「ちょっ!待てよ!リーダー!三点リーダー!!」
長髪を無意識にかき上げると、オムタクこと小村拓己は、三点リーダーの元へ駆け寄って、乱暴にその肩をつかんだ。
「、、、呼んだか?」
三点リーダーは無表情で振り向いた。
「三点リーダー!てめぇ!」
「、、、」
オムタクと三点リーダーは無言で睨み合った。
どうであろう。この緊迫した場面、読者の方々は、すんなり頭の中に入ってきたであろうか?
すんなりと話が入ってきた、という方はそのままでOK。では、話が入ってこなかった、と言う方はその箇所を指摘してほしい。
長髪?
オムタク?
三点リーダー?
設定が古い?
そもそも緊迫感が感じられない?
上記が気になった方は、残念ながら〃すんなりと話が入ってきた〃部類に入る。問題はそこではないのである。
では、以下の文章はどうであろうか。
長髪を無意識にかき上げると、オムタクこと小村拓己は、三点リーダーのもとへ駆け寄って、乱暴にその肩をつかんだ。
「。。。呼んだか?」
三点リーダーは無表情で振り向いた。
「三点リーダー!てめぇ!」
「。。。」
オムタクと三点リーダーは無言で睨み合った。
これならどうであろう。
すんなり話が入ってきただろうか。
そう。もうおわかりであろう。(←文脈と全く関係ないけど、この言い回しが某心霊番組のナレーションみたいで気になる 笑)
上記、二つの文章の違いは「、、、」か「。。。」だけなのだ。
個人的には、「……」「…」以外使ったことがなかったので、初めて上記の記述を見つけたときは驚いたし、違和感があった。
これ以後、よく注意して、SNSを中心に文章を見ているとこの上記二つの用法がよく使われていることがわかった。
たまに「,,,」の方もおられるが少数(私調べ)なので割愛。「・・・」を使用する方もおられるそうであるが、ほぼ見たことがないので同様に割愛。
さて、少し調べてみると、
文化庁のHP、国語施策「表記の基準に関する参考資料」の中の「くぎり符号の使ひ方」(昭和21年3月文部省教科書局調査課国語調査室で作成。この案は現在でも公用文、学校教育その他で参考にされている)(5)に「テンテン ……又は…」「テンセン ……」とあり、
一、 テンテンは、ナカセンと同じく、話頭をかはすときや言いさしてやめる場合に用ひる
二、 テンテンは引用文の省略を示す
三、 テンセンは会話で無言を示す
四、テンセンはつなぎに用ひる
と、用例と共に書かれている。(気になる方は、是非、文化庁のHPを参照してください)
つまり、「、、、」や「。。。」は間違い……?
少なくとも句読点をテンセンやテンテンのように使うことは、公には認められてはいないのではないか。
しかし、全て調べたわけではないので、私の方が間違っているのかもしれない。
もしかすると、使用されている方々は、インターネットの中だけの一種のスラングとわかってて使っているのかもしれない。
う~ん、考えれば考えるほどわからない。
ここで迷っていてもらちがあかないので、オムタクたちに締めをまかせようと思います。
「おや。仲のよいことで」
睨み合うオムタクと三点リーダーに声をかけた人物がいた。
「はい、これを」
そう言うと二人に紙切れを渡した。
二人は面食らいつつ、渡された紙を見る。文字が書かれてあった。読み上げた。
「『くぎり符号の使いひ方 まえがき』に『四、くぎり符号の適用は一種の修辞でもあるから、文の論理的なすぢみちを乱さない範囲内で自由に加減し、あるひはこの案を参考としてさらに他の符号を使ってもよい。』」
「『なほ、読者の年齢や知識の程度に応じて、その適用についても手心を加えるべきである。』と書かれている」
「、、、」
「。。。」
読み終えたオムタクと三点リーダーは、思わず無言で見つめ合った。
紙を渡した人物は、二人から遠ざかりつつあった。
「あんた、名前は?」
オムタクが声をかけた。
その人物は、くるりと振り返ると、楽しげに答えた。
「ふふふ。二点リーダー」
「に、二点リーダー!?」
オムタクと三点リーダーは同時に叫んだ。
「ちなみに、使い方は三点リーダーと同じらしい」
二点リーダーはそう言うと手をひらひらさせながら去って行った。
「、、、」
「。。。どういうこと?」
残されたオムタクと三点リーダーは長い間呆然と立ちすくんだままであった。 (了)
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