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偏頭痛ゆえ


※以下の文章は「囲碁将棋の情熱スリーポイント」に送って不採用だったふつおたです。



この前、会社で仕事をしていたときのことです。
隣の席に座っていた同期が突然、「ああ、今日は雨が降るな」と言いました。

僕が「え、なんでわかるの?」と聞くと、彼は「さっきから、頭が痛いからだよ。俺こういうの、偏頭痛持ちだからわかるんだよね」と言いました。
僕がなるほど、と思っていると、彼は続けて「あと30分もしないうちに降るな。それで18時頃に雨脚が強くなって、20時過ぎに止む」と言いました。
僕は、偏頭痛持ちってそんなことまでわかるんだ、と思いました。

さらに彼は、「あとこめかみがズキズキするから、気圧もだいぶ低いな。そんで低気圧から伸びる前線が、西日本を通過してる感じがする。明日の朝には東日本も通過するな、こりゃ」と言いました。
僕は、偏頭痛持ちとはいえ、わかりすぎじゃない?と思いました。

しかしその後の天気は、本当に彼の言った通りでした。僕は感心しました。


その翌日です。僕が会社に着くと、彼は朝から体調が悪そうでした。
彼はこめかみを押さえながら「今日も気圧が低い。あとこの会社の今月の株価も異常に低い。俺わかるんだよ。偏頭痛持ちだから」と言いました。
僕は「いや…偏頭痛持ちでも、普通はそこまでわからないよ」と返しました。

しかし、彼はさらにこう続けます。
「低気圧の影響で、東日本一帯は曇りだな。あとここの上司の表情も、全体的に曇りだ。俺たちも、湿った空気の影響を受けるだろう。
あと、気圧、株価に続いて社員のテンションも低下してる。特に小田先輩がかなり低い。小田先輩付近での行動時は、注意が必要だ」

僕はこれに感動して「すごい、なんでそんなことまでわかるんだよ!」と聞きました。
すると彼は「だから言ってるだろ。俺は偏頭痛を持ってるから。偏頭痛さえ持っていれば、大抵のことはわかるのさ」と言いました。


その翌日のこと。会社に着くと、彼の顔はやたら青ざめていました。
彼は僕に、「まずい。台風が来る」と言うのです。
僕が「え?でも外は晴れてるよ」と返すと、彼は首を振り「違うよ。台風は、社長室で発生している」と言いました。

彼は額に手を当てながら、「台風は雷を伴って、次第にこっちに接近してる。社内全体の業績低下に、社長もついにブチギレたみたいだ。
加えて、昨日キャバクラ通いが奥さんにバレたことによって発生した夫婦喧嘩も、風速を速める原因になってる。
わかる、わかるよ。手に取るようにわかる。なんてったって、俺は偏頭痛を持ってるからな」と言いました。

怖くなった僕は「どうしたらいいんだよ、それ!」と聞きました。
彼は「午後の営業で、お前が良い成績残すしかねえよ。お前が風向きを変えてこい」と力強く言ってきました。

僕は彼の言う通り、全力で仕事に励み、取れるだけの契約を取りました。

その結果、社長の台風は軌道を逸れ、社内には所々光が差しました。

そしてこれをきっかけに、僕の評価や立場もどんどん上がりました。最高です。僕はすっかり良い気になりました。


それからしばらく経ったある日、僕は彼に
「なあ、今日の気圧はどう?」と聞きました。
これに彼は「気圧は高いよ。あと最近、お前の頭(ず)も高いな」と返してきました。

僕は少しばつが悪い気持ちになりつつ、
「偏頭痛持ちって、なんでもわかるんだなぁ」と言いました。

彼は、
「これは偏頭痛持ってなくてもわかるよ」と、
呆れたように笑いました。





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