ずば抜けた観察力と実行力に脱帽 -「なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法」
今回は村山太一さんの著書「なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法」について書きます。本屋さんで目が合って、「シェフがバイト?え?どういうこと?」とつい手に取ってしまったのですが、内容を読んでみて「これ本気の本だな・・・。じっくり読もう!」と思いそのままレジへ。期待通り面白かったです。
1.内容紹介
出版元のこのページには以下のように書かれています。
コロナでも黒字を達成し、「飲食業界の奇跡」とまで言われた
星付きイタリアンのオーナーシェフ、初のビジネス書が発売。
伝説の三ツ星レストランで副料理長にまで上りつめた著者が
次に求めたのは、サイゼリヤの「すごい生産性」だった。
経営するレストランの生産性は、なんと3.7倍に!
成長したければ、MBAを取るよりアルバイトをしよう。
26万PVのnote記事『目黒の星付きイタリアンのオーナーシェフは、
サイゼリヤでバイトしながら2億年先の地球を思う。』で話題騒然!
「落とし穴に落ちない」で「最短で成長する」という、
偏差値37の"バカ"が見つけた必勝法を初公開します。
サイゼリヤ代表取締役会長正垣泰彦氏、推薦「これはビジネスの真理だ! 」
このインタビュー記事「目黒の星付きイタリアンのオーナーシェフは、サイゼリヤでバイトしながら2億年先の地球を思う。」を基に本になったようです。
この村山さんという方はサイゼリヤで学んだことをレストラン経営に活かす前にも、様々な人から学んだことを血肉にして実績を上げてこられた方なのですが、そのコツを惜しみなく書いてくださっています。印象的だったことをつらつらご紹介します。
2.原理原則と必勝法
まず数々の成功の原理原則として、「より良い方向に変化し続ける」を挙げられ、その必勝法は「落とし穴に落ちない」で「最短で成長する」ことと書かれています。
その具体的な方法として、以下2つを挙げられています。
1.サバンナ思考:「危機感×気づき×即行動」のサイクルを高速で回す危機回避術。
2.マヨネーズ理論:一流や世界一のやり方をマネして丸パクリするショートカット術。
このネーミングの由来や詳細は本を見ていただくとして、この方法を継続されていることがすごいと思いました。短期間なら出来るかもしれないけれど、村山さんは常に危機感を持って、必要なことを学ぼうとされている。それが様々な成果を上げられている理由だと分かりました。
3.完コピするための観察方法
この本では一流の料理人や経営者の方法をどのように村山さんが会得していったのかが書かれているのですが、一番印象的だったのはイタリアのレストランでシェフのナディアさんを完コピする以下の場面です。
僕はもう、変態かってくらい徹底的にナディアを観察しました。
手や指の動き、フライパンを振る角度などはもちろんですが、まばたきや呼吸をする回数までを見ていました。そうすると、盛り付けをする瞬間に息を止めたり、呼吸回数が上がる瞬間などがわかり、その後ろにある感情も推察ができるようになっていきました。
・・・呼吸の観察!とびっくりしたのですが、確かにすごく人の感情が分かる部分かもしれません。言葉と違って嘘もつけないですし・・・。言語化されない価値観の部分は特に理解するのが難しいと思うのですが、こういう分析方法もあるんだなーと気づき私も真似しようと思いました。
4.レストラン経営あれこれ
少し話はそれますが、異業種の方の本を読む楽しみの1つは、その業界について詳しく知れることだと思います。この本でも客席当たりスタッフを何人で回すか、業務用の厨房に通常設置されているグリストラップ(残骸などが下水に流れるのを防ぐ装置だそうです)の掃除が大変さ・・・などなど出てきました。自分が言ったレストランのキッチンでもこういう細かな作業や苦労があるのかなーと想像したりして面白かったです。
5.観察力と素直さ
巻末にサイゼリヤの会長と社長との座談会が入っていました。このお二人が指摘されていた通り、村山さんは観察力とそれを行う素直さ、行動力がずば抜けていると改めて思いました。また、noteで村山さんの記事が出て2週間で会いに行ったというサイゼリヤの社長、座談会に参加される会長も相当行動力があるし、懐が深い人たちだと感じました。
6.おわりに:サイゼリヤにいってみた
読んでいるうちにサイゼリヤに興味がわいてきて、行ってみました。コンビニ並みの安さなので場所代はどうなっているか不思議でした。注文したサラダが来た瞬間、「あー普通サイズ頼んだつもりが間違えて大きめのLサイズを頼んじゃったんだー」と少し焦ったのですが、その大皿に載ったのが普通サイズでした・・・。びっくり・・・。
キッチンはあまりじろじろ見られませんでしたが、ホールは2人くらいでテンポよく回されていました。これもマニュアルにあるのかな?ここでコストを抑えているのかな?と思って、大人のミニ社会科見学みたいで楽しかったです。
内容を実生活に活かせるかも大切ですが、読書の一番の楽しみは「今まで知らなかったことを知れること」だと思っています。読むことの喜びを改めてかみしめられた一冊でした。