なんとも素敵な 氷室冴子さんの話②~自由を貫くエールをいただく~
今回も作家、氷室冴子さんについて書きます。氷室さんの作品から頂いたものはたくさんあるのですが、その大きなものの一つは「自由にしていいんだよ」というエールだったと感じています。
1.萩尾望都さんのインタビュー「自由に、好きに生きなさい」
萩尾さんがインタビューで、以下のように答えていらっしゃって、本当にそうだなあと思いました。
氷室さんの作品含め、「少女」漫画や「少女」小説では、周りの「女の子だからこうしなきゃだめ」を片っ端から無視して、主人公が自分の好きなことをして輝いていました。様々な作家さんが、少女や女性の自由を肯定してくれていたように感じています。
それを聖典のように小さなころから読めたことは、私にとって本当に良かったと思います。
2.本の中に味方がいる、という感覚
社会人になって、「女子」であることにまつわる呪いが、様々なところにあることを知りました。
でも、職場の飲み会でセクハラまがいの言葉を浴び気持ちが悪くなりながら帰るとき。
母親から定期的にかかってくる結婚を勧める電話をうんざりと切った後。
そんな憂鬱な時も、私には本の中に味方がいました。だから、その人達の考えに合わせようと思いませんでした。
自信がなかったので、自分のしたいことを否定されると気持ちが揺らぐのですが、氷室さんの小説の主人公も、エッセイの中の氷室さんも、本当に格好良かったのです。
一方、「こうあるべき女子」像に合わない私を批判してくる人たちは、自分の考えがなく、格好悪く見えました。周りとの関係性にはより気を遣うようになりましたが、格好良い人を信じようと思い、行動は変えませんでした。
そんな私を「強いですね」という方がいたのですが、私自身は強くありません。でも悲しくても、辛くても、同じ気持ちを持ちながら前向きに生きている人がいる、ということはとても心強かったです。
それは小説の主人公も同じです。架空の人物でも、その人物をいいと思って書いた作家さんがいて、それを支持する自分のような読者がいる、とわかることが、何よりの励みになっています。
3.おわりに
NHKの番組を見て、「氷室冴子読本」を読み直し、氷室さんの文章は本当に好きだなあと再認識しました。「少女」小説家、という点がやたらと強調されますが、本当に文章がうまい方だと思っています。
少女向けだろうが、青年向けだろうが、面白くて人の心を動かせば、質の高い芸術作品です。
「氷室冴子読本」に掲載されていた「ハリーのいちばん美しい夏」の主人公は女性でもないし若くもなさそうで明るい話しでもありませんでした、読みながらどんどんと物語が立ち現れてくる高揚感を、久しぶりに感じました。
2014年に氷室冴子さんのフェアがあった際に、親交のあった方々が帯を書かれました。その内の一人、新井素子さんはこのように書かれています。
この帯の文章に激しく同意して、泣きそうになりました。そして、自分なりの「気持ちが明るくなるようなお話」を描いていこう、と思ったのを覚えています。
自分の人生の主役は自分で、その話の展開は自分の行動が決めるから。
こう思えるのも、氷室さんの作品からの贈り物と思っています。
氷室さん、本当にありがとうございました。これからも読んでいきますので、よろしくお願いします、という気持ちです。