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環境への影響を測定するLCA(ライフサイクルアセスメント)の重要性

こんにちは、Sustainable Innovation Lab 事務局の鈴木優介です。今回、レポーターとしてSustainable Innovation Labが毎月開催している勉強会「Xゼミ」の第5回の模様の一部をレポートします。

昨今、サーキュラーエコノミーやLCA(ライフサイクルアセスメント)など、環境に関わるキーワードが飛び交うようになりました。「環境に配慮する」ことは、企業にとっても自治体にとっても避けては通れないテーマとなっています。では、私たちはどのような視点で、この「環境配慮」に取り組んでいけば良いのでしょうか。

今回のXゼミは、環境学研究者の青木さんをお招きし、LCAについてお話を伺いました。

環境への影響を測定するLCAの重要性

青木さんは改めて「Sustainabilityとはなにか?」からお話をスタート。環境問題の根本原因は、人間が環境から資源を取り出し、また環境へ物質を排出する速度が、自然界が資源を生み出し、それを処理することができる速度より大きくなることだと説明します。

こうした環境問題を解決するための行動指針として、以下の3つのポイントを紹介。

1. 再生可能な資源の消費速度は、その再生速度を上回ってはならない
2. 再生不可能資源の消費速度は、それに代わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならない
3. 汚染の排出量は、環境の吸収量を上回ってはいけない。環境問題の解決のためには、「消費」を減らし、「分解」「生産」で循環を促進する事が重要である

こうした環境問題に対する指針を踏まえて、環境負荷を定量的に測る方法であるLCAについての説明に移ります。LCAは、製品やサービスの原材料採取から廃棄に至るまで、全てのライフステージを範囲として、環境負荷および影響の観点から定量的に評価します。

LCAのプロセスは大きく以下の4つのステップに分かれます。

Step1:目的と調査範囲の設定
Step2:ライフサイクルインベントリ分析
Step3:ライフサイクル影響評価(潜在的影響量を算出し、評価する)
Step4:解釈

青木さんはステップ1で目的と調査範囲をどのように定めるかによって、「環境配慮」の意味が変わってくるといいます。紙ストローやEV車のようなモビリティの環境負荷も、調査範囲の設定次第で見え方が変わります。ある観点においては環境負荷が減少するが、別の観点では環境負荷が増加するというように。「プラスチック」よりも「紙」のほうが「エコ」というイメージだけで判断するのは、現実に即していない可能性があり、注意が必要だと青木さんは語りました。


では、私たちは今後どう振る舞えばいいのでしょうか?青木さんは短期的な視点と、中長期的な視点の2つの視点から語ってくださいました。

【短期視点】
企業は、LCAの視点を持ってサービスを開発。そのためにも専門の調査会社に外注して調査をしてもらうか、社内でLCAができる人材を育成を行うこと。

【中長期視点】
・「環境配慮しています」「環境配慮型〇〇」といった抽象的なメッセージではなく、環境負荷・環境影響を定量化し、具体的な数字で示す(Evaluation)
・既存システムの境界を超えて、全体性においてシステムを捉え直す。捉え直したシステムを前提とした定量評価、環境配慮を実装する(Transformation)


当たり前を疑い、仕組みを再設計していく

「環境配慮」と聞くと、環境負荷を下げるために目下何をしなければならないか?自分には何ができるか?という視点になってしまいます。日々の生活の中で環境のためにできる小さな積み重ねていくことはもちろん重要ですが、社会課題を生み出さないサステナブルイノベーションを目指していくためには、既存の社会の仕組み、その中での私たちの暮らしの在り方そのものを疑い、再設計していくという視点を忘れてはならないと感じました。

私個人としては、人々の中で、「環境配慮」が「世の中のための良いコト」と捉えられている限り、根本的な解決は見込めない課題なのだと認識しました。人々が、好きなことをして、幸せに暮らしている生活の中で、特に意識することなく環境に配慮した行動が選択されるような仕組みを構築していかなければなりません。SILが検討しているLocal Coopの実証実験の場で、一つのテーマとしてこの視点を意識的に組み込み、実践していきたいと思います。

SIL導入説明会開催中

Suatainable Innovation Labでは、随時参画企業や自治体を募集しています。よろしければぜひ導入説明会にご参加ください。


この記事を書いた人
Writer:鈴木優介 / SIL事務局
Editer:モリジュンヤ / 株式会社インクワイア

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