見出し画像

「選べる」という幸せと苦しみ『選択の科学』

今回はシーナ・アイエンガーさんの『選択の科学』についてご紹介します。大まかな内容は以下です。(「BOOK」データベースより抜粋。)

なぜ選択には大きな力があるのか。選択を行う方法は人によってどう違うのか。出身や生い立ちは選択を行う方法に影響を与えるのか。選択というツールを効果的に使うには。選択肢が無限にある様に思われる時どうすればよいのか。他人に選択を委ねた方がよい場合はあるのか。20年以上の実験と研究で選択の力を証明。

この内容を抜粋した以下TED動画も人気のようですが、本の中で印象的だった部分を以下にご紹介します。


1.第1講:選択は本能より

様々な職業階層に属する公務員を調査し「自己決定権の(実際の)大きさではなく、認識が人々の健康に影響を与えた」という結果が出た事。
→今、ある事柄についてどちらを選ぶか悩んでいる私にとっては、心に残りました。ただ単純な精神論として認識するのではなくて、物事を「既に決められている」と考えたり「思いがけない出来事の重なりと見る」ことはせず、「自分の選択可能なことという次元でとらえた方が明るい展望が開ける」という著者の考えを覚えておこうと思います。

2.第2講:集団のためか、個人のためか

約2年間に渡る合計9つの宗教の600人を超えるインタビューから、「制約は必ずしも自己決定権を損なわず、思考と行動の自由は必ずしも自己決定権を高めるわけではない」という結果が出た事。
→これは耳に痛かったです。「誰か尊敬する偉い人が決めてくれたらそれに喜んで従うのに」と色々な場面で思うのに、偉い人とか多くの人が同意する選択に従いたくないと思ってしまう私は、どっちなんだろう?としばし考えてしまいました。。

3.第5講:選択は創られる

ほとんど色の見分けがつかなかったネイルへ名前(ラベル)がつけられることで、確かな違いが与えられたという事例が紹介されます。例として出されたのは薄いピンクの2種のネイルで、1つ目は「バレエ・スリッパ―ズ」と2つ目は「アドーラブル」とラベルがついています。ラベル有りとラベル無し(「A」「B」とした場合)で、どちらが好まれるか変わったという実験の結果です。
→名前がついていると「バレエ・スリッパ―ズ」が人気だったという結果が面白く、バレエにまつわるイメージは(自分も含めて)女性にとって華やかでロマンチックなものに溢れるのかなあと思ったりしました。イメージ付の物を買って幸せになることもありますが、誰かが作ったイメージであることを忘れないのは大事かなあとも思いました。

4.第6講:豊富な選択肢は必ずしも利益にならない

→これは目から鱗でした。いつも決定をする時に「もっと色々可能性のある選択肢を考えないと」と罪悪感を抱いていたので、そうでもないんだと楽になりました。

5.最終講:選択と偶然と運命の三元連立方程式

→これは思わず「三元連立方程式」についてグーグル先生に聞いてしまいました。(何となく理解した気がします。)「選択の力を最大限に活用するにはその不確実性と矛盾を受け入れなければならない」けれど「選択は本質的に芸術」という著者の言葉に、間違った選択をしたくないあまり動けないでいる私はエールを貰った気がします。

6.TED動画(話す著者)と本(書く著者)の印象の違い

→彼女がとても賢明で思慮深いことはどちらを見ても分かりますが、動画だとちょっとシニカルさが印象的な一方、本だと繊細さを強く感じました。
彼女の豊かな描写を含んだ本の書き方の方が私には親近感が感じられました。

・・・何にしろ、毎日行わざるを得ない「選択」について多くの示唆に富んだ情報を与えてくれる良書でした。彼女の話が胸を打つのは、より良い選択で読者がより幸せな明るい人生に向かってほしいという想いが随所にちりばめられているからだと個人的に感じました。優柔不断な私は迷って仕方がない時にこの本の内容を思い出し、ちょっと勇気付けられるのでした。