見出し画像

企業が人権尊重に取り組まなければならないそもそもの理由は

初めてサステナビリティの世界に足を踏み入れた私が、基礎知識を身に付けるために1000日連続でnoteを更新する挑戦をはじめました。

チャレンジ第4日目(Day4)のテーマは「企業と人権」です。

1.はじめに


企業に人権尊重の経営を求める声が強くなってきています。

DAY3でご紹介したネイチャーポジティブもそうですが、サステナビリティはニアリーイコールで「環境」のことを指していた数年前とはまったく様子が違ってきているようです。ということは…サステナビリティ担当者には、多くの分野を理解し、目配りし、伝え、取り組みを進めて社内を動かしていくことが求められているんですね…。

圧倒されてしまいそうですが、なんとか気を取り直してまずは、そもそもなぜ企業がこの課題に取り組むべきなのかを調べてみることにしました。

今回選んだ本は、櫻井洋介・著「人権尊重の経営 SDGs時代の新たなリスクへの対応」(日経BP 日本経済新聞出版、2022年)です。

第1章「ビジネスと人権とは」に「なぜ企業が人権を尊重しなければならないのか」という、そのものずばりのタイトルがついた節もありましたので、今回はこの章を読んでみることにします。

このメモが、私と同じようにサステナビリティ分野について学び始めたばかりの方々や、日々更新されるこの分野の情報へのキャッチアップに苦労しておられる方々のお役に立ちましたら幸いです。一緒にがんばりましょう!



2.この章から得た学び 

1)企業が人権に与える影響は時に国よりも大きい

なぜ企業に人権を尊重することが求められるのか。その背景には、企業の影響力拡大があります。

本書のp.35~37では、2016年にNGO(Global Justice Now)が国家の歳入と企業の売上高を基に世界の経済主体ランキングのトップ100を算出した結果が紹介されています。

なんと、トップ100のうち、69を企業が占めていたとのことです(※Global Justice Nowのページでもこの結果を見ることができます)。少し古いデータではありますが、数字で見るとインパクトが大きいですね。驚きました。


2)(国と同様に)企業からも人権を守らなければならない

「人権」という概念はそもそも、歴史の中で、国家という権力を持つ存在から人間の権利を守るために生まれました。

この経緯を思い起こせば、(1で見たように)国家より大きな経済力を持つまでに成長している「企業」という存在に対しても、人権を守るように働きかける動きがあるのも十分にうなずけます。


3)でも法律で企業のふるまいを正すのは難しい

ただ、どのようにして「人権を守るように」させるか、という具体策の部分は、なかなか難しいという事情があります。

なぜなら、それぞれの国や法制度や規制にまかせるだけでは、その国の政府に問題がある(たとえば腐敗・汚職やガバナンスの弱さなど)場合には企業の人権侵害を防ぐことはできませんし、かといって、国際人権法という枠組みは個々の企業を直接拘束するためのものではないからです。

                                          

4)ソフトローによる企業活動の規律へ                                         

そこで国際社会は、国際人権法のようなハードローではなく、法的拘束力を持たないソフトローで企業活動を規律することを試みました。

本章では、ソフトローの中でも「ビジネスと人権の領域において最も大きな影響を与えた」ものとして、「ビジネスと人権による指導原則」を挙げています。

5)ソフトローを企業が無視できない理由は

現代社会においては、「こうあるべき」というふるまいが規範として定められている以上、それに反する行為は企業にとって大きなインパクトがあります。なぜなら、企業を取り巻くステークホルダーが、そのふるまいを企業に
「期待」するからです。

「人権尊重の経営 SDGs時代の新たなリスクへの対応」p.42より

人権に対するステークホルダーからの期待として、以下の見出しのもとでそれぞれについて説明がありました。

  • 一般市民・消費者 → 信頼を失えば即、存亡にかかわる

  • 株主・投資家 → 人権尊重責任を果たさないと投資対象から除外される例も

  • 取引先・ビジネスパートナー → サプライチェーン上の問題は自社の評判に直結

  • 従業員や就職活動生 → 採用にも顧客獲得にも大きく影響


3.まとめ


  • 企業が人権に与える影響は時に国よりも大きい。だからこそ、人の権利を(国と同様に)企業からも守らなければならないという考え方が生まれている。

  • しかし、法律(ハードロー)で企業のふるまいを規制することは難しい。そこで、「ビジネスと人権による指導原則」など法的拘束力を持たないソフトローでの規律が行われている。

  • ソフトローに法的拘束力はないが、企業がそれを無視することは難しい。理由のひとつとして、企業を取り巻くステークホルダーからの「期待」があるからだ。



4.あわせて読みたい(発展学習)

今回学んだ内容に関連する新聞記事や論考、書籍などをピックアップし、追記していきます(随時更新)。

■日本企業、供給網の人権対応急務 「企業人権ベンチマーク」の項目点検

QUICKの2023年06月05日付・リサーチレポート記事です。

本書のp.50で紹介されている「人権分野のテーマ特化型評価スキーム」は、ワールド・ベンチマーク・アライアンスが(WBA)というNGOが提供している「企業の人権ベンチマーク(CHRB)」の評価テーマなどについて説明されていますので、後ほど読んでみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?