いに歩み寄りをされている様子がすごいなあと感じました。

例えば、「監督の手料理」の回。お湯すら沸かさない、なんならコップも家にない、という状態から、20年をかけて、監督が自分好みの味噌汁を作るようになるまでのエピソードが紹介されています。

安野さん側から見れば、段階的に料理をしてもらうようにするまで、本当に大変だったと思います。そして料理の大半は安野さんがまだされているのかなとも。

ただパートナーが料理をしない、というのはよく聞く話で、たいていもう一方が料理担当として開き直るか、不満を言いながらも有効な手段を打てず嫌々料理をし続けるか、のどちらかと思うのです。

ただ安野さんは、監督ができることから少しずつ対応してもらうなど、粘り強く行動を続けています。本当に、前向きで忍耐力のある人なんだなと感じました。

一方、庵野監督側から見れば、料理を作ることは必須ではなかったようです。

確かに料理を作ることは必須ではありません。お金を稼いでいれば、食事は買ってきたり、外で食べたり、いくらでもできます。家政婦さんも雇えますし、パートナー(大抵は奥様)が作るのが当たり前、と思っている旦那様はいくらでもいます。女性としては、抵抗を感じる考え方ですが・・・。

でも監督は、「これ作ってみて」という安野さんの申し出に、できる部分はこたえて、作れる料理を増やしました。まずは安野さんの試行錯誤がものすごいなとは思うのですが、どんなに工夫しても、それを聞くことさえ拒否する人がいます。特に何かに秀でていて、それで地位とお金を得ている人は、自分を変えようとする気がないことが多いと個人的に感じています。

それを考えると、自分とは全く違う考えに、歩み寄る監督はすごいなあと思ったり、それだけ安野さんを信頼したり大事にしているのかなと思ったのでした。

3.おわりに

この本は、自分の努力が報われない気がして元気がない時に「笑えたらいいな」と読みました。が、読みながら笑った後で、「・・・私はここまで丁寧に、粘り強く対応はしていないなあ。だから結果が出なかったのかも」と思う部分がありました。

才能があって結果を出しているクリエイターのお二人故に、色々な大変さがあったのだと思いますが、お互いを尊重しつつ歩み寄るお二人は本当に素敵だと感じました。私も大切な人とそんな風に意思疎通したいなと思うのでした。

何はともあれ、お二人の今後のご健康とご多幸と祈りつつ、本投稿を終えます。

安野さんの以下noteのページから一部が無料で読めます。他の投稿もとても面白かったです。