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ブラック企業のルーティン

皆さん、こんばんは。
突然ですが僕はいま、ブラック企業で働いています。深夜残業や休日出勤が当たり前の生活です。
ここでは、そんな僕の一日のルーティンを皆さんに紹介しようと思います。


まず、朝5時に起床します。社畜の朝は早いのです。
起きたらすぐに、その日の目標を立てます。最近はずっと『気を確かに持つ』ということを目標にしています。
これを念頭に置いて『気を確かに持つ』ことも目標です。
余裕があったら『気を確かに持つ』ことも意識しつつ『気を確かに持つ』ことまでがんばります。


目標が決まったら、トースターでネクタイを焼きます。
なぜネクタイを焼くのかというと、その方がおいしいからです。

朝食を済ますと、飼い犬にスーツを着せます。
しかし着せる途中で、なんか妙だな?と気付きます。
そして「しまった、スーツを着るのは僕だ!僕も会社の犬だから、間違えちゃった!」と叫ぶ時、時刻は大抵6時頃を指しています。

僕は急ぎ気味で出勤します。


会社に到着したら、まず退職届を書きます。
上司はいつもこれを全然受け取ってくれません。
なのでこっちも、折りたたんでアルフォートの箱に入れて渡したり、ジャンプの巻頭カラーを退職届に差し替えて渡したり、千羽鶴にして机にぶら下げてみたり、色々試しているのですがカラッキシです。
その日はみじんぎりにした退職届をミンチと混ぜてハンバーグにしてみました。
が、上司はそれを一口食べたのち、
「おい、なんだかこれ変な味がするぞ。中に退職届が入っているだろう」
と言って、あっさり異変を見抜いてきました。やはり一筋縄では行かないようですね。


12時になると、昼食を買うためにコンビニに行きます。
午後は誰かしらの靴を舐めるので、それも考えて控えめにします。


会社に戻ると深夜まで働きます。
23時ごろ、向かいに目を向けると、同僚のユキさんも残業をしています。

ユキさんは、僕の妻です。

わが社は“アットホームな社風”を掲げているため、社員同士は家族同然であり、僕とユキさんは事実上の夫婦なのです。

0時になったら、僕はユキさんに「子どもは何人欲しい?」と聞きます。
これに対しユキさんは「双子が6組、ほしいかな」と、笑顔で返してくれます。

なので僕は「じゃあ12人だね」と返し、彼女のデスクに回り込んで腰を抱き寄せます。そして、そっと唇に顔を寄せます。

すると後ろから「おい!やめないか!」と声がするので、振り向くと上司がいます。

上司は「お前はどうしていつもこの時間、観葉植物と抱き合ってるんだ!」と怒鳴ってきます。彼には、ユキさんが植物に見えているんでしょうか。

そして1日の終わり、僕は頭の中でその日あった出来事を振り返ります。
毎日毎日、同じ内容です。
明日もきっと、今日と変わらない1日が待っていることでしょう。



あ、でも、




明日は一つだけ、いつもと違うことがあるかもしれません。





午前中、上司に食べさせたハンバーグ。

あれには退職届と一緒に、とある薬品を混ぜていたので。

それがどんなものかについては、皆さんのご想像にお任せしますね。



さて、時刻は1時を過ぎました。
残業を終えた僕は今、この文章を会社のパソコンで打っています。

その全てを背後に立つ上司に見られてしまっているということには、先程気が付きました。

この文章を投稿したら、もう一度彼に退職届を渡してみようと思います。




なんだか今度は、受け取ってくれる気がしているのです。














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