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Episode0 「くるパー看板」事始め
世田谷クロニクル『理容室Ⅱ』(昭和44年)の8ミリ映像を観ていたとき、2分40秒のあたりからチラチラと見え出す、ノナカ美容室の看板に目が釘付けになってしまった。
ノナカ美容室の看板は、くるくると回り続けている。どこでかは忘れてしまったけれど、わたしも以前、観たことのあるくるくる回るレトロな電飾看板だ。でも、最近、この看板は観ていないことに気づいた。もしかしたら、これは昭和の遺物なのかも知れないぞ。そう思って、インターネットで検索してみたところ、この看板がネット上で「くるパー看板」と呼ばれ、SNSを通じて各地から現在のくるパー看板の写真が集まっていることを知った。
「くるパー看板」とは、なんて言い当てて妙の素晴らしいネーミングなのだろう。このくるくる回る看板に名前(通称名)が与えられたことにより、ネットで拡散され、情報が集まり拾えるようになった功績はすごい。もしもこの看板に呼び名がなかったら、ネット上で情報は拾いにくかっただろう。これは、「くるパー看板」に限らず、他のケースも同様で、昔の映像を見てこれはなんだろうか、という謎のモノの名前が分かるとそこから色々なことが芋づる式で分かってくる。
調べていくうちに、なんと、「くるパー看板」の命名者にまでたどり着くことができた。そして、奇跡的に名付け親であるカト郎さんとコンタクトを取ることができた。以下は、カト郎さんとのやりとりをまとめたものである。
◆「くるパー看板」という名称の由来は?
看板の名称がよく分からなかったので、当時インスタで交流していた仲間と「美容室看板」「くるくるの看板」などと適当に呼んでいたのですが、インスタなどでも検索が難しく、何かハッシュタグに使えるような名前を付けようとなりました。
そこで「くるくるパーマ屋看板」を縮めて「くるパー看板」と名付けた次第です。床屋の赤青白のサインポールとは区別して、あくまでも美容室の回転看板にのみ使う呼称としています。仲間内から各人のフォロワーなどを通じてじんわりと広まりまったようです。
くるパー看板の「くるパー」という響きがクルクルパーを連想させるため、もしかしたら快く思わない方もいらっしゃるかもしれません。しかし昔はイラストをポンチ絵と呼んだりしたような、どことなく懐かしくユーモラスで駄菓子屋のお菓子の名前みたいな親しみやすい響きで良いかな?と名付けました。
◆くるパー看板の魅力は?
なんといってもそのデザインの豊富さだと思います。万華鏡のような基本形でも看板が四角や六角形など様々あり、さらには時計付き、回転オブジェ付き、縦回転のものなどバリエーションが凄いです。
また現役で回転してるものを見つけたときのレアもの発見感も嬉しいです。
◆身近によく見ていましたか?
私は横浜出身ですが、子供の頃はまだ近所などでもちょこちょこあったような気がします。しかし特に気にとめていたわけでもないので記憶はあやふやです。興味を持ち始めたのは、大人になってからレトロな町の散策などを始めてよく目に付くようになったからです。
自分でインスタにあげたものなど見返してみましたが、東京、神奈川、静岡、群馬、福島、京都、岡山、長崎などありますね。看板に「全理連」や「全美環連」の文字が入ってることが多いので、おそらく全国的にあったのではないかと考えます。
「くるパー看板」という言葉を知った頃、駅のホームにあるパタパタが話題になっていた。パタパタとは、昭和の頃、全国の主要駅で普通に見かけた、板がパタパタと回転して行先や時刻などを表示する発車案内表示板のことだ。
正式名称は「反転フラップ式案内表示機」と言い、英語ではSplit-flap Display(スプリット・フラップ・ディスプレイ)と呼ばれる。一般的には開発者したイタリアの「ソラリ・ディ・ウディネ(Solari di Udine)」という開発者の会社の名を取って「ソラリー式」(あるいはソラリーボード )と呼ばれることが多いそうだ。
けれども、電車を愛する方々からは、表示板のパタパタという音から通称「パタパタ」と呼ばれている。
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2022年2月11日、関東で唯一残っていた京急電鉄の京急川崎駅の「パタパタ」がついに役割を終えることになり、同駅を訪れるひとたちの話題をよくテレビで見ていた。そのときにも感じていたが、この「パタパタ」という通称名に共感と魅力がなければ、 通称名は広がらなかったし、仲間との共通言語にもなり得なかったはずなのだ。また、名付けられることで、認識され、価値が再発見されることもある。たかが名前、されど名前。わたしはそこに感動するのだ。
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そんな訳で、わたしは「くるパー看板」という呼び名からくるパー看板への興味が始まった。そして、そこから発展し、くるパー看板のある風景を巡る時/空間の旅に出ることに決めた。
「くるパー看板」をキーワードに、くるパー看板のあった街の風景、あった時代の風景、現在ある風景などを巡るはなしを、いろいろなひとから聞いていきたいと思う。
集めたepisodeは、五月雨式にこのマガジンのシリーズでレポートしていく予定。
さて、誰に会うか、出遭えるか・・・。
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