見出し画像

綺麗で怖い、犯罪者達に魅せられる -「ブロードウェイミュージカル『シカゴ』」-

今回はブロードウェイミュージカル「シカゴ」来日公演について書きます。映画版が大好きなこのミュージカル。公演も見ごたえがあり、考えることがたくさんあったので、ご紹介します。
舞台のネタバレをしていますので、ご了承いただける方のみ、読み進めて下さいませ。

・あらすじ

1920年代のジャズ全盛時代、イリノイ州シカゴ。
不倫を重ねていた夫と妹を殺した元ナイトクラブ・ダンサー、ヴェルマ・ケリーが収監されている監獄に、新顔がやってくる。彼女の名はロキシー・ハート。冴えない夫エイモスに飽き飽きしている女優志願の人妻ロキシーは、自分を捨てようとした愛人フレッド・ケイスリーを殺害したのだ。悪徳敏腕弁護士ビリー・フリンの力でメディアの注目を一身に集め、スターとなっていたヴェルマに負けじと、ロキシーもビリーを雇ってマスコミを利用し、正当防衛の“悲劇のヒロイン”として一躍メディアの寵児になっていく。
スポットライトを求めるロキシーの快進撃はどこまで続くのか? 彼女と反目するヴェルマのリベンジは? 二人の女と一人の男の名声を賭けた争いが今、幕を開ける──。
https://l-tike.com/play/mevent/?mid=658039

今回の来日公演については、以下ページからどうぞ。

・・・という、何とも恐ろしい話なのですが、とにかく主役のロキシー、ヴェルマ含め出てくる人々がきれいで魅力的なので、引き込まれます。

・素敵ポイント①動きがきれい過ぎて鳥肌が立ちまくり

フォッシースタイルというんでしょうか。ゆっくりとしていて、なまめかしい動きで、早くはないのにものすごく心に響いてくる感じでした。特に最初の’All that jazz’ではずっと鳥肌が立っていました。

・素敵ポイント②キャラが立ちまくり

主役二人(ロキシーとヴェルマも主役ではと考えています。)、弁護士ビリー・・・とキャラが濃いのは知っていたのですが、一見「さえない地味な」夫のエイモスや、ただ「人が良くて感激屋さん」のようなミス・サンシャインも、セリフや身のこなしから、もっと深いキャラなのでは?と思ったり。特にエイモス役の方の歌声が素晴らしくて、より親しみがわきました。

・素敵ポイント③強さと弱さで人間味を感じる

映画版を見た時は、ロキシーとヴェルマの美しさやしたたかさを全面に感じたのですが、舞台版では二人の弱さを感じたりしました。
 
ロキシーは喜怒哀楽が激しいのですが、すごく自分に正直な人なのかなと。映画版よりも、一人で笑ったり、はしゃいだり、おろおろしたり、不安定な部分が多く演じられている気がして、「この人は子どものころに愛情が足りなくて夢見がちで自己顕示欲が強くなって、精神の強さや考え方は標準なのに、見た目の美しさが標準以上でこういう人生になってるのかな」と思ったり。
 
ヴェルマはより強いんだけど、妹を殺してしまった後に「一人じゃダンスできない」と嘆いたり、ロキシーの図太さにイラつきながらも感嘆する様子が、映画より戸惑った感じを強く感じて、人間味を感じました。
 
これまでは人のいいエイモスを、見た目のいいロキシーが騙して結婚した、という印象を持っていました。ただ舞台を見て、ロキシーが自分に満足していないことに気づきもしない鈍くも情にもろいエイモスと、「自分にNoを言わなかった」という点でエイモスを選んだ意外に寂しがりのロキシーは、結構相性がいいんではと思ったりしました。

・素敵ポイント④舞台の構成が面白い

毎回、舞台がどんなふうに区切られているかが楽しみなのですが、今回も楽しかったです。
ものすごく簡単で恐縮ですが、以下が舞台図です。

特にオーケストラの真ん中にある場所で歌ったり踊ったりすることがあり、ビリーが指揮者の横でステッキをぶんぶん回したりして、当たらないかドキドキしました。
 
また指揮者の人が舞台の人に話しかけられたりナレーションをしたりする場面がありまして・・・。

例えば、「次は○○による、▲▲です!」ていうのを指揮者の人が観客に振り返って言ったり。(その後前を向いてオーケストラを指揮してたり。)
またロキシーが自分の名前が新聞に載ってはしゃいでいる場面で、「見て!」と言いながら、指揮者に新聞を渡したり。(その時指揮者は少し頷いてあげて、ロキシーが立ち去る場面で新聞を渡していたり。)

それがいい味を出していて、「マエストローーー!!」って叫びそうになりました。

・素敵ポイント⑤舞台版と映画版の比較が楽しい

舞台版はよりコミカルな要素が入っていて、全体のダンスを楽しめて、楽しかったです。

ただ改めて、映画版ってすごかったんだなあと思いました。特に映画版では’ We Both Reached For The Gun’や’ I Can’t Do It Alone’が振り付けも構成も凝っていて、すごく好きでした。ただ舞台版では、’ All That Jazz’や’ Mister Cellophane’が映画より構成がシンプルな分、より強く伝わるものがありました。

これまで「シカゴ」は風刺的な要素が強いと思っていましたが、舞台版はよりコミカルな動きやセリフが多いので、人間のエゴや弱さを批判するというより、茶化している感じがしました。
 
またこの物語では、銃によって男性(もしくはその浮気相手の女性)を殺した女性が多く出て来るのですが、銃がなかったらこの人は犯罪者にならなかったのかなとか。これの性別が逆だったら、残虐性が際立ちすぎるかもな、とかいろいろなことを考えました。

いずれにしろ、とても面白かったです。舞台は高額だしいつも観劇するか迷うのですが、色々な発見があるので、結局は見て良かった!と思います。これからもお金を貯めて、素敵な公演があれば行こう!と改めて決意しました。