アメリカのスクールバス
登下校時の子供の安全のトピックになると、割と見かける「日本にも、スクールバスがあればいいのにね」という意見。私は、アメリカで子育てしているので、今回は、スクールバスとは、をテーマに、知っている事を書いてみようと思います。ただ、あくまでもうちの子の学区の場合です。カリフォルニア州だけでも日本より面積が広いことからわかるように、アメリカは広大なので、場所によってかなりの違いがあると思います。一例としてお読みください。
スクールバスの背景
まず、公立の学校は、何校かの学校が合わさって、School District というものを形成しています。このSchool District によって、色々な仕組みが共用されており、教育方針やスケジュールと共に、スクールバスもこの範疇に入ります。アメリカは高校までが義務教育なので、School District には、高校・中学・小学校が含まれます。
これらの学校が始まる時間は時間差になっており、現在は、中学が一番早く、続いて高校、最後に小学校が始まります。終わる時間も、基本的には同じように時間差になっています。何故かというと、Districtの中で、スクールバスを効率よく使いまわす為です。
スクールバスはいつ、どこに来る?
スクールバスの停留所は、表示がある訳ではなく、学期初めまでに、メールかアプリで住所と時間が知らされます。毎年、生徒の数が変動するので、それに伴いスクールバスのルートも変わります。去年一緒のバスに乗っていた近所の友達が、今年は別のバス、という事もあります。
一番早い中学校が7:50に始まるとします。家から学校まで、普通にいけば車で10分の距離ですが、バスは40分前にバス停に到着します(ルートによっては1時間前にくる場合もあるようです)。いろいろな所を回っていくので時間がかかるという事もありますが、学校周辺の渋滞に巻き込まれないように早く出る必要があるからです。または、仮に渋滞に巻き込まれても、なんとか授業に間に合うようにする為です。うちの子の場合は、通常は7:30に学校につくそうです。
スクールバスには、特別の交通ルールがあります。
スクールバスが停止して子供が乗り降りする間は、子供の安全を最優先する為に、後続の車は追い越すことが出来ません。片道一車線の場合は、対向車もすれ違えません(トップの写真:片道一車線道路で、スクールバス乗車中のところを、対向車線に停止している路線バスから写したもの)。
これに違反した場合は、切符が切られます。つまり、前を子供を乗せたスクールバスが走っている、車線が少ない道では、同じ速さでついていく事しかできないという事です。
こんな風に、色々な仕組みを整えた上で、スクールバスは運航されています。
朝の渋滞
実は、全ての生徒がスクールバスに乗れるわけではないのです。例えば、小学校の場合、学校から1マイル以内に住む子は、スクールバスには乗れず、徒歩で学校に行くことになります。でも、忙しくて心配な親は車で送っていきます。そして、スクールバスに乗り損ねた子も、親が車で送っていきます。ただでさえ通勤時間帯は混んでいるのですが、そこに通学の車とバスが加わります。一応路線バスもありますが、高校生以外が通学に使用するのは現実的ではありません。
車社会のアメリカでは、生徒の親全員が子供を車で送迎するのは、地域住民にとっても大変なので、スクールバスはやはりありがたい存在と言えます。
スクールバスさえあれば?
学校まで時間はかかるけれども、スクールバスがあれば安心、とおもいきや、それが実はそうでもありません。
ドライバーの皆様は個性的で、学期の最初にがっちり席決めしてしまう人もいれば、反対にだれが乗ってきても(乗らなくても)気にしない人もいます。
子供がうるさいと途中で停止して説教が始まったり、挙句に学校に戻ってしまったり。学期の最初は、ルートを間違えたり、という事も起こり、そういう時は大体連絡がうまくいかず、親は家で(小学校低学年の場合は、親がバス停まで送り迎えに行くので、バス停で)ハラハラすることになります。
また、School District のどこかで雪が降ると、School District 内の学校は全て休校になります。全てのバスにチェーンを付けることは不可能ですし、そもそもドライバーがバス置き場までたどり着けないからです。
この仕事は、朝早く出勤しなければならないし、子供たちは言う事を聞かないし、時給なのでバスの運行がない昼間の時間はお金がもらえません。別にいい仕事が見つかればさっさと辞めてしまうので、常にドライバーは不足しています。
あるルートでは、ドライバーが時給を上げてもらうためにストライキして、一週間バスが来なかったという話も聞きました。
もちろん仕方ない事ですが、ドライバーが急に病気になり、当日朝にキャンセルということもあります(テキストメッセージやメールで通知)。そうなると、親は大慌て。基本的には、授業開始20分前(これが先ほど出てきた7:30です)に着くように家をでないと、渋滞の為、途中で身動きが取れなくなります。朝はどこでも普通に渋滞が見込まれますので、その分も上乗せして、家を出なくてはなりません。
つまり
スクールバスがあれば、子供が誘拐されたり、行方不明になったり、という意味の安全性は、ある程度は確保されるかもしれません。でも、あくまでもバスなので、バス停からは(親が迎えに行かなければ)やっぱり一人になる時はあります。
日本で生まれ育った私としては、こんなスクールバスを日本でも、とは簡単には言えないな、と思ってしまいます。皆さんはどうでしょうか?
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