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救助

人助けをしますか?見過ごしますか?見過ごしますよね、普通。とはいえ、自分はこの2週間に2回、お年寄りに声をかけました。別に自慢じゃないんです、ぜんぜん。そういう性分、いや、そうしなきゃいかんような気がするというか。そんな類のやつです。難儀ですね。一人は酔っ払いのじいさんでした。車道の脇に座り込んで、立てない様子。危ないから立たせようとするんだけれど、足元がおぼつかない。自転車で通りかかった親切なご婦人が手助けしてくれたけど、立たせるのはちょっと無理。そこで、ご婦人、さっと警察にTEL。すると間髪入れず運よくそこへパトカーがやって来るじゃありませんか。通報で速攻来たんか?んなわきゃないか。手を挙げると、すーっと反対車線からUターンしてすぐ目の前に停車。若い警察官が、ひざまずいて、じいさんに話しかけてくれる。いやあ助かった。あとはプロにお任せお任せ。ご婦人と自分はその場を離れて、無罪放免。ご婦人、快活にどーも―と自転車で走り去る。ご婦人が立ち止まってくれなければ、どうにもならずにいたであろう自分が目に浮かぶ。ついてたよな、何もできない自分。二人目は、自分の住まいのすぐそばで、おかしな姿勢で立ちすくんでいるご老人(「じいさん」と区別しているのは、身なりがちゃんとしてたからかな)。そんなご老人を気にしつつも、通り過ぎていく人。自分もしばらく見つめていたけど…やっぱり見過ごせんなと歩み寄り「大丈夫ですか」と一声。「大丈夫」と小さな声でうなずくご老人。たいてい声をかけると、ほとんどの人が「大丈夫」と返す。大丈夫じゃなさそうだから声かけてるんだけどね。「大丈夫?」って声かけるのがいかんのかもしれない。で、そのご老人、ちょこちょこと、まったくもっておぼつかない足取りで前に進もうとして、あっという間に後ろ向きに転倒。手を差し伸べるいとまもなく歩道の石畳に後頭部をしこたま打って仰向けに。仕事帰りで暑いんで脱いで手に持った上着やらカバンやら買い物したものやらなんやらかんやらもろもろ抱えていた自分は、どうにも俊敏に動くことがかなわず呆然と見ていただけで役に立たん(言い訳だな)。とにかく頭打ってえらい音がした(ような気がした)からには、すぐさま病院に運ばんと命にかかわるかもしれない。ここは迷うことなく119番。自分の住まいののすぐそばだから、現在地もオペレーターに詳細に伝えられる。ご老人のかたわらにしゃがんで「頭打ったから動かないで」と声をかけつつ救急車の到着を待つ自分。その間、外国の方が一人心配そうに声をかけてくれ、ご婦人が二人立ち止まってくれる。みな「救急車呼んだから」というと、立ち去っていくんだけどね。そうこうするうち、5分ほどで救急隊到着。ご老人を助け起こすと、後頭部に血がべっとり。ペットボトルの水で血を洗い流して、手際よく包帯を巻く。意識はあるものの、足が痙攣しているご老人。どうやら脱水している様子。救急隊員が名前を聞いたりしているけれど、明確な返答もなく、病院に行こうと促しても、首を振るご老人。とりあえずは、ストレッチャーに載せられ救急車の中に。何か聞かれるんだろうと様子を見守っていた自分は、とりあえず救急隊によろしくと言って、その場を後に。またもや解放されてほっとする自分。さてさて、いずれの場面もお年寄りに声をかけたけど、結局は自分で何かできたわけではないなあという思いが残る。声かけなくても、それはそれで何とかなってしまったかもしれない。お年寄りが自力で、または成り行きで、うまい具合に。自分が全身全霊で助けようとはしてないのは、はなから分かっちゃいる。何もしない方がいいのかもしれないと思う。命がけで人は助けられないし。ただ、見過ごせないだけなんだけどね。見過ごせないだけなんだよ。いいんだか悪いんだか。その後二人とも無事だったかなあと思うよ。特に二人目のご老人。見過ごさなかったけど、けっきょく見放したんだよね。見放した。難儀だよね。難儀。こうしてまた寝られない夜更けがやって来るんだな。そんなお話です。


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